【コラム】「風邪でも絶対に休めない」日本社会が新型コロナウイルスを蔓延させている



水際作戦の失敗を受け、「風邪ごときで休むなんて社会人失格だ」という日本社会を覆う「空気」が新型コロナウイルスの蔓延に拍車をかけています。詳細は以下から。


◆政府の水際作戦が失敗し、次の段階に移った新型コロナウイルス対策
日本政府の新型コロナウイルス対策のすべてが後手後手に回り、水際での封じ込め作戦が失敗したことはすでに全日本人が認めざるを得ないところとなりました。

現時点でも中国人は湖北省と浙江省からの渡航者以外は入国可能な状態が続いており、クルーズ船をめぐる感染対策のずさんさも海外メディアから第2の震源地を作ったと批判されています。


こうした状況から日本を汚染国としてミクロネシア連邦は日本からの直接入国を制限。その後サモアツバルも同様に入国制限を開始しました。

そして感染経路の分からない患者が日本各地で発見されるなど、新型コロナウイルスをめぐる事態は完全に次の段階に移ってしまいました。すでに国籍は関係なく、どこの誰が感染しているか分からない市中感染という状況です。

◆市中感染をブーストする「風邪でも絶対に休めない」文化
この市中感染を強力に後押しするのが、エスエス製薬の風邪薬のCMのキャッチフレーズ「風邪でも絶対に休めないあなたへ」が象徴する日本社会の文化です。


このCMに限らず、日本の風邪薬のCMの多くは「どれだけつらい風邪を引いたとしても、この風邪薬を飲めば休まずに働き続けられる」という発想で制作されています。

それはもちろん日本企業の「社会人ともあろうものが風邪ごときで仕事を休むなんてありえない」という文化の要請を受けたもの。時代錯誤の根性論だとの指摘はあるものの、この文化は2020年でも根深く息づいています。

この文化の問題点は、風邪を引いてもおかまいなしに働かされるブラック労働的な意味合いと共に、職場や通勤時にウイルスや細菌をまき散らし、自らが感染源となるところにあります。

毎年の風邪やインフルエンザの流行は当たり前になりすぎたためか、こうした観点からの批判はあまり見られません。ですが新型コロナウイルスの市中感染からは、この文化は極めて大きな負の影響を及ぼしていることが分かります。

◆現在の市中感染のケースを見てみましょう
現在起こっている市中感染者の感染が判明するまでの動向を見てみます。なお、いずれの患者も発症前の時期には中国への渡航歴はありません。

・NTTデータ勤務20代男性
東京都港区のNTTデータオフィスに電車通勤をしていた千葉県在住の20代男性が新型コロナウイルスに感染したことが2月14日に判明。14名の濃厚接触者がおり、全員が在宅勤務を指示されています。

問題はこの男性が13日に感染が確認されて千葉県内の感染症指定病院に入院するまでの動向です。

男性は2月2日に37度台の熱が出て、県内の3ヶ所の医療機関を受診したが改善せず、10日に4ヶ所目の医療機関で肺炎と診断されて入院しました。ですが、それまで2月4日と7日には電車で通勤しています。

千葉県の新型コロナウイルス関連ページでは本症例を詳報しており、「2月3日:発熱継続(38℃台)」「2月7日:発熱継続(38℃台)。咳出現」という記載が見られます。

つまりこの男性は38度台の発熱があり、7日にはせきも出ていたのに千葉~東京間を電車通勤していたことになります。

・済生会有田病院勤務50代男性外科医
和歌山県湯浅町の済生会有田病院に勤務していた50代の男性外科医が新型コロナウイルスに感染したことが2月13日に判明。同時に一時入院していた70代の男性にも感染が確認されたほか、新たに同僚の男性医師(50代)とその妻(50代)、入院している患者(60代)にも感染しており、院内感染が認められました。

この男性医師は1月末時点で発熱や全身の倦怠感が1月末に出ていました。2月1~2日は休みだったものの微熱が続き、3~5日は解熱剤を服用しながら勤務。5日には腹痛や下痢の症状も見られていました。

7日には抗生剤を服用していましたが8日には再び熱が上昇。CTによる検査で肺炎のような症状も確認され、せきやたんも出ていたため10日に医療機関に入院して治療を受けた結果、11日からは解熱傾向に。13日夕に環境衛生研究センターで新型コロナウイルスの陽性が判明しました。

加えてこの医師は大阪府泉南市の済生会新泉南病院にも週1回、非常勤で勤務していたことが判明。ただし、大阪府は勤務日や勤務時間を明らかにしていません。

・都内勤務40代男性会社員
都内在住で都内勤務の40代会社員男性が新型コロナウイルスに感染したことが2月15日に判明。2月2日にせきの症状が出て、5日には発熱したため医療機関を受診。

その後10日に別の医療機関を受診し、新幹線で愛知県内に出張していましたが、症状が改善しなかったため12日にさらに別の医療機関を受診、肺炎で入院しました。

現在は重症で気管挿管の治療を受けています。東海道新幹線の車内や出張先の愛知県内で濃厚接触が起こった可能性は否定できませんが、治療に伴い十分な聞き取り調査はできてないとのこと。

◆「風邪でも絶対に休めない」社会が日本を第2の震源地に
お分かりいただけたでしょうか。ニュースになっている市中感染者の多くは発熱やせきなどの症状が出た後も勤務し続けていたことが分かります。

すでに新型コロナウイルスのニュースは報じられていたこともあり、いずれの患者も医療機関で検査を受けていましたが感染は判明せず、単なる風邪として無理を押して出勤していた様子がうかがえます。

現在の日本国内での新型コロナウイルスの蔓延の原因が、日本政府の水際作戦の失敗にあることは改めて指摘するまでもありません。

ですが、一度国内に入ってしまった新型コロナウイルスを感染拡大させている大きな原因が「風邪でも絶対に休めない」日本社会の構造であることも間違いありません。


テレワークを嫌い、フレックス導入にも消極的で、毎日朝夕の同じ時間帯に殺人的な通勤ラッシュの中を出退勤する日本社会のあり方そのものが「スーパースプレッダー」を生み出していると言うことも可能でしょう。

◆私たち日本人はどうすればいいのか?
こうした状況下で私たち日本人ができることは何でしょうか?それは少しでも「風邪かな?」と思ったら即座に会社を休むことです。単なる風邪であれば万々歳。新型コロナウイルスに感染していても、自分が感染源にならずにすみます。

上記の例を見ても分かるように、複数の医療機関で検査しても陽性と判明するまでに時間がかかる場合もあり、たとえ陰性であろうと感染の可能性は否定できません。

つまり、「感染確定してから休む」では遅すぎだということ。それでは判明までに同僚や家族、大勢の通勤客らを感染リスクに晒してしまうことを肝に銘じる必要があります。

またテレワークで仕事ができる人は出勤を控えること、フレックスを使える人は通勤ラッシュを避けての出退勤を行うことなど、個人でできる新型コロナウイルス対策はまだまだあります。

このまま今までの働き方の習慣を繰り返して新型コロナウイルスをパンデミックさせるのか、働き方を変えて感染を可能な限り封じ込めるのか、日本人にとって大きな分かれ道となります。

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