従業員の命や健康よりも企業利益を優先する姿勢を明確に打ち出した形です。詳細は以下から。
損保大手の三井住友海上火災保険が今年の4月から年間の残業時間の上限をこれまでの350時間から540時間まで、190時間も引き上げたことが発覚しました。
同社労働組合の資料によると、上限引き上げの対象は管理職を除いた課長代理以下の社員で、1ヶ月の上限時間はこれまで同様60時間に据え置いたとされています。
つまり、これまで上限ギリギリの残業が可能だったのが6ヶ月弱だったものが、9ヶ月に増えたということを意味しています。
この資料によると、会社側が上限引き上げの理由として述べたのは「最高品質を追求していくために、時間外労働上限規制の法制化動向を踏まえつつ見直しを検討する必要がある」というもの。
これに加え、現在国会で審議中の働き方改革関連法案で、過労死や過労自殺の問題を鑑みて残業時間の上限規制が論じられていることを踏まえて「限度時間は現在審議中の法改正案よりも短い水準で設定している」としています。
ただし、以前からBUZZAP!でも指摘してきたように、月100時間、年間720時間の上限規制は過労死ラインを超えたものであり、繰り返し批判されているもの。
今回の三井住友海上の残業時間上限の引き上げは過労死や過労自殺の危険をはらんだ「長時間労働の合法化」を横目に見ながら、従業員にさらなる長時間労働を強いることになります。
また三井住友海上は東京新聞の取材に対して「限度時間内の仕事では一部の職場で客対応や品質徹底に支障を来す懸念がある」「近年は自然災害の発生が多く、契約者に迅速に保険金を支払えなくなる懸念もある」と説明。
ですがこうした言説は顧客サービスのクオリティや災害対策を「人質」とし、従業員により過酷な業務を強いることに直結します。
誰もが知る大企業による、こうした理由での残業上限時間の引き上げが、他の企業の「お客様の笑顔のため」の同様の引き上げの呼び水となる事は間違いなさそうです。
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