関西弁バージョンだけじゃない、経産省の作った「大阪万博展開事例集」のカルト臭がひどい



ばんぱくばんざい。ばんぱくばんざい。じんるいのしんぽとちょうわ。詳細は以下から。



東京オリンピックが「AKIRA」なら万博は「20世紀少年」というクールジャパン戦略なのでしょうか?経産省が2025年に大阪で誘致を目論む万博のプランが先日の「関西弁バージョン」のみならず、惨憺たるものとなっています。私たちの税金を使って何を遊んでいるのでしょうか?

先日もBUZZAP!では経産省のクールジャパン促進パンフ「世界が驚くニッポン!」の圧倒的な電波っぷりを徹底的にこき下ろしたばかりですが、万博誘致に関しても酷いことになっています。昨日炎上した関西弁バージョンだけかと思いきや、あれすらもが序章に過ぎませんでした。

経産省作成のクールジャパン促進パンフ「世界が驚くニッポン!」が電波を発信しすぎて全然クールじゃない | Your News Online

◆関西人激怒の「関西弁バージョン」
2025年国際博覧会(万博)大阪誘致のため、経産省は「2025年国際博覧会検討会 報告書(案)~関西弁バージョン(試作品)~」(現在は削除済み:魚拓)なるものを作成。そこでは万博をに「人類共通のゴチャゴチャを解決する方法」とし、具体例として「例えばやな、精神疾患」と記載(魚拓時点で既に削除済み)していることが判明しました。

大阪府幹部はこれに「関西人をばかにした上に人権侵害だ。悪ふざけにも程がある」と激おこ。関西人は当然ながら、他地域出身者から見てもこの上なく気分の悪い文体であり「こんな言い方せーへんとか、細かいこと言わんといてな。とにかく大目にみてくれると助かるわ」という冒頭の注意書きがますますイラッとさせます。

しかも「世界にとって、日本や関西・大阪で万博を開催すると何がええか」という欄では「未来社会を考える上で鍵になる要素が揃いぶみしとる」とドヤ顔ですが、これも唖然とするほどの噴飯物です。それぞれ(標準語で)ツッコミながら見ていきましょう。

a)世界トップレベルの科学・技術力をもっとる。ドンパチやるためやのうて、平和目的でのみ開発してそれらをつことる。
→軍事研究に対する防衛省の安全保障技術研究推進制度の新年度予算が急増。経団連も武器輸出に積極的。

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b)周囲のことをめっちゃ考える心を持っとる。(例:ブラジル W 杯でのゴミ拾い、震災時のボランティアや助け合い)
→透析患者、生活保護受給者、妊婦、ベビーカーなど弱者やマイノリティへの苛烈な「叩き」行為は日常茶飯事。教育・医療・介護など社会保障政策の縮小・廃止も相次いでいます。

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c)めっちゃ短い期間でどれくらい儲かったかという考え方だけやなく、長ーーい目で見てどれくらい儲かったかを考えられる「商人(あきんど)の精神が」根付いとる。
→シャープ:鴻海傘下に。東芝:原発子会社のせいで上場廃止の危機。長期的ヴィジョン?

シャープ、正式にFoxconn(鴻海)傘下に | Your News Online

d)GDP 世界第 3 位の資本主義経済の国やのに、中間層がミナミのタコ焼きのタコぐらいブ厚く、制度面で資本主義経済の弱みである格差を是正しとる。
→経産省からは日本の格差問題も貧困問題も見えていないのでしょうか?鋼のハリセンでドツキたいレベルです。

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e)長寿命化、高齢化のトップを爆走しとるし、予防医療や65歳以降も気張って働き続けられる環境整備の推進など、めっちゃ先端的な取組をやっとる。よその国は日本の課題や対策の成果をパクりながら対策を考えていけるっちゅうわけや。
→長寿命化のトップ爆走は既に終わっているのでデマ。少子高齢化トップは爆走していますが、介護政策はあまりにお寒いもので環境はむしろ悪化しています。65歳以上が現役でいなければならないのは年金で生活できない苦境の表れなのですが…?よその国は「成果をパクりながら」ではなく「反面教師として」対策を考えているでしょう。

