「原発を新増設して運転も60年超に」経団連の原発への方針の180度大転換はなぜ起こったか



経団連の中西会長が原発再稼働政策に疑念を呈した年始の発言から4ヶ月余り。経団連の原発政策への姿勢が180度の大転換を果たしています。いったい何があったのでしょうか。詳細は以下から


経団連の中西宏明会長は4月8日、記者会見で原子力発電の安全性確保や国民の理解を大前提に、原発の再稼働や新増設を真剣に推進すべきだとする政策提言を発表しました。

またこれに先立つ4月5日には、提言で原発を現行の最長期間である「60年」よりも延長できるよう検討することを要請すると共に、運転期間算定の際、原子炉停止期間を控除を求める事が報道されています。

今後も原発を新増設し、稼働期間も例外的であるはずの最長「60年」を超えて動かせという、文字通り原発推進に全振りした内容となっています。

ですが、中西会長の発言はこの4ヶ月で180度と言っていいレベルに大転換しています。

◆「全員が反対するものを無理やりつくるのは民主国家ではない」
日立製作所会長でもある中西会長の、2019年1月1日の年頭会見での原発政策に関する発言は大きな驚きをもって迎えられました。

中西会長は政府の原発政策について「お客さまが利益を上げられない商売でベンダー(提供企業)が利益を上げるのは難しい。どうするか真剣に一般公開の討論をするべきだと思う。全員が反対するものをエネルギー業者やベンダーが無理やりつくるということは、民主国家ではない」と発言しました。

これまで経団連が強力に原発推進を掲げてきたことは周知の通り。その経団連の会長が原発ビジネスが頓挫している事を認め、方針の見直しも検討すべきだと明言したのです。

日立製作所は東芝、三菱重工とならぶ原発プラントメーカーですが、国内では福島第一原発事故の後に原発の新増設ができない状況となっていました。


日立は海外に活路を求めたものの、イギリスでの原発新設の案件は福島第一原発事故を受けて安全対策などのコスト増大により、総事業費が2兆円から3兆円規模にまで増大し、頓挫しています。

自社の事業で原発輸出の厳しさ、世界の原発事情の難しさを知っているからこその発言と読み取れますが、わずか半月後にはこの姿勢は大きく翻されます。

◆「原発の再稼働はどんどんやるべきだ」
ですが1月15日の会見で、中西会長は原発の再稼働について「原発の再稼働はどんどんやるべきだ」と発言。

さらには安全について十分議論し尽くしている原発も多い。(立地、周辺)自治体が(再稼働に)イエスと言わない。これで動かせないと、地元自治体への圧力とも取れる発言を行いました。

なお、この際にも状況打開のために「(公開で)討論しないといけない」と呼びかけています。

まるで手のひらを返したような発言には反発もありましたが、自らの原発推進の立場を明確にした上で討論して決めるべきだとも読み取れます。しかし、結局この討論は未だに実現していません。

◆「絶対にダメという方と議論しても始まらない」と公開討論を拒否
この後、中西会長はさらに脱原発を求める人々を揶揄するかのような発言を繰り返し、公開討論も拒否する事となります。

小泉純一郎元首相が顧問を務める市民グループの「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」は2月14日に記者会見を行い、1月11日と2月13日の2度、経団連に公開討論会開催の要請書を手渡した事を明らかにしました。


ですがこの同日、中部電力の浜岡原子力発電所を視察後に原子力発電所と原子爆弾が頭の中で結び付いている人に両者は違うと理解させるのは難しいと発言。

そして3月11日、中西会長は脱原発派に対して「エモーショナル(感情的)な反対運動について議論してもしょうがない」「絶対にダメという方と議論しても始まらない」などと発言し、改めて討論を拒否しました。

ですが、公開討論を申し入れた原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟は「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表し、野党4党が共同提出して審議を求めるなど、極めてロジカルな活動を行っている団体。

中西会長の「エモーショナルな反対運動」「絶対にダメという方」という評価は根拠のないレッテル貼りに近いもので、結果的に討論からの「逃亡」という印象を与えてしまっています。

◆いったいなぜ大転換が起こったのか
原発政策の継続に対して疑問を呈し、公開討論を呼びかけた年頭会見から4ヶ月の間に原発の新増設に運転期間延長の要請と討論の拒否へと姿勢を変えた経団連。

その転換の理由としては、原発を強力に推進する経産省の影響の強い官邸からの圧力が取り沙汰された他、原発輸出の行き詰まりによって国内で原発事業を行うしかなくなったからだという見立てもあります。

中西会長は今回の提言の中で、東日本大震災から8年が経過しても原発再稼働が停滞し、再エネ利用拡大のための環境整備も進んでおらず、火力依存度が高止まりしている現状を懸念し「日本の電力システムは危機に直面している」と強調しています。

加えて「社会が受け入れるなら、原発比率を高めるのが一番現実的だ」とも指摘していますが、実際には福島第1原発事故の収束の見込みすら現時点でもまったく立っておらず、莫大な税金が投入され続けているのが現状。


また高速増殖炉もんじゅは稼働実績のないままに廃炉となり、フランスの高速炉開発も凍結されて、日本の原発政策の要である核燃料サイクルも完全に頓挫。加えて高レベル放射性廃棄物の問題は未だに候補地の絞り込みすらできておらず、各地の原発には大量の核のごみが行き場なく保管されています。


一方で、再生可能エネルギーは世界各国で急ピッチ研究や技術開発が行われており、低価格化も進んでいます。

多くの国が原発の建設から手を引き、日本国内の原発に絡む問題の解決の糸口も見つからない状態で、今後も原発推進に突き進む事は日本にどのような未来をもたらすのでしょうか。

経団連の立場がどうであれ、日本の今後に直結するエネルギー政策であるだけに、まずは真摯な公開討論を行う必要がありそうです。

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