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自称保守界隈が群馬県に対して何を行っていたのか、そして群馬県が何に荷担したのかが浮き彫りになっています。詳細は以下から。
◆追悼碑の建立から更新不許可の経緯
群馬県高崎市にある県立の都市公園「群馬の森」に建てられている追悼碑「記憶 反省 そして友好」をご存じでしょうか?この追悼碑は第二次世界大戦中に朝鮮半島から強制連行され、強制労働に従事させられる中で死亡した朝鮮人たちを追悼する目的で建立されたもの。
この追悼碑には以下のような碑文が刻まれています。
追悼碑建立にあたって
20世紀の一時期、わが国は朝鮮を植民地として支配した。また、先の大戦のさなか、政府の労務動員計画により、多くの朝鮮人が全国の鉱山や軍需工場などに動員され、この群馬の地においても、事故や過労などで尊い命を失った人も少なくなかった。
21世紀を迎えたいま、私たちは、かつてわが国が朝鮮人に対し、多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、心から反省し、二度と過ちを繰り返さない決意を表明する。過去を忘れることなく、未来を見つめ、新しい相互の理解と友好を深めていきたいと考え、ここに労務動員による朝鮮人犠牲者を心から追悼するためにこの碑を建立する。この碑に込められた私たちのおもいを次の世代に引き継ぎ、さらなるアジアの平和と友好の発展を願うものである。
2004年4月24日
「記憶 反省 そして友好」の追悼碑を建てる会
2月14日、この碑を管理する市民団体「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会」が群馬県を相手取って行った訴訟の判決が言い渡されました。訴訟で「守る会」はこの追悼碑の設置期間更新を県が許可しなかった事を「裁量権の乱用」として不許可処分の取り消しを求めており、前橋地裁の塩田直也裁判長は県の処分を違法として取り消しました。
いったい追悼碑を巡って何が起こっていたのでしょうか?
この追悼碑が建立されたのは上記碑文にもあるように2004年のこと。「守る会」の前身団体である「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を建てる会」宗教的・政治的な行事や管理をせず、県の許可を10年ごとに更新することを条件として建立されました。
建立後しばらくは特に問題も攻撃もなく毎年追悼集会も開催されていましたが、状況は大きく変化してゆきます。メールマガジン「オルタ」の記事によると
追悼碑をめぐり、2012年ごろから、いわゆるネット右翼などによる『碑文が反日的だ』『強制連行などなかった』『碑が政治利用されている』『在日朝鮮人が建てた碑は撤去せよ』などの意見が、群馬県に対して集中的に寄せられ始めました。
(群馬県朝鮮人犠牲者慰霊碑訴訟 - 一人ひとりが声をあげて平和を創る メールマガジン「オルタ」より引用)
とのこと。同様の記述はレイバーネットの記事にも見られ
追悼集会は、2012年の第9回までは「群馬の森」公園で行われていました。しかし、右翼団体からの「碑文が反日的だ。撤去せよ」との県への「苦情」や、追悼碑前での妨害行動を理由として、会場変更を余儀なくされました。
(追悼碑の存続を求めて~朝鮮人・韓国人強制連行犠牲者追悼集会開かれるより引用)
とされています。これを裏付けるように産経新聞も2014年4月の記事で
集会は一昨年まで碑前で行われてきた。だが、「参加者が歴史認識や朝鮮学校の無償化問題など政府を批判する発言を繰り返している」との通報や県民からの批判が相次ぎ、県は昨年から公園内での実施を認めず、同会は会場を別施設に移した。
(群馬の朝鮮人追悼碑を守る会、批判の中集会 「更新拒否なら国際問題」 - 産経ニュースより引用)
としており、2012年から自称保守界隈からの「通報」や「苦情」が群馬県側に大量に寄せられていたことが分かります。そして「新しい日本を考える群馬の会」を名乗る市民団体らから追悼碑設置許可取り消しを求める請願が行われ、2014年6月に群馬県議会はその請願を採択。群馬県はこれを受ける形で2014年7月に設置期間更新不許可の決定を発表しました。
◆裁判で何が主張され、争われたのか
「守る会」は県議会議長あての追悼碑設置期間更新を求める請願署名をよびかけ、1万筆を超える署名を集めて2014年11月に県議会に提出したものの不採択とされました。これを受けて同月、今回の判決に至る群馬県を相手取っての処分の取り消しを求める民事訴訟を起こしています。
