「処罰から治療へ」ノルウェーがドラッグの使用を非犯罪化へ



違法薬物の使用は罰するべきなのか治療すべきなのか、それが問題です。詳細は以下から。


ノルウェー議会の多数派が政府に対し、違法薬物の非犯罪化を求めています。現在ノルウェーでは1万人前後が違法薬物依存症と考えられており、その多くがヘロイン依存症とされます。

社会主義左翼党のスポークスマンであるNicolas Wilkinson氏によると、議会の過半数が「もがき苦しむ人を罰するのをやめ、代わりに彼らを助け、治療しよう」と考えているとのこと。ただし、議員らは合法化を求めるのではなくあくまで非犯罪化だとしています。

Sveinung Stensland厚生委員会副委員長は「変化には時間が掛かるが、それは視点の変化をもたらす。薬物依存者は病人と同様に治療されるべきで、罰金や懲役などの刑罰で犯罪者として扱われるべきではない」と発言。

2017年3月にはBent Høie厚生大臣がこれまでの主張を変えて「治療は処罰に勝る」と述べるに至っており、今後本格的な立法に向かうことが確実な情勢です。


◆違法薬物犯を処罰しなくて大丈夫なの!?
日本では、田代まさしを筆頭に「再犯」を繰り返す覚醒剤などの違法薬物使用者の逮捕のニュースからドラッグの恐ろしさを感じるという人は多いのではないでしょうか。「頭のおかしいジャンキーを野放しにしていいのか!?」という声もあるでしょう。


ですがこの問題で問われているのは「違法薬物使用者を処罰することがドラッグへの依存の治療に有効なのか」ということです。

刑罰には罪に対して報復をする「応報刑」という考え方だけでなく、犯罪者を更生させて社会に適応させるための処置とする「教育刑」の考え方も存在しています。

そしてドラッグの使用は(特に何度も繰り返される再犯の場合は)少なからず依存症と結びついていることが想定できます。

そうした違法薬物依存症に陥った使用者に禁固刑や懲役刑を与えることが果たして依存症を治療し、社会復帰させる役に立つのか?これではいくつもの前例が示すように「再犯」を繰り返すだけで、必要なのはアルコール依存症やニコチン依存症の患者と同様に脱依存のための治療なのではないか?

このような議論は世界各国で繰り返されています。

◆ポルトガルは全てのドラッグの個人使用を非犯罪化
例えばBUZZAP!で昨年レポートしたBoom Festivalの開催されたポルトガルではあらゆるドラッグの個人使用が非犯罪化されています。

ドラッグは合法化された訳ではありませんが、ドラッグのリスクを最小化させ、健康被害を軽減させるハームリダクションの考え方からBoom Festivalではドラッグの成分をチェックするブースや過剰摂取で気分の悪くなった人のケア施設なども完備されていました。



以前は薬物使用者に厳罰をもって望みながら事態がまったく改善しなかったポルトガルでしたが、非犯罪化後には薬物使用者数が減少し、特に薬物使用に関連する死亡事故が大きく減っています。

今回のノルウェーの方針は決して前例のない荒唐無稽な方針ではないと言うことがお分かり頂けたでしょうか?2011年6月に薬物政策国際委員会麻薬戦争に関して「世界規模の薬物との戦争は、世界中の人々と社会に対して悲惨な結果をもたらし失敗に終わった」と宣言したことから、違法薬物の使用を厳罰をもって処す方針は世界的に転換しつつあります。

社会にとってよりよい選択肢はいったい何なのか、よく考えてみる必要があります。

Norway Decriminalizes Drug Use - The Nordic Page

Norway wants to decriminalize drug use and focus on treatment


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