空前の好景気のはずでしたが…。詳細は以下から。
◆好景気なのに人手不足倒産という謎
麻生財務相が「経済成長感じない人はよほど運がない」と述べ、自民・二階幹事長も「今は食べるのに困る家はない。こんなに素晴らしい幸せな国はない」と胸を張る現代日本。
GDPも順調な伸びを見せ、賃金も急伸するなど、いざなぎ越えの好景気に沸き返っているはずでしたが、そんな日本経済に異常が発生しています。
それは、人手不足を背景にした国内の企業倒産。この件数と負債総額が双方ともに過去最多ペースで増加しています。既に9月までの合計が299件に上っており、10月中にも昨年の317件を上回る勢いで、1月から9月の人手不足倒産による負債総額は417億円。
人手不足問題の表面化を受け集計を始めた2013年以降で見るとピークは件数が2016年の340件、負債総額が2013年の541億円で、このペースなら今年の件数では400件前後、負債総額も550億円前後まで伸びる見込みで、どちらも記録更新にリーチが掛かった状態です。
◆賃金や待遇を改善すればいいはずなのに…?
好景気であれば人手不足自体はむしろ当たり前の話ですが、深刻なのはこの「人手不足倒産」の理由。従業員が確保できないことで事業継続が困難になったり、社員を引き留めるため賃金を無理に引き上げたことで収支が悪化したというものが多数だということ。
景気が良くて事業拡大に伴う人手が足りないのであれば、バブル時代にやっていたように賃金や待遇を他よりも改善して人を呼び込めばいいだけの話です。しかし今の人手不足では賃金の引き上げが収支の悪化、ひいては倒産にまで繋がってしまっています。
つまり、結論から言えばこれは好景気に伴う人手不足ではないということ。少子高齢化に伴って働き手が減っているだけで、業績が改善していないために賃金や待遇を改善することができず、「そんな賃金や待遇では生活できない」とそっぽを向かれている状態ということになります。
もちろん技能職などの誰でもできるわけではない仕事もありますが、この失われた30年の中で非正規雇用が4割に至るまでに蔓延し、いわゆる氷河期世代を中心に技能を習得できず、低賃金で使い潰されてきた若い人材が日本には大量に存在しています。
今は本来であればその世代が40代の働き盛りになっていたはずですが、企業の求めるスキルを持ったこの世代の人材が単なる少子化という傾向を超えて大幅に減っている現状も指摘しないわけにはいきません。
◆中小零細だけで終わる話ではない
今回の「人手不足倒産」に至った企業は資本金別に見ると1000万円未満の零細企業が55.8%と過半数を占め、1000万円以上1億円未満の中小企業が43.8%となっています。
今のところは経営体力がある大企業や中堅企業が倒産まではめったに至らないとされていますが、中小零細企業が崩壊に向かえば、そうした下請け・孫請け企業に多くの業務を委託してきた大企業が無傷で乗り切れるとは限りません。
中小零細企業に勤めた経験のある人であれば、ダンピングや無茶な納期での発注など、大企業による「下請けいじめ」を経験した事のある人は少なくないはず。
今回の「人手不足倒産」は、まともに従業員に必要な賃金や待遇をもたらすことのできない「ゾンビ企業」の消滅ではありますが、そうしたゾンビ企業の血肉を吸って利益を出してきた大企業の問題であることはしっかり認識しておく必要があります。
企業の従業員をはじめとした「労働者」は同時に物やサービスを購入する「消費者」でもあります。その「消費者」が十分な賃金や待遇の下で生きていけなければ、消費が増加し、経済が回ることはありません。
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