「守る会」は設置条件にある「『政治的行事』も『政治的発言』も定義がなかった」と指摘し、「政治的行事として想定されるのは政治などに関する集会やデモ活動であり、追悼式などは当たらない。明らかに過度に広範な規制で、表現の自由を侵害している」と主張。
一方の群馬県側は追悼式で、出席者が戦時中の朝鮮人動員を「強制連行」と表現したり日本政府を批判したりしたことを問題視した上で「碑文の主旨や内容と違う独自の主義主張が含まれれば、政治的発言に該当し、追悼式などの一部内容が政治的行事に当たる」と主張。
さらに上毛新聞によれば、不許可とした理由には群馬県側が「碑の存在が街宣活動などの原因となったことで都市公園に設置を続けるのは不適当」と判断したことあったとも指摘されています。
後者の理由は極めて奇妙なもので、「抗議の街宣活動の原因となったから設置継続は不適当」とするならば、そこには抗議の正当性が加味されておらず、「揉めていること自体が不適当」といういわば「騒いだ者勝ち」の状況だったということになります。
◆追悼碑に仕掛けられた苛烈な「動員の実態」とは
では2012年から2014年の設置期間更新不許可までに誰によって何が行われていたのでしょうか?そのことを鮮やかに物語るひとつのブログ記事が存在していました。
それは「かけだし鬼女の、今が日本の一大事~よければ一緒に凸しよう!」なるブログに2013年5月21日に投稿された「【緊急凸依頼・文例アリ】群馬にある「記憶 反省 そして友好」の朝鮮人追悼碑を撤去するチャンスだっ!」(魚拓)という記事。引用不能なレベルの醜悪なヘイトスピーチが続きますので閲覧注意です。
このブログ主が記事の冒頭で引用しているのが、差別主義団体「在特会」の前会長である桜井誠(本名:高田誠)とも一時期懇意でありながら、後に金銭問題で決別したことで知られる自称保守界隈の活動家、西村修平の主権回復を目指す会の公式サイトに掲載された韓国大使館前デモ。
そしてその次には同性パートナー制度に反対するとの名目で渋谷で反同性愛デモを主催し、結成大会に安倍首相や複数の現役閣僚が登壇していた事をBUZZAP!でも報じた、これも自称保守界隈の団体「頑張れ日本!全国行動委員会 群馬支部」のリンク。
「頑張れ日本! 群馬支部」は「『群馬の森』朝鮮人追悼碑」として以下のような特設ページも設けて攻撃しています。
ブログ記事には追悼碑に「全くの歴史捏造による謝罪と反省の言葉」が書かれており「群馬県はこの公の場所でのプロパガンダ政治集会を毎年許可しているようです」との「頑張れ日本! 群馬支部」の見解が引用されています。
そして在特会協賛で小池百合子衆議院議員(当時)の「日本と地球の護りかた」という講演会を開催した「マスコミの偏向報道、教育の場での自虐史観授業等に日本の危機を感じています」とする女性らによる、こちらも自称保守界隈の団体「そよ風」による凸(編集部注:電話やFaxを用いた直接抗議)の依頼があったことを伝え、ブログ主は「朝鮮人追悼碑なんざぶっつぶせっ(激怒)」と怪気炎を上げます。
ということで、これはひとりの活動家のブログ記事ではありますが、リンク先を見てみれば自称保守界隈の有象無象の数え役満状態となっている事が一目瞭然です。
ヘイトスピーチという言葉もまだ一般には知られていなかった2013年(「レイシストをしばき隊」の結成は2013年2月)に、いったいどのような繋がりによってこうした嫌韓ヘイトがこの自称保守界隈で撒き散らされていたかを明確に指し示す記録という事ができるでしょう。
◆群馬県は何に屈し、何に荷担しているのか
上記ブログ内であからさまに吐き出されるヘイトスピーチを見れば分かるように、群馬県が言い分を飲み、同調して追悼碑の更新不許可を決定した相手が差別主義と排外主義にまみれた自称保守界隈であったことは改めて指摘するまでもありません。
ここで名前の上がった「頑張れ日本!」と「そよ風」は現在進行形でこの追悼碑に対して攻撃を繰り広げています。
群馬県は今回の判決を不服として控訴するのであれば、自らがどのような思想を持ち、どのような言動を行っている集団に与しているのか、そしてこれからも与し続けるつもりであるかを明確に示すべきでしょう。
訴訟:朝鮮人追悼碑の不許可は違法 群馬県の処分取り消し - 毎日新聞
東京新聞:朝鮮人犠牲者追悼碑訴訟 「表現の自由」争点 前橋地裁で14日に判決:群馬(TOKYO Web)
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