大阪地裁「不発弾は地主が自腹で撤去しろ、これは国民が等しく受忍すべき戦争損害だ」→謎の自己責任論に批判殺到


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終戦から73年目を迎えますが、未だにあの戦争による損害は国民が受忍しなければならないとの判断です。詳細は以下から。


不発弾発見のニュースは戦後から現代に至るまで何度も報じられ、自衛隊が撤去処理を行う様子をテレビで見たことのある人も多いでしょう。ではもしあなたの土地から不発弾が見つかった時、この世界大戦の遺物の処理は誰が行うべきなのでしょうか?

大日本帝国が始めた太平洋戦争の帰結として行われた空襲の長く残された爪痕ですが、この撤去は当然国や地方自治体の責任において行われてきたとほとんどの人が考えていたのではないでしょうか?

ですがこの度、大阪地裁は「国や市に費用を負担する法的義務はない」という驚くべき判決を下し、訴えを棄却しました。

この訴訟は不発弾を処理する費用は自治体や国が負担すべきだとして、大阪市の不動産管理業の男性ら3人が市と国に576万円の支払いを求めたもの。2015年3月に南海難波駅から徒歩数分の大阪市浪速区の男性が所有する土地で、戦時中に投下されたとみられる米国製1トン爆弾が見つかったことが発端です。

大阪市は交通規制のチラシ作製費など約190万円を負担し、この年の5月に陸上自衛隊が撤去作業を行っていました。一方で爆発に備えた土囊の防護壁や、周辺警備の費用の合計576万円を大阪市が男性らに負担させていました。

訴訟では被告の国と市が互いに責任を押しつけ合う異様な展開となっており、国は一次的な責任は自治体と都道府県警察で「自衛隊は求めに応じ専門的な作業をしただけ」と主張。一方で大阪市は、原因は「国策としての戦争」とし、国に責任があると訴えました。

しかし、両者とも明確に「土地所有者が負担すべきだ」という主張はしていなかったものの、大阪地裁は原告側が根拠とした地方自治法などに不発弾についての明確な規定がないことから「支払い義務を課すものではない」と判断して訴えを棄却し、地主に自腹での支払いを求める判決を下しました。

さらに不発弾の処理は「国民が等しく受忍しなければならない戦争損害」とした上で国や市が負担することは特定の個人に利益を与えることになるとして、「負担しないことが社会通念上著しく妥当性を欠くとはいえない」と結論づけています。

国と地方自治体のどちらが払うかという争点だったはずが、司法が「どちらも払わなくていい、地主が負担しろ」という極めて不可解な「自己責任論」を展開したことにネット上では「『国民が等しく受忍』すべきならばこそ税金を投入しなくてはおかしい」との批判の声が上がっています。

日本国民は21世紀になっても大日本帝国が始めた太平洋戦争の損害を個人で背負わなくてはならないのでしょうか?そしてなにより撤去費用を捻出できない地主が不発弾を放置したり自己処理しようとして事故を招けば本人だけの問題では済みません。危険物ならばこそ国なり地方自治体が責任を持って処理するのが筋のはずです。

不発弾処理の費用、「国・市に法的義務なし」 大阪地裁:朝日新聞デジタル

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