「安保反対デモで孫が死んだ」と他人の赤ちゃんの写真を無断転用したデマツイートの投稿者情報、プロバイダーに開示命令

極めて悪質なデマツイートに対し、肖像権の明確な侵害として投稿者情報の開示命令が出されました。詳細は以下から。

赤の他人の赤ちゃんの写真を無断で転用した上に、その祖父母になりすまし、「安保反対国会前デモに連れていかれた、我が孫、聖羅が熱中症で還らぬ人になってしまいました」というデマを拡散しようとしたツイッターの投稿者（@akky1967：既にアカウント削除済）の情報を開示するよう、プロバイダーに対して開示命令が下りました。

問題となったのは安保法制への反対運動が燃えさかる2015年7月26日。akky1967は新潟市在住の夫婦が2014年8月に家族で参加した別のデモの際に撮された夫婦の娘の写真を無断で転用し、ツイッターに【拡散希望】として投稿。内容は

【拡散希望】安保反対国会前デモに連れていかれた、我が孫、聖羅が熱中症で還らぬ人になってしまいました。あの嫁はゆるせません。わたしたちは何度も聖羅を置いてくように話したのですが…。聖羅は何度も何度も帰りたい、と母に泣いてたそうです。

という一から十まで完全なるデマで、安保反対国会前デモへの参加者が赤ちゃんをまったく気遣わずに命を奪ったという極めて悪質な印象操作を行おうと試みる卑劣なもの。しかもまとめサイトにリプライまで送り、拡散を画策していました。

夫婦は米ツイッター社側に発信者の情報開示を求めて仮処分を申し立てており、2015年9月30日の時点で東京地裁がIPアドレスなどの開示を命じる決定をしていました。これによってプロバイダーが判明したため、夫婦はプロバイダーに対して「娘の肖像権を侵害された」などとして投稿者情報の開示などを求める訴えを、新潟地方裁判所に起こしました。

新潟地裁は9月30日、業者側が把握している投稿者の住所の情報を開示するよう命じる判決を言い渡しました。

近藤幸康裁判官は「誰もが自分の容姿などをむやみに撮影や公表されないよう守られる利益があり、承諾を得ずに、多数の閲覧者が拡散できるようにすることは肖像権の侵害とみるのが相当だ」と指摘、その上で「たとえ家族がネットに写真を掲載していたとしても、不特定多数への公開を黙認しているものではない」として「原告側には発信者に対する損害賠償請求のために情報開示を受けるべき正当な理由がある」との判断を示しました。

プロバイダー側はなぜか「本人の名誉を傷つける記述はなく、家族も写真をネット上に掲載していた」として肖像権の侵害にはあたらないと主張、「発信者情報を開示しても投稿した人物の特定ができるかは不明」などと反論していました。

プロバイダー側が投稿者の氏名や住所を把握していないため、今回の判決は開示される情報は投稿者の関係するマンション名とその住所に限られますが、肖像権侵害を起こし、卑劣なデマを拡散した投稿者に大きく近づいたことになります。

原告は会見で「写真を転用されてから1年あまりがたち、とても長い時間だった。判決は長女の権利を守る大きな1歩で、投稿をした人には娘への謝罪を求めたい。判決は同じような被害に苦しむ人にとっても励みになる」と話しています。

個人的な写真を無断転用されてSNSやまとめサイトなどに晒され、誹謗中傷を受けるケースは後を絶ちませんが、この判決はこれ以降の同様の事例に対する重要な判例となりそうです。

ネット肖像権業者に開示命令 - NHK 首都圏 NEWS WEB

写真無断転用の投稿者情報、プロバイダーに開示命令 - 社会 _ 日刊スポーツ

 虚偽ツイッターで写真無断転用、投稿者情報開示命令　News i - TBSの動画ニュースサイト

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