TPP「聖域」崩壊、重要5項目で無傷の品目がゼロであることを農相が明言



「聖域なき関税撤廃」を前提とするTPPには参加しないはずだった自民党ですが、聖域とされた重要5項目の中で何ひとつ無傷で守り切れなかったことが明らかになりました。


熊本地震の発生にも関わらず、震災対応を優先すべきとした審議中止の提案を蹴り、ぜひ進めてくれという首相の意向によって開催されている衆院環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)特別委員会。この委員会で19日にTPPの「聖域」が崩壊していたことが明らかにされました。

TPPの交渉においては、政府がTPP交渉に入る前に衆参農林水産委員会は重要5項目について「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと」とする決議を行っていました。

これらは関税品目では全594品目となりますが、そのうちの3割ほどに当たる170品目で関税撤廃に追い込まれ、「聖域」を浸食されていたことが2015年10月の段階で明らかになっていました。

しかし政府はおよそ7割の424品目に対して「関税を残したので国益を守った」としてきましたが、19日のTPP特別委員会で民進党の玉木雄一郎議員が「関税が残った424品目のうち、無傷の品目はいくつあるか」と質問したところ、石原伸晃TPP担当相も森山裕農相も答えられず、審議がストップ。

そして午後に再開された会議では、驚くべきことに森山裕農相は「単純に枠内税率も枠外税率も変更を加えていないものはない」として、無傷の品目がゼロであることを認めてしまいました。

政府現時点では関税品目ごとの詳細は明らかにしていませんが、「緊急輸入制限措置(セーフガード)の創設などで影響を最小限に抑えた」としつつも、関税を下げたり関税の低い特別枠を設けたりしているとのことで、今後野党側からの追求が本格化する見通し。

野党のみならず与党内からも震災対策を優先して審議中止すべしとの声の上がったTPP特別委員会、安倍首相の「強い意向」を受けて開催されましたが盛大に墓穴を掘った形となり、結局今国会でのTPP承認案と関連法案の承認・成立の断念にまで追い込まれてしまいました。

安倍首相といえば、自らが自民党総裁として戦った2012年の衆議院選挙で「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します。」というマニフェストを掲げて戦ったにも関わらず、4月7日の衆院TPP特別委員会で「TPP断固反対と言ったことは1回もございません」と断言したことに多くの驚愕の声が上がりました。

4年前は「聖域なき関税撤廃」が前提であれば交渉参加にすら反対していたにも関わらず、結局のところ「聖域」の3割で関税撤廃されただけでなく、どれひとつ無傷で守り抜くことができなかったということになり、単に公約違反のみならず、TPP交渉そのものでも大敗北を喫したと言わざるを得ない状況になっています。

あくまで「『聖域なき関税撤廃』が前提でなかったからTPP交渉に参加した。ただ結果的に聖域をひとつも守り切れなかっただけなので、公約違反ではない」と言うのであっても、交渉の結果に対する相応の政治責任を取るのが筋なのではないでしょうか?

TPP、重要農産物すべて譲歩 特別委で農相説明:日本経済新聞

大モメTPP!日本はアメリカに欺かれたのか? やっぱり「聖域」なんてなかった 磯山友幸「経済ニュースの裏側」 現代ビジネス [講談社]

TPP重要5項目に民進党「守られたもの一つもない」


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