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f)「一億総活躍社会」っちゅう、みんながそれぞれの能力をドカンと発揮でけて、「だいぶええわ」と生きがいを感じることができる社会を、もうすでに政策目標としとる。
→政策目標には掲げながらも実態が伴わないことは既に数え切れない程指摘されています。「保育園落ちた日本死ね!!!」ブログで「どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。」とされた待機児童問題は#保育園落ちた2017のハッシュタグを見れば分かるように今も解決されていません。そして日本人に本当に必要なのは「生きがい搾取」でも「やりがい搾取」でもなく正当な賃金と待遇、雇用形態でしょう。

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g)自然災害を「よっこらせ」と乗り越え、災害に強いインフラをこしらえ、危機対応訓練をめちゃくちゃやっとる。そして自然災害にキャン言わされても、自然を「敵や!」と言うんやなく、畏敬の念を持ちながら、一緒に仲ようやっていく社会を目指しとる。
→原発に免震棟を作らないことが「災害に強いインフラ」という認識は驚く他ありません。日本は6年前に福島第一原発事故という人類史上最悪クラスの大災害を起こしたにも関わらず、です。

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経産省は別の世界線で別の日本でも見ているのでしょうか?嘘とごまかしで塗り固めた現在からどんな未来社会が見えるというのでしょうか?間違いなくそれは嘘とごまかしで塗り固めた「代替的な未来」でしかないでしょう。

ここまででも脱力ものですが、本当の恐怖はこれからなのでした。

「ゴチャゴチャ解決の場」 経産省の関西弁万博報告書 - 共同通信 47NEWS

万博を「ゴチャゴチャ解決の場」 経産省の関西弁資料に猛批判、大阪府幹部「バカにしている。人権侵害だ」 - 産経WEST

◆カルト臭に満ち溢れ、生と死を弄ぶ万博の「展開事例集」がおぞましい
大阪万博の新たなテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」になったことが報じられましたが、そのニュースで紹介されたのが万博婚。これは「2025年国際博覧会検討会 報告書(案)」(魚拓)末尾の「2025年国際博覧会の展開事例集」の筆頭に挙げられているもの。経産省の公式サイトから閲覧可能です。

大阪万博 新たなテーマ公表|MBS 関西のニュース

2025年国際博覧会検討会(第3回)‐配布資料(METI_経済産業省)


その万博婚の説明は「数千万人が来場する万博で、遺伝子データを活用したマッチングなど、新しい出会いを応援する」という、この上なくピュアなディストピアなもの。遺伝子データというのは機微なプライバシーの中でも最も機微なもの。それを数千万人が来場する万博という場で婚活のマッチングのために使うというのですから、そのプライバシーへの無頓着さに呆れかえる他ありません。

これは完全に優生学思想の現れとしか言えない発想で、倫理的に認められると考えている時点で既に万博を開催する資格はありません。それに加え、いったいどのようにして来場者の遺伝子データを取得し、それらを安全に管理・維持するのでしょうか?機微なプライバシーが漏れた場合に誰がどのようにその責任を取れるのでしょうか?

このような戯れ言が最初に排除されていない時点でおかしいのですが、それが報告書の展開事例集の筆頭に挙げられ、何の屈託もなくテレビニュースで紹介されているというのはまったくもって信じられない話です。

この他にも万博婚と同じ「ライフ」のカテゴリには極めて暗く鬱屈とした、あるいはサブカル的露悪趣味に堕したような生と死をテーマにした事例がずらずらと並びます。カルト宗教のイニシエーションを思わせるようなものも多く、それと同時に他人の生や死を「素材」として面白半分に弄ぶようなものも多く、閲覧注意です。全文は「2025年国際博覧会検討会 報告書(案)」(魚拓)の46ページ目から。

