過労死ラインを20時間も超える「公序良俗違反」の残業100時間を「妥当な水準」とする経団連に怒り、抗議行動も


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従業員に苛烈な残業を強いるしか国際競争力を上げる手段を思いつけない経団連。無能という以外どう表現すればいいのでしょうか?怒りの声が増幅しています。詳細は以下から。


BUZZAP!でも先日お伝えしたように、「過労死の撲滅」を目指して勧められてきた働き方改革実現会議が逆に月100時間の残業の合法化という地獄のような結果を招く危機に瀕しています。

2月22日の働き方改革実現会議において、企業の残業時間の上限規制で「繁忙期は月100時間まで」とする案を連合が条件付きで受け入れるというニュースが大きなショックをもって迎えられました。

【働き方改悪】残業規制が過労死ライン20時間越えの「月100時間」まで合法化へ | Your News Online

これまでの日本では労働基準法第36条に基づくいわゆる「36協定」を労使が結ぶことによって残業や休日出勤などの時間外労働を課すことが認められてきました。ここでは「1ヶ月45時間」「年間360時間」などの上限が厚労相の告示で定められています。

しかし、例外規定によって労使が「特別条項付36協定」を結ぶことによってこれを超えて事実上無制限に残業を課すことが可能となる抜け穴として機能。事実上残業は無制限に行われてきました。

残業上限「月80時間」に向けて調整、サビ残や裁量労働制への不安は払拭されず | Your News Online

こうした働く人にとって極めて苛烈な状況を変えようと、2015年に起きた大手広告代理店電通の新入社員の過労自殺をきっかけとして「過労死の撲滅」を旗印に展開されてきた働き方改革実現会議ですが、経団連にとってはこうした日本社会の構造がもたらした過労自殺ですら変革のきっかけとはならないことが明らかになっています。

経団連の榊原会長は22日の会議後に「合意形成ができなければ、無制限に残業できる現状が続く」として、政府案の「繁忙期は月100時間まで」を飲まなければ合意を行わず、法案提出が行われないまま現状の働かせ放題の状況を続けることになると明言。

経団連、連合に譲歩迫る=残業上限でトップ会談へ:時事ドットコム

「無制限に残業できる現状」というのは「特別条項付36協定」という例外規定によって開けられた抜け穴に過ぎず、これまでも原則は「月45時間」「年間360時間」であることは「36協定」を読めば一目瞭然。経済界のトップが名実ともにこの基準をこれっぽっちも守るつもりがないことを明らかにした発言であり、極めて異常。

「繁忙期は月100時間まで」を飲ませるということは、法の定める「月45時間」の倍以上の残業を(繁忙期という恣意的な基準で)課すということになります。これは政府は現在健康障害の発生と、労働時間との間の因果関係を判断するため設けられている「過労死ライン」の月80時間を20時間も超えるというとんでもないラインです。

経団連の榊原会長が言っていることは、「特別条項付36協定」という抜け穴で無制限に働かされたくなかったら、月100時間という現在の原則の倍以上、過労死ラインをも20時間超える残業を受け入れろと迫っているということです。

しかも榊原会長は2月28日の読売新聞の紙面によると、月100時間の残業という上限に対して「まあまあ妥当な水準」だと発言しています。100時間の残業というのは月に20日間9時17時を定時として働くと仮定すると毎日22時まで残業するということ。

忙しい時はそれくらいやって当たり前というのが日本の経済界の認識だということはよく覚えておいた方が良いでしょう。




もちろん、経団連のこのような理屈がどこででもまかり通っている訳ではありません。現在、労働裁判では月80時間を超える残業について「公序良俗に反する」「労働者への配慮に欠ける」との判断が相次いでいます。

83時間の残業について岐阜地裁は「(厚生労働省が残業上限の目安とする)月45時間の2倍に近く、相当な長時間労働を強いる根拠となり、公序良俗に違反すると言わざるを得ない」とし、札幌高裁も95時間の残業について「このような長時間の残業を義務付けることは、安全配慮義務に違反し、公序良俗に反する恐れもある」との判断を下しています。

京都地裁は1カ月100時間という残業上限の中で過労死した男性の裁判で「労働者に配慮していたものとは全く認められない」と判断。この裁判はその後上告棄却によって原告勝訴が確定しています。

残業月80時間超は公序良俗違反 相次ぐ司法判断 - 共同通信 47NEWS

日本労働弁護団も本件に寄せて「労働者の命と健康を守り、生活と仕事の調和を図ることができるような労働時間の上限規制がなされるべきである」と緊急の幹事長声明を発表しました。全文は以下リンクから。

【緊急声明】時間外労働の上限規制に関する声明 _ 日本労働弁護団

上記ツイートが7500回以上リツイートされていることを考えれば、この理不尽さへの怒りは決して小さなものではありません。

なお、日本の労働生産性はOECD加盟諸国35ヶ国のうちで22位とギリシャやスペインよりも下位。G7の中では1992年以来ずっと最下位を独走しており、実質労働生産性上昇率でも28位とほとんど改善する様子もありません。

労働生産性の国際比較 _ 日本生産性本部

これまで散々無制限な残業を従業員に強いてきながらもこの程度の労働生産性しか達成できていないにも関わらず、月100時間の残業の合法化を望み「あまりに厳しい上限規制を設定すると、企業の国際競争力を低下させる」としか言えないのであれば、それは経営サイドの無能無策を曝け出しているに過ぎません。

もちろんこの労働生産性には日本社会に蔓延するサービス残業は一切含まれていません。現時点ですら苛烈な残業と数値を水増しさせる違法のサービス残業によって労働生産性の数値は保たれているわけですが、さらにこの方向性を強化するのであれば、それは文字通りのデスマーチでしかあり得ません。より多くの人が過労で倒れ、死んでいく社会に他ならないのは火を見るよりも明らかです。

以前の記事でも紹介したツイッターの#100時間残業OKは働き方改革じゃないというハッシュタグでは疑問や怒り、憤りの声が上がり、自らがこれまでに置かれてきた苦境などが報告されています。

こうした声の広がりを受けて#最低賃金を1500円にをスローガンに活動している上記ツイート主のAEQUITAS(エキタス)は3月7日19時から経団連会館前で緊急抗議行動を実施します。




19時では残業している人は行けないという指摘もありますが、それを言い出すと23時だろうが土日だろうが時間外労働をしている人も大勢います。なんとか都合が付くという人は抗議の声の可視化のため、ふらりとでも参加してみるといいかもしれません。

(Photo by Canadian Pacific

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