世界の農業を干ばつから救う固形の雨、紙オムツから生まれた「Solid Rain」がすごい

ある素材が農業を救う決め手になるかもしれません。詳細は以下から。

21世紀になっても気候や天気の影響を大きく受ける農業。台風や長雨なども大きな問題ですが、それと同時に地域によっては壊滅的な打撃を与えるのが干ばつです。ですが、ある意外なものから生まれた素材が水不足に対する極めて強力な対策となっています。

その意外なものというのが紙オムツです。赤ちゃんの排泄物の水分を吸収するために用いられた高吸水性高分子を、メキシコの科学者は自国の干ばつに悩まされる農業への救世主であることに気付いたのです。

Sergio Rico Velascoさんはいくつかの種類のポリアクリル酸カリウム塩を開発して特許を取り、土に混ぜることによって長期間にわたりゆっくりと植物に水を供給することに成功しました。彼の会社「Solid Rain」は10年以上に渡って同名のプロダクトをメキシコの農民に供給し続けています。

わずか10gのSolid Rainの粉末は1リットルもの水を吸収し、透明なゲル状に変化します。水は蒸発したり土の中に流れ込んだりすることはなく、Solid Rainは地下で植物の根のための貯水池の役割を果たします。同社によるとSolid Rainは1度使えば土の中で8年から10年に渡って効果を発揮し続け、綺麗な水を使えばもっと長い間持たせることも可能とのこと。

Gota solid rain how to save water - YouTube

メキシコ政府が行った、半乾燥地帯であるイダルゴ州での1年間の実験の結果では、Solid Rainを使った農地では使っていなかった場合に比べて300％も収穫が増えています。ヒマワリ農場では通常1000kgの収穫だったところで3000kgの収穫を得ることができ、豆畑ではさらに効果は高く、通常450kgだったところが3000kgと6倍以上になっています。

同社のEdwin Gonzalez副社長によると、Solid Rainは全て自然素材からできており、何年も継続的に使ったとしても土壌を害することはありません。「我々のプロダクトに毒性はありません。生物由来のアリルアミドからできており、役目を終えた後は植物の一部となるのです」とのこと。

Solid RainはGlobal Water Awardを2度授賞しており、Fundacion Miguel AlemanからEcology and Environment Awardも授賞しています。ロイターによる2012年の報道は以下の通り。

Solid Rain brings relief to drought stricken Mexico Video Reuters - YouTube

このような素晴らしい発明品がメキシコ国内でしか知られていないのはなぜでしょうか？答えは「まだ知られていないから」。Solid Rain社はマーケティングにほとんど投資しておらず、メキシコの農民の間では口コミで広がっていたからです。

ただし、最近いくつかのメディアがこのSolid Rainについて報じ始めたことから、干ばつに悩まされるインドやオーストラリアなどから問い合わせを受けたとのこと。Solid Rainがネットでバズることによって、これからの世界の農業にターニングポイントが訪れることになるかも知れません。

また、Solid Rainは農業だけでなく、荒れ地や砂漠の緑化や、水害多発地域で土壌の保水力を高めることによる洪水防止などにも応用が効きそうです。自宅の庭の土にSolid Rainを混ぜたところ、2～3ヶ月に4回ほどしか水まきをしなくて済んだという事例もあるため、ガーデニングの保水剤などとしての需要もありそうです。

今後どのような展開が起きるのか、非常に期待が持てるプロダクトです。

Mexican Farmers Fight Drought with Solid Rain _ Oddity Central - Collecting Oddities

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