【原発運転差し止め問題】関西経済会のトップが三権分立を理解できていないことが明らかに



高浜原発運転差し止めに関し、関西地方の経済界のトップが中学生レベルの公民の知識も無いことを自ら暴露しました。詳細は以下から。


関西経済連合の森詳介会長(関電会長)や角和夫副会長(阪急電鉄会長)らは17日に行われた記者会見で、関西電力の高浜原発3、4号機に対して大津地裁が運転差し止めの仮処分決定を行ったことを強く批判しました。気持ちは分かりますが、その内容は唖然とせざるを得ないものでした。

角副会長はこの場で「なぜ一地裁の裁判官によって、(原発を活用する)国のエネルギー政策に支障をきたすことが起こるのか」「こういうことができないよう、速やかな法改正をのぞむ」と発言。

三権分立は中学校の公民でも必ず習う近代国家に共通の普遍的な憲法上の基本原理です。例えば衆議院のHPの三権分立の説明は以下の通り。

三権分立

日本国憲法は、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めています。

衆議院 三権分立より引用)



権力の分立の基本的要素の第一として挙げられるのが権力の区別分離であり、これは「各権力は原則として他権力に干渉したり自らの権力を放棄することは許されない」ことを指します。

つまり、国(行政)のエネルギー政策がどうあれ、司法はその方針から独立であり、独立していなければならないということ。角副会長はこのことを理解していないばかりか、積極的に三権分立を壊す法改正を望む発言をしています。日本を近代国家でなくそうとしていることを本人は気付いているのでしょうか?

森会長は「値下げができなくなったことが関西経済に与える影響は小さくないと考えており、一日も早く不当な決定を取り消していただかなければならない」としていますが、もちろん経済への打撃を理由に司法の決定を覆せという主張は無理筋の極み。当事者トップである関電会長がこれを口にするというのは悪い冗談でしかありません。

もちろん現在関西電力が行っている異議申し立ては適法な手段であり、粛々と進めて司法の判断が覆れるのであれば、何ら問題はありません。

なお、佐藤広士副会長の「(大津地裁のように)裁判がいろんなところで次々に起こり、電気の安定供給に不安が出てくるのではないかと懸念している」という懸念の前半は当たっていると言えます。

今回の判決を受け、全国の原発立地県以外の裁判所で今後もこうした差し止めの仮処分決定が出る可能性は高まりました。それはつまり原発再稼働の訴訟リスクが上昇したということ。これまで以上に原発が「割に合わない」発電方法になったとも言えるでしょう。

後半の電力供給に関しては2年以上原発ゼロで問題なく電力供給できていた以上、原発を再稼働させないと不安が出てくるという主張は大きな説得力を持ちません。老朽火力を使い続けるのは…という意見もありそうですが、あくまでも「例外中の例外」とされた老朽原発の高浜原発1、2号機の再稼働を目指す関西電力にとっては大きなブーメランとなりそうです。

経済界が原発再稼働を求めるのはこれまでにも見てきた光景ですが、中学校レベルの基本原理は押さえた上で主張しなければ、いらぬ大恥をかくことになるのではないでしょうか?

怒る関経連「なぜ一地裁の裁判官が」 高浜原発差し止め:朝日新聞デジタル

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