ペーパーカンパニー疑惑のベネッセ子会社「学力評価研究機構」、あまりに不透明な実体が明らかに



大学入学共通テストの記述式問題の採点を落札した「学力評価研究機構」。50万人の受験生の命運を握る会社にしては、あまりにも不透明な実体が明らかになっています。詳細は以下から。


◆大学入学共通テストの崩壊とベネッセの深過ぎる繋がり
英語民間試験に加えて記述式問題も見送りが決まり、二本柱が崩壊して事実上頓挫した大学入試改革の大学入学共通テスト。

この大学入試改革に深く関わっていると繰り返し指摘されているのが教育ビジネス大手のベネッセコーポレーションです。文科省の英語民間試験の有識者会議に取締役らが名を連ねるほどに深く関わっていましたが、それだけには留まりません。

英語民間試験は約50万人とされる受験生が2回まで受験できるシステム(高2までの「予行練習」を除く)だったため、最低でものべ100万人がこれらの英語民間試験を受験することになり、数百億円規模の市場が誕生するはずでした。


結局は英語民間試験自体が導入見送りとはなりましたが、この英語民間試験のひとつであるGTECを主催しているのがベネッセコーポレーションというわけです。

加えて、数学と国語の記述式問題の採点は一般競争入札によにより61億6000万円で落札され、ベネッセコーポレーションの子会社とされた「学力評価研究機構」に委託されることが決定していました。

問題はベネッセが高校向けに配布した資料に、大学入学共通テストに向けた記述式の採点基準の作成などで助言事業を請け負っている旨の記載があり、模擬試験や対策講座などのほかの営業活動に利用した疑いがあるとのこと。

萩生田文科相は「学校現場に対して、このような資料を配布することは、記述式問題の採点業務の中立性、信頼性に疑念を招く」と認め文科省として厳重に抗議。これが響いて記述式問題も採用が白紙に戻っています。

結局大学入学共通テストはベネッセが制度設計に深く関わり、ベネッセが模擬試験を行い、ベネッセがGTECという英語民間試験を実施し、ベネッセが採点基準を作成し、ベネッセが記述式問題を採点し、ベネッセが対策講座や問題集を販売する構図だったことになります。

◆「学力評価研究機構」はペーパーカンパニー?
そんなベネッセの子会社「学力評価研究機構」にペーパーカンパニー疑惑が発生しています。

国民民主党の山井和則議員は同僚議員らと「学力評価研究機構」の本社住所を訪問。しかし「学力評価研究機構」の看板は見当たらず、なぜか親会社のベネッセの役員が対応し、「学力機構の所在地や社員数、電話番号は言えない」と回答したことをツイートしています。



これを受けて山井議員は「学力評価研究機構」がペーパーカンパニーではないかという疑問を呈しています。

「学力評価研究機構」について調べてみると、まず法人登録されたのが2017年5月22日。61億6000万円で大学入学共通テストの記述式問題を採点するには何とも頼りない実績で、これだけでもベネッセとひと続きと考えるしかなさそうです。

また所在地は山井議員が記したように「東京都新宿区西新宿2丁目1番1号」の新宿三井ビルディングですが、これはベネッセコーポレーションの「東京本部 新宿オフィス」の所在地と同一住所。ちなみにベネッセは「新宿三井ビルディング 15F(受付)」と表記していますが、「学力評価研究機構」は階数だけでなくビル名の記載もありません。

親会社と同じ住所で看板もなし。対応は親会社の役員で「所在地や社員数、電話番号は言えない」というこれ以上ない塩対応。いったいどういうことなのでしょうか。

ここで注目されるのが「学力評価研究機構」の代表取締役社長を勤める服部奈美子氏。彼女はベネッセコーポレーション商品企画開発本部の本部長を務める人物でもあります。

魚拓

『VIEW21』高校版 2019年度 8月号【特集】Society 5.0-高校教育のこれから-」の「国際シンポジウム「教育を科学する─エビデンスやデータで考える、2030年の教育の姿─」開催」では登壇して実践報告をしている様子も。


萩生田文科相はこの件で「利益相反との誤解を受けないような仕組みづくりが必要だ」と答弁。ベネッセ側は「兼務を解消し、機構は完全に、他の教育事業系グループ会社から独立して事業を遂行する体制を整備中だ」としており、本件を詳報した日刊ゲンダイによると12月1日付けで兼務を解消しています。

なお、日刊ゲンダイも「学力評価研究機構」への取材を試みていますが、山井議員と同じようにビル内で社名のパネルを発見できず、電話取材も対応はベネッセに回されています。

その中でも社員数や構成、所在地なども全て秘匿されており、実体の有無については確認できず、ペーパーカンパニーと疑われても仕方のない状態になっています。

ただし実際には模擬試験の採点アルバイトの募集などもしているため字義通りの完全なペーパーカンパニーとは呼べなそうですが、気になるのは「新宿採点会場」の電話番号で、こちらをGoogle検索すると「ベネッセコーポレーション 新宿」と出てくること。

例え完全なペーパーカンパニーでなかったとしてもさすがにこれではベネッセから独立した別会社とは言えず、大学入学共通テストの公正さが担保されるといわれても到底納得できない状況になっています。

受験生らがとんでもない大学入試を受けさせられる直近の危険は去りましたが、ベネッセがどのような形でこの大学入試改革に絡んできていたのか、しっかり全容を解明する必要があります。

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