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採算が合わず、廃炉が確定しました。
関西電力が2019年に40年の運転期限を迎える大飯原子力発電所1、2号機の廃炉を決定したことが分かりました。12月22日の臨時取締役会で正式決定となります。
◆福一以外の100万キロワット超の廃炉は日本初
100万キロワット超の大型の廃炉が決まるのは2011年にメルトスルーの過酷事故を引き起こした東京電力福島第一原発を除くと日本初となります。
大飯1、2号機は重大事故時に、原子炉格納容器内を氷で冷やして圧力の上昇を抑える国内の原発で唯一の特殊な構造のため、新規制基準に適合するための工事に1基あたり1千億円以上の費用がかかると想定されており、採算上のメリットが乏しいことから廃炉が決定しました。
関電は2018年にも、廃炉作業の計画を国に提出することになります。廃炉には30年程度かかる見通しで、廃炉費用は大飯1号機が約578億円、2号機が約580億円と見積もっており、こちらも巨額ながら、老朽原発を事故リスクを背負いながら20年運転延長する事に比べれば割安といえるでしょう。
◆電力需要減に加えて原発の電気が割高となりオワコン化
日本の電力消費量は2010年をピークに減少の一途を辿っています。2011年に発生した東日本大震災と福島第一原発事故によって「ヤシマ作戦」を始めとした節電のムーブメントが発生し、その後も全国で節電意識は広く浸透していきました。
電気事業連合会によると、2010年に10064億kWhだった合計発電量は2015年には8850億kWhにまで減少。4年で13%も減っていることが分かります。
関西電力のみで見ても、2016年度の販売電力量は2010年度に比べて約2割減少。上記の節電意識の浸透に加えて小売りの全面自由化による顧客流出も影響しています。当然ながら人口減少社会の日本では、今後が電力使用量劇的に上昇する見込みもありません。
また、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)などの価格も数年前と比べ下がっているため以前ほど原発によるコスト削減効果が出にくく、いわゆる「原発は低コスト」という神話も通用しなくなっています。
さらに太陽光発電のコストもどんどん下がってきており、コスト競争で原発が優位に立てた時代はもはや過去のものと言うしかありません。
◆事故リスクとテロリスク、そして残される問題
原発を使い続けていくということは、当然ながら上記のデメリットに加えて(あくまで例外とされた20年の運転延長期間中に)老朽原発を騙し欺し使い続けていく中で肥大する事故のリスクが存在し、北朝鮮のミサイルや工作員による原発への攻撃というリスクも存在しています。
また、「トイレのないマンション」と呼ばれた高レベル放射性廃棄物の処分に掛かる費用と最終処分場の建設に絡む諸問題など、解決しなければならない問題には限りがありません。
もちろん福島第一原発事故に絡んだ賠償問題や復興問題、さらには大量の汚染土の処理問題など、既に起きてしまった原発過酷事故の処理もまだまだ終わってはいません。
今後多くのリスクを背負い、多額のコストを掛けてまで原発を推進してゆく理由がどこにあるのでしょうか?ガラパゴス化の果てに再生可能エネルギー産業に乗り遅れては元も子もありません。
福井・大飯原発:22日に廃炉決定 関電 - 毎日新聞
大飯原発22日に廃炉決定 関電、40年超の1、2号機 大型では初 - 産経ニュース
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