全額の意味は「全ての額面」のはずですが、なぜか上限が設定されています。詳細は以下から。
◆保護者への休業手当が発表
厚生労働省は3月2日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う小学校などの臨時休校を受け、保護者が仕事を休んだ時の賃金について、日額最大8330円を上限に企業に助成する制度を創設すると発表しました。
この制度は大企業、中小企業とも共通で、対象は正社員に限らず非正規労働者も対象となりますが、2月27日~3月31日の間に取得した休暇に限られます。
◆適用には「特別な有給休暇の支給」が条件
ただし適用されるのは、企業が「年次有給休暇とは別に、賃金を全額支給する有給休暇を取得させた場合」に限るため、企業側がこうした特別な有給休暇を取得させる必要があります。
例えば企業側があくまで年次有給休暇を使うように指示したり、自己都合の欠勤扱いとされれば適用とならないことになります。
折からの人手不足に加え、休みを取る保護者が増えて仕事が回らないような場合、立場の弱い労働者にしわ寄せがくる可能性は否定できません。
加えて、この制度が対象とするのは正規及び非正規の「従業員」のみ。自営業者やフリーランスで仕事をする個人事業主の保護者らへの休業補償はありません。
◆対象は「小学校等」に通う子供の保護者のみ
加えて、対象となる保護者は、新型コロナで臨時休校した小学校等に通う子供の保護者。
「小学校等」とは小学校、義務教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園等を指し、中高生の保護者は対象外となります。
また臨時休校となっていなくても、新型コロナに感染したおそれのある小学校等に通う子供の保護者も対象ですが、このケースでも中高生の保護者は対象から外れています。
◆全額のはずがなぜか日額8330円の上限あり
不思議なのは読売新聞、日経新聞、産経新聞、時事通信などがこの制度を「日額最大8330円を上限に全額を企業に助成する制度」として、タイトルでも「全額助成」「全額保障」の言葉を用いて報じていること。
日経新聞は「財源に雇用保険を使うため、失業給付(基本手当)の日額上限とそろえた」としていますが、それならそうと書けばいいもの。なお朝日新聞は記事タイトルを「保護者休業の助成金、上限は1日8330円」と報じています。
なお厚労省の資料では「支給額:休暇中に支払った賃金相当額 × 10/10」となっており、全額という表現はされていません。
◆臨時休校のしわ寄せを受ける人への支援は?
ネット上では、このように保護者が休むことに伴い、少人数で仕事を回さなければならなくなる労働者へのサポートへの言及が相次いでいます。
また医療関係や学童・保育園などを中心に、新型コロナ対策や休校対策に伴って普段より忙しく休めない人へのサポートも必要だという指摘も。
加えて給食業者や給食のために食材を卸していた会社など、全国一律の臨時休校要請の波紋は決して子供たちの保護者だけに留まるものではありません。
このように、休校要請に伴っては極めて広範なサポートが必要となりますが、この要請は安倍首相の独断で行ったもので、文科省も専門家会議もあずかり知らぬところで決められています。
3月2日の国会でも「直接、専門家の意見を伺ったものではない。判断に時間をかけるいとまがない中において、私の責任において判断させていただいた」と答弁しているように、緻密な根回しや段取りとは無縁の要請のため、きめ細かいサポートが可能かには大きな疑問符がつきそうです。
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