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長い長い、先の見えない廃炉作業が始まりました。詳細は以下から。
◆ようやくもんじゅの廃炉作業が本格始動
1985年の着工以来日本の税金1兆2000億円を食いつぶし、稼働してすぐにナトリウム漏洩事故を起こし、2010年にも原子炉容器内に筒型の炉内中継装置が落下する事故が起き、まともに運転すらできないまま廃炉に追い込まれた「悪夢の」高速増殖炉もんじゅ。その長い長い廃炉への道のりがようやく始まりました。
今回始まった作業は、原子炉の横にある液体ナトリウムで満たされた燃料プールから高さ4.2m、太さ11cmの燃料を取り出して洗浄、容器に密閉して水の燃料プールに移す作業。今日は燃料1本を移す予定で、今後は同様の作業を1日1本のペースで続けるとのこと。
現在液体ナトリウムの燃料プールにある160本を移し終えた後、「予定」では2019年7月からとうとう原子炉内にある燃料370本をまずこの液体ナトリウムの燃料プールに移動させ、さらに水の燃料プールへと移すことになります。
◆廃炉30年という「皮算用」
ここまでの第1段階が2022年度に終了する「予定」となっていますが、規制委が認可している廃炉計画はこの段階まで。燃料に直接触れていた原子炉内や燃料プール内の液体ナトリウムの抜き取りといった第2段階以降の具体的な計画は認可どころかまだどうするかすら未定の状態です。
さらに、これらの取り出した燃料は当然高レベル放射性廃棄物なのですが、水の燃料プールに移動させた後の処分方法などもまだ決まっていません。
つまりは目先のやることしか決まっておらず、長期的な見通しどころか目の前の燃料の始末をどうするかさえ決まっていないのが現状ということ。30年で廃炉が完了するというのは「東京五輪の予算は3000億円で済む」レベルの絵空事でしかありません。
また、現時点で廃炉費用は3750億円を見込んでいるとのことですが、工程すら立てられていない状態での予算ですから、当然この額で収まると気楽に信じ込むわけにはいきません。計画が1年遅れればそのぶん人件費を含めて金額は膨れあがりますし、事故が起きればそれどころでは済みません。
◆原子力機構のダメ過ぎるガバナンス
最高の技術力を持ち、最高度に統制された士気の高い組織がこの廃炉作業を行うのであれば、あるいは国民は信用して過程を見守る事ができるのかもしれません。しかし、結局1兆2000億円をつぎ込んでまともに稼働させられなかったという実績(もしくはその欠如)の原子力機構は残念ながら信用には値しません。
もんじゅの事故と不祥事についてここで振り返ってみますが、そこには原子力機構のガバナンス能力の欠如と隠蔽体質が深く関わっています。
もんじゅは1995年に稼働してすぐにナトリウム漏洩事故が発生、さらに事故現場を撮影したビデオの編集による隠蔽が発覚した上、特命内部調査員としてマスコミの矢面に立っていた動燃総務部次長が死亡、自殺とされるという事件が起りました。
その後2010年には運転再開を目指していたさなか、原子炉容器内に筒型の炉内中継装置が落下する事故が発生。こちらでも装置を現場で担当する燃料環境課長が自殺し、遺体で発見されるという結果に終わっています。2011年6月24日に装置の引き抜き作業は完了しています。
問題はこれにとどまらず、2012年11月には1万個近い機器の点検漏れがあったことを原子力規制委員会が発表。その後の立入検査によってさらに13個の重大な点検漏れが発覚。もんじゅの無期限の使用停止を命じました。日本原子力研究開発機構は9月には点検漏れが全て解消したと報告しましたが、10月には再び点検漏れが発覚するというあまりにずさんな体制が明らかになっています。
そして10月21日には中央制御室の換気をする系統の弁など、最重要の15個の部品を誤って最も重要度の低いランクに誤って分類していたことが発覚。なんと1992年の試験運転開始からただの1度も点検されていなかったことが明らかになりました。
既に原子力機構が現時点でも存在を許されていること自体が不思議なレベルの不祥事のオンパレードですが、同じ原子力機構が廃炉作業も担当しているということはしっかりと頭に入れておかなければならないでしょう。
◆今そこにある事故の危険
そして、廃炉作業時に起こりうる事故の危険としては、原子炉や燃料プールで用いられている液体ナトリウムは空気に触れれば発火し、水に触れると爆発的に化学反応を起こすため、扱いが極めて困難だという事実があります。
不透明なナトリウム中にあり肉眼で見えない燃料体を、遠隔操作で移し替える作業は簡単なものではありませんし、燃料に触れている液体ナトリウムは当然ながら強い放射能を帯びています。
特にもんじゅの原子炉は一般の原発とは異なる特殊な構造で、370体の核燃料が互いに支え合うように入っています。よって原子炉から核燃料を取り出す際には、1体取り出すたびに、ほかの核燃料が倒れないように核燃料と同じ大きさの模擬燃料を入れなければならず、作業の難易度はより高くなっています。
ひとたび事故が起れば火災や爆発に繋がる恐れもあり、放射能漏れが発生する可能性も否定できないのが現状です。燃料取り出し作業の終了が「予定」されている2022年度までは毎日薄氷を踏む日々が続くといっても過言ではありません。
さらに、もんじゅではこの原子炉容器内を満たしている液体ナトリウムの抜き取りを想定していない設計になっているという致命的な問題も指摘されています。
(高速増殖原型炉もんじゅ公式サイトより引用)
日本原子力研究開発機構はこの問題を報じた毎日新聞に「記事は誤報である」と抗議しましたが、残念ながら完全な自爆に終わったことは以前BUZZAP!でも詳しく示したとおりで、単に隠蔽体質の再確認に留まっています。
とはいえ、既に存在している以上なんとかして廃炉作業を行わなければもんじゅはこの地上から消え失せてはくれません。数十年後に訪れるであろう廃炉完了の瞬間まで、引き続き本件はしっかりと監視していくことが必要でしょう。
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