福島第一原発事故に対する除染の結果生じた大量の原発汚染土が子供の遊ぶ公園や緑地を作るためにも使われるという方針がまとめられました。詳細は以下から。
BUZZAP!では以前、原発汚染土の再利用基準が1kgあたり8000ベクレルにまで緩和されたことを伝えました。これ自体事故前の80倍というあり得ない基準の緩和だったのですが、その用途も厳格に規定されていたはずがグダグダにされることが決まりました。
2016年3月に環境省は福島県内の除染で出た土などの廃棄物の処理を巡り、埋め立てなどで最終処分する量を減らすため、放射性物質の濃度が1kgあたり8000ベクレルを下回った除染廃棄物を道路や防波堤などの公共事業の建設資材として利用する方針を明らかにしました。
環境省の提示した基準の1kgあたり8000ベクレルという値は福島第一原発事故による放射性物質による汚染に対処するために作られた「放射性物質汚染対処特措法」に基づく指定基準であり、放射性廃棄物を安全に処理するための基準です。
一方、原子力発電所の解体等によって発生する金属やコンクリートを、人々が日常生活を営む一般社会で建設資材などとしてリサイクルすることを想定して作られているのが「原子炉等規制法」であり、こちらの基準は1kgあたり100ベクレル。この違いは環境省自らが作成した以下資料から読み取ることができます。
100Bq/kgと8,000Bq/kgの二つ基準の違いについて 環境省廃棄物・リサイクル対策部
つまり、本来の放射性廃棄物のリサイクル基準は1kgあたり100ベクレルであるにも関わらず、環境省は福島第一原発事故の対策で作られ、焼却や埋め立て処分のための基準を記した「放射性物質汚染対処特措法」の基準である1kgあたり8000ベクレルをリサイクルのための数値として持ち出して来たということ。
理由としては行き場のない大量の汚染土をつつがなくリサイクルという形で処理するためであり、そのために事故前の80倍という放射線量の汚染土をもリサイクル可能として扱うことにしているのです。
これだけでも酷い話でしたが、さらに酷いことに元々は使用目的は管理者が明確で長期間掘り返されない道路や防波堤などの公共工事に限定されると説明されていたにも関わらず、2017年2月に非公開会合でこの汚染土のリサイクル案を協議した結果、公園や緑地もこの使用目的に加えられてしまいました。
公園や緑地の造成や保全に当たる作業員や、作られた公園や緑地で散歩をしたり遊んだりする子供を含む一般利用者たちが被曝することを想定した結果、こうした場所でリサイクルされる汚染土は、含まれる放射性物質の濃度が1kgあたり4000ベクレルを下回ったものとするとしています。
「1kgあたり8000ベクレルという基準の半分だから、環境省も子供たちの健康のことを気遣ってくれてる…!」と思われるでしょうか?上記のとおり福一原発事故前の本来の放射性廃棄物のリサイクル基準は1kgあたり100ベクレルであったことを思い出してみてください。事故前の基準の40倍の放射線量の汚染土が、子供の遊ぶ公園や緑地にリサイクルされるということです。
現時点では津波や大雨などの災害で廃棄物が流出したり、土から放射性物質を吸い上げた木が火災で燃えたりして放射性物質が拡散しないよう、最大で1m以上の厚さの土で表面を覆うよう求めるとしていますが、リサイクル基準も使用目的も後付けで変更され続けている以上、この措置が汚染土を用いる全ての公園や緑地に適用されるかは疑問符を付けざるを得ません。
子供が遊ぶ公園にまで汚染土がリサイクルできてしまうのならば、そもそも除染自体する必要があったのかという話にもなってきます。汚染土の厄介払いのために何もかもをグタグタにすることが仮にも環境省を名乗る役所の仕事なのでしょうか?
除染廃棄物利用先に緑地も 造成時の基準まとめる _ NHKニュース
環境省:緑地公園造成に汚染土…非公開会合で検討 - 毎日新聞
【2019年6月4日追記】
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故後に放射性物質に汚染された土壌が横浜市内の保育園や市立小中学校の敷地内に埋められたままとなっています。
これらのうち一部は市が保管庫である北部汚泥資源化センターに移しましたが、市によると151の保育園に汚染土が埋まっているとしています。
ですが対応の目安となる基準より低い事を理由に、市こども青少年局の齋藤聖局長は「(移す)必要性はない」と説明しています。
問題は、こうした汚染土の存在が現在まで引き継がれず、埋めた場所が分からなくなったり保護者らに正確に説明されていないケースが少なからず存在するということ。
そうした中で保育園児2人が白血病を発症しており、決して他人事ではありません。
ただし、水俣病やイタイイタイ病をはじめとする多くの公害訴訟がそうであったように、白血病の発症と汚染土の放射線の因果関係を立証するのは困難を極めるため、どこまで国や自治体がこの問題を真摯に受け止めるかには疑問符を付けざるを得ない状況です。
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