日本と北朝鮮の主張がことごとく食い違っています。詳細は以下から。
◆拉致問題の成果はあったのか?
6月12日に行われた世界初の米朝首脳会談。安倍首相が直前の日米首脳会談でトランプ大統領に「拉致問題に触れてほしい」と要望を伝えたものの、合意文書には一言も盛り込まれなかったことが大きな話題となりました。
この日米首脳会談の際にトランプ大統領は「ミシガン、ペンシルバニア、オハイオの各州での新たな自動車工場」への投資を求め、「実現する」との安倍首相の回答があったことを明らかにしています。
こうしたことから「日本は見返りとしてアメリカに大きなプレゼントを送りながら、見返りはゼロだったのではないか」との批判が出ていました。
◆「解決済み」と言ったか、言わなかったか
こうした事態を受けてか、自民党の萩生田幹事長代行は6月13日に安倍首相と面会、米朝首脳会談にトランプ大統領から電話で説明を受けた安倍首相の説明として「拉致問題は解決済みと言及しなかった」と記者団に語りました。
萩生田氏は「金委員長は今までこの問題は解決済みだということを公の席で言ってきましたけれども、そういう反応がなかったということは大きな前進だと思います」と語り「今までは『解決済み』ということで終わっていたが、これからさらに話をするのが確認できたのだと思う」との認識を明らかにしています。
ですが北朝鮮側は6月15日の国営ラジオで米朝首脳会談後初めて拉致問題に言及し、「すでに解決された」との認識を示しました。
北朝鮮は日本が「無謀な北朝鮮強硬政策に執拗にしがみついている」と批判、「日本はすでに解決された拉致問題を引き続き持ち出し、自らの利益を得ようと画策した」と主張しました。
北朝鮮はこれまで通りの主張を繰り返しているだけですが、米朝首脳会談を経て安倍政権が「『解決済み』と言わなかった」と成果を強調した直後での言及となり、日本側の主張を全否定する結果となっています。
◆接触したのか、しなかったのか
また、6月14日にはモンゴルで開かれた国際会議の場で日本の外務省の幹部が北朝鮮高官と接触したとの報道がありました。
外務省の志水史雄参事官が北朝鮮外務省のキム・ヨングク軍縮平和研究所長と短い時間意見交換したとされていますが、北朝鮮側がどのように回答したのかは明らかにされていません。
当のキム・ヨングク所長は取材陣からの「日本と接触しましたか?」との問いに「あなたたちの国の人に聞いて」と返したのみ。さらに北朝鮮の別の担当者はJNNの取材に対して「日本と接触していない」と答えるなど、双方の主張は食い違っています。
北朝鮮側が自ら「解決済み」とする拉致問題について日本と「接触」したことを認めない姿勢は、日本が拉致問題で「自らの利益を得ようと画策」しているという批判と同一線上の、ある意味「首尾一貫」したもの。
この事実からも、米朝首脳会談の場においても北朝鮮が拉致問題に対して姿勢を変えていないという事が明らかと言えるでしょう。
◆本当にパイプが無いのか
もちろんこれは表面上の話でしかなく、水面下で何らかの交渉が行われている可能性はあります。
しかし4月の南北首脳会談の際に金正恩が「韓国やアメリカなど、周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は直接言ってこないのか」と発言していることはご存じの通り。
また北朝鮮のミサイルへの抗議も東京新聞の五味洋治論説委員に「北朝鮮大使館にファックスを送っておしまい」と曝露されているように、本当に現在報じられている以外のパイプが存在していないのだとすれば、米朝首脳会談での拉致問題の成果はゼロだったと言わざるを得ません。
そう考えて萩生田氏の発言をもう一度読み返してみると、トランプ大統領から電話で伝えられた安倍首相の説明という「伝聞の伝聞」で「拉致問題を『解決済み』と言わなかった!大きな前進!」というアクロバット擁護をした上に、一瞬でその事実をひっくり返されてしまうという極めて残念な結果になっている事が見て取れます。
これまで北朝鮮を「脅威だ」「国難」と強く煽り、外務大臣が「北朝鮮との断交」を世界各国に求めるなど「最大限の圧力」をかけ続けてきた安倍政権。
「拉致の安倍」と呼ばれ、2012年の第2次安倍政権の開始時には「私の政権で拉致問題を解決する」と豪語したにもかかわらず、5年半が経ってもなんら成果を挙げることができなかった事が明らかになってしまったと言えそうです。
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