西成、あいりん地区として知られたこのエリアの大きな曲がり角となるかもしれません。詳細は以下から。
星野リゾートが5月28日、大阪市浪速区の新今宮駅前で開発中の施設の名称を発表、6月1日に着工することを発表しました。
施設名は星野リゾートの第4のブランドである「OMO」を冠した「星野リゾート OMO7 大阪新今宮」となります。
「OMO」は「寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市観光ホテル」とのコンセプトで、北海道に「OMO7 旭川」、東京に「OMO5 東京大塚」に続く3施設目となります。
国内外の観光客にターゲットを絞ることにより、これまでの都市型ホテルとは違ったロケーションで、より観光に特化したサービスを提供するとのこと。
またOMOブランドの特色として、ホテルを中心とした街全体をひとつのリゾートとして捉えており、ホテルから徒歩圏内の街のディープな魅力に触れ、溶け込んでもらうことをサポートする「Go-KINJO」サービスがあります。
「Go-KINJO」スタッフらが独自の視点でのこだわりを詰め込んだ「ご近所マップ」とディープな地元スポットを友人のようにガイドする「ご近所ガイドOMOレンジャー」で構成されています。
新今宮の駅のホームから見る人や電車で通過する人にもアピールするホテルのデザインを目指すとしており、巨大なガーデンの四季折々の違った風景も楽しんでもらいたいとしています。
なおラグジュアリーなサービスだけを提供するわけではなく、幅広い層の観光客に楽しめるホテルを目指します。価格帯も10000円から30000円程度を想定しているとのことです。
興味深いのは、質疑応答での時事通信社の質問に対する星野リゾート星野佳路代表の回答です。
時事通信:新今宮のホテルについて、長年労働者の街というイメージがあったと思うが、そこにOMOを建てるということで、西成の地域を、いろんなお店とかを巻き込んでいきながら地域のイメージを変えていきたいという狙いがあるのか、もしその場合は地元の人の理解をどのように得ていこうと考えているのか。
星野:私たちが地域を変えていきたいという思いよりも、大阪市さんの期待だったと思います。
あの土地で開発者を公募した時に、私たちの提案のひとつはホテルが採算が合うだけでなくて、来てる人だけではなく見る人、プラットホームから、また電車で通行する人たちからも真っ正面に見える土地なので、私たちはその土地を見る側の人たちにホテルが背を向けてはいけないと思っている。
なのでそういう人に「なんかでっかい建物が建ったなぁ」ではなく「なんかちょっと楽しそうなことやってるな」と思っていただくためのデザインをしている。
今までは滞在している人にとってどういう空間がいいだろうとホテルは考えてきたが、今回は初めて電車の中から見ている人にとって楽しく見えるホテルにするにはどうしたらいいかを真剣に考えてきた。
なので単に「新しいものができましたね」「大きな建物が建ちましたね」だけではない、綺麗に見える、楽しそうに見える、ウェルカムして頂けるメッセージを出せるようなデザインをしているつもり。
もちろん地域が良くなっていくだけの力がこのひとつの土地にあるわけではない。私たちはあくまでもしっかりホテルを維持することが大事な仕事だと思っている。
そのためには周りの方々とうまく連携して協力して、地域を変えようとは決して思っていなくて、地域に今ある魅力を掘り起こして発信して、表現していく。
西成再開発の目玉として発表された星野リゾートの都市型ホテルですが、宿泊客のみならず、見る人からのイメージを極めて重視したコンセプトは「大阪市の期待」によって形作られたことが明らかにされました。
また、西成再開発ではこれまでの労働者の街が壊されるといった危惧の声も労働者側から上がっていますが、星野リゾート側はこうした街を変えようとは決して思っていないことを明言しています。
これまで西成、あいりん地区として日雇い労働者らが集まり、長く大阪でも独特の位置づけを保ってきたこのエリア。漫画「じゃりン子チエ」でこの場所を知ったという人もいるのではないでしょうか。
新世界と並んで全国的な知名度を持つこの西成は「星野リゾート OMO7 大阪新今宮」のまさに目の前に広がっており、徒歩圏内の「大阪で最もディープな街」のひとつであることは説明するまでもありません。
そんな西成も近年は海外からのバックパッカーたちが闊歩する安宿街としての性格も持つようになっています。それに伴い、バックパッカーをターゲットとした飲食店やゲストハウスなども次々とオープンし、クラフトビールを造るブリュワリーなども登場しています。
日雇い労働者らの高齢化が進み、この街の空気が大きく変化していく中での決定打ともなりそうな都市型ホテル建設。星野リゾート側が変えようと思うと思わざるとに関わらず、今後の変化の潮目のひとつとなりそうです。
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