このまま法改正となれば、誰も望まない誤爆の嵐が発生しそうな予感です。詳細は以下から。
「漫画村」に代表されるインターネット上の漫画などのコンテンツの海賊版対策を話し合ってきた文化審議会の小委員会がまとめた報告書に対し、当の漫画家らを筆頭に多くの批判の声が上がっています。
◆海賊版対策のDL違法化を強行へ
1月25日に文化審議会著作権分科会の法制・基本問題小委員会が開催されましたが、刑事罰の対象範囲をもっと絞り込むべきだと反対意見が続出。日程的な余裕がないとして小委員会での議論は打ち切りになりました。
文化庁は通常国会に著作権法の改正案の提出を強行する方針を崩しておらず、2月13日には権利者の許可なくインターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツについて、著作権を侵害していると知りながらダウンロードすることを全面的に違法とする方針が文化審議会著作権分科会で了承されました。
ネット上のコンテンツに関しては、2009年の法改正で音楽と映像に限って違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードすることが違法化されています。
今回の法改正は「漫画村」などの漫画の海賊版サイトへの対策を求める声に応じたものでしたが、漫画などの画像だけでなく小説や雑誌、写真、論文、コンピュータープログラムといったネット上に存在するあらゆるコンテンツにまで拡大されることになりました。
◆「コピペ」や「スクショ」も場合によっては違法に
対象となるのは違法DLサイトだけではありません。個人ブログやツイッターの画面であっても、権利者の許可のないアニメの絵やイラスト、写真などのコンテンツが含まれていればダウンロードは違法となります。
また、ブログやツイートに載せられた歌の歌詞や小説の一節などを端末内でコピーして張り付ける「コピー&ペースト」も禁止となります。
パソコンやスマートフォンなどの端末で画面を撮影して保存する「スクリーンショット」は今や特別珍しい機能ではありませんが、撮影対象が著作権を侵害していれば違法ダウンロードに含まれてしまいます。
これらは著作権侵害だと知っていた場合に限って違法となるとされていますが、ネット上の各コンテンツが著作権を侵害しているかどうかを全て完全に判別する事は不可能に近く、「ネットが萎縮する」との指摘も。
またDLした人が「著作権侵害の違法コンテンツだと知らなかった」と主張した場合、本人が「違法だと知っていた」事を証明する事は極めて困難で、実効性も疑問視されている他、捜査当局が行っているとされる「自白の強要」や「別件逮捕」のためにこの法律が濫用される可能性も危険視されています。
なお刑事罰の対象範囲については、小委員会で反対意見が相次いだことから、海賊版サイトからのダウンロード、原作をそのまま丸ごと複製する場合、権利者に実害がある場合、反復継続して繰り返す行為などに要件を絞り込むとのこと。
◆しかし「漫画村」は規制できません
ですが、この法改正には最も問題とされた「漫画村」タイプの海賊版サイトを違法化できないという決定的な穴があります。文化庁がこの問題にパブリックコメントを求めた際の参考資料「『ダウンロード違法化の対象範囲の見直し』に関する留意事項」を見てみると、資料の冒頭に驚くべき記述が。
〈ダウンロード違法化の効果について〉
ダウンロード違法化に関して、「ストリーミング型(オンラインリーディング型)の海賊版サイトの視聴・閲覧が違法にならないため、政策的に効果がない」という主張がありますが、ダウンロード型の海賊版サイト等も多数存在しており、それらのサイトによる被害の拡大を防止するための措置として一定の効果が見込めるものです。
つまりは漫画村のようなストリーミング型とされるタイプの海賊版サイトに対して無力である事が、法改正を始める時点で判明していたということになります。
最も問題視されていたタイプの海賊版サイトを野放しにしたままで、ネット上の全コンテンツのダウンロードやコピペ、スクショまでもに網を掛ける方針は「やってる感」の演出と批判されても致し方ありません。
下手をすればネット全体が巨大な地雷原と化してしまう可能性もありますが、日本のネット文化はどうなってしまうのでしょうか?
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