・辞世の書
来場者は自身の半生を振り返り、電子ペーパー上に「辞世の書」を認める(したためる)ことができる。

・In the Coffin Black
来場者自ら棺の暗黒へと一人入り込むことで、身を以て「死」を体感する。

・“Memento Mori”~死を記憶せよ~
万博内に建てられた「天国の塔」からバンジージャンプすることで、人間が潜在的に有する「死」へのアラートを呼び起こし、「生」への強い志向性を惹起するというエンターテイメント型パビリオンである。

・世界葬儀社
世界の葬儀体験とともに、自分が参列者、見送られる側、喪主(ホスト)を体感できる空間を作る。

・私だけがいない世界
ーごく普通の生活を送る主人公の「私」は、スクリーン上で突如、死んでしまう。「私」は死の直後からゆっくりと「天国の塔」を昇天してゆく。そこで見た「私だけがいない世界」は、「私」がいなくなった後も変わらず回り続けており、「私」はただただ呆然とそれを見つめることしかできないのであった。と、その瞬間視界が暗転し、高さ100mからフリーフォール。



上記の展開事例は死の体験を通して生を見つめるという、宗教的なイニシエーションの形式をまるごと取り入れたもの。カルト宗教でのイニシエーションにおいては死と再生を体験させることで信仰に取り込むという方法論が駆使されていることはオウム真理教を例に挙げるまでもありません。

万博に来場するのは極めて多様な宗教的バックグラウンドを持つ世界中の人々です。彼ら彼女らの中には確立した宗教観や信仰を携えている人も多く、遺伝子データに勝るとも劣らないほど機微なプライバシーに属するもの。

そうした万博でこのように軽薄に生や死を扱うのは極めて不適切。タブーに挑戦しているつもりなのかもしれませんが、どこまでも薄っぺらい思いつきに過ぎず、お遊びを超えるものではありません。

そもそも奈良、京都、伊勢など日本の宗教観、死生観に大きな影響を与えてきた歴史への言及もリスペクトもまったく見受けられず、万博で生と死を語るにしては片手落ちと言う他ありません。

・執行の日
5人ずつ通された部屋のモニターには静かに動画が再生される。重大な罪を犯した死刑囚の半生がそこでは描かれる。動画が終わった後、通された五人は、各々で一つずつ設置されたボタンのそばにたつ。合図とともにボタンを押すと「ガコン」と音がなり事は終わる。

・覚悟の手紙
「父ハスガタコソミエザルモイツデモオマエタチヲ見テイル」これは神風特攻隊で無くなった中尉が幼い子供へ送った手紙である。第二次世界大戦時、日本にはまさに“決死” の覚悟で亡くなっていく人たちがいた。彼らは戦争の最中、避けられない死を前に、誰に何を伝えたのか。彼らが残した最後の手記、家族への手紙を展示する。

・後悔先にたつ
人は死を目前にした時、どんな後悔を口にするのだろう。終末期患者への事前調査にて人生への後悔をまとめ、成し遂げたかった思いを、ドキュメンタリー映画として撮影する。

・赤ちゃんエキスポスト
生まれてきたかけがえのない命を守るため、全国から育てられない子供を一挙に引き取る「赤ちゃんエキスポスト」を設立。子供を育ててくれる関西の里親を募集。



こちらの展開事例は他人の生や死を弄んでいるという意味で、さらに酷いもの。死刑囚、神風特攻隊、終末期患者、捨てられた赤ちゃんの人生や歴史、記憶が来場者の「体験」のダシにされるという極めて身勝手なものが並んでいます。

経産省の住田孝之氏によると「学生の皆さん方にもご協力をいただいて、幅広い方と意見交換をさせていただいた」とのことで、若者の発案とされていますが、報告書に記載されてテレビでも紹介されるということは、これらに対して経産省が問題意識を持っていないということ。

いったい経産省は万博を何だと思っているのでしょうか?日本の恥を世界に晒したいのでしょうか?クールジャパン促進パンフ「世界が驚くニッポン!」を見るに、経産省が極めて狭い内輪ノリに毒されていることが容易に想像できますが、そんなものが海外でも通用すると思っているなら大きな間違いです。

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