薬物再犯防止に「治療や離脱支援プログラム推進」へ、刑務所ではない社会復帰目指す



日本でも大きな方向転換が始まりそうです。


本日BUZZAP!ではノルウェーがドラッグ依存症に陥った人に必要な事は「処罰ではなく治療だ」との観点から全てのドラッグを非犯罪化することを報じましたが、これに似た動きが日本でも始まりました。

◆刑務所ではなく治療や離脱プログラムという大転換
政府は12月15日に刑務所出所者らの再犯防止推進計画を閣議決定しました。出所者らの社会復帰や更生保護の観点から、覚醒剤や麻薬などの薬物犯を刑務所に入れる代わりに医療機関での治療や民間団体のドラッグ離脱プログラムを活用することを検討するとしています。


推進計画では、刑事司法と医療・福祉分野との連携の必要性を指摘しており、海外での前例などに基づき「拘禁刑に代わる措置も参考にしつつ、新たな取り組みを試行的に実施することを含め、効果的な方策について検討を行う」と記しています。

◆海外でも同様の取り組みは既に実施
法務省によるとアメリカ合衆国やイギリスでは薬物犯罪者の再犯防止策として、刑務所入所の代わりに治療や民間団体の相談支援が行われ、効果が確認された事例があります。

例えば上記記事でも紹介したポルトガルではあらゆるドラッグの個人使用が非犯罪化されています。これらは合法化された訳ではありませんが、ドラッグのリスクを最小化させ、健康被害を軽減させるハームリダクションの考え方に大きく方針転換が行われました。



以前は薬物使用者に厳罰をもって望みながら事態がまったく改善しなかったポルトガルでしたが、非犯罪化後には薬物使用者数が減少し、特に薬物使用に関連する死亡事故が大きく減っています。ノルウェーもこれに続く形で非犯罪化の方針が決定しています。

◆「厳罰化を求める声」を聞く必要はあるのか?
本件に対して10~1月に行われたパブコメでも「日本でも刑務所以外の方法で薬物再犯を防止することが必要」との意見が寄せられていることが紹介されていますが、法務省によるといまだに「世の中には(薬物犯罪への)厳罰化を求める傾向もある」とのこと。

ネットでも「自己責任のジャンキーに税金を使って治療とかあり得ない」といった論調が稀に見受けられますが、これは非常に奇妙なもの。なぜなら刑務所での懲役刑でも同様に税金が使われているからです。

しかも薬物犯の再犯の多さを考えれば、薬物犯に厳罰を与えて刑務所に閉じ込めても、出た後に再犯してまた刑務所に逆戻りされればそれだけ多くの税金が使われることになるのです。


さっさと治療して社会復帰にこぎ着ければ結果的に「自己責任のジャンキー」に使われる税金はより少なくなるため合理的。この辺りの理路を分からず感情論だけで厳罰化を求める声に押されることなく、よりよい社会のあり方を目指す必要があります。

「刑務所以外で社会復帰」=薬物再犯防止へ推進計画-政府:時事ドットコム

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