SNSでフェイクニュースに繰り返し接していると、心理的抵抗感が薄れて思わず拡散してしまうと判明



2016年にトランプ大統領が当選した米大統領選挙の時に登場した「フェイクニュース」という言葉。今も世界各地で乱れ飛んでいることはご存じのとおり。

自分ではそんなフェイクニュースを見分けているつもりでも、実は日々晒され続けているだけでその状況に「慣らされて」しまうことが分かりました。実はかなり危険な話です。詳細は以下から。


◆フェイクニュースは繰り返されると抵抗感が薄まる
ロンドンビジネススクールのniel A. Effron組織行動学準教授はフェイクニュースとの戦いにおいて人々がそれを信じるかどうかではなく、いかにして道義的に拡散すべきと判断するようになるかを考えるべきだと指摘します。

Effron教授はのべ2587人の被験者を対象に4つの実験を行いました。実験ではフェイクニュースへの人々の反応と態度を4つの異なった見地から試しました。

実験では同じフェイクニュースのタイトルを繰り返し見ていくことで、どのように被験者の倫理的な評価が変化していくか、そして被験者がそのフェイクニュースにいいね!してシェアしようとするのかをテスト。

結果的に、同じフェイクニュース記事にSNS上で繰り返し遭遇するうちにシェアを行う心理的障壁は下がっていきました。4つの実験のうち3つで、被験者は事前にはっきりとフェイクだと教えられていたにも関わらず、いいね!やシェアを行う率が上昇していました。

Effron教授はこの理由を、同じ記事を繰り返し目にすることによって、その内容をより飲み込みやすくなることで説明できるとしています。


勉強でも予習復習することで理解度が増すように、繰り返し触れる情報というのはより流暢に見え、理解しやすくなります。またこれまでの研究でも、流暢で分かりやすい情報は「より真実らしい」と受け取られるという結果が出ています。

つまり繰り返しフェイクニュース記事にSNS上で触れることにより、人はその記事を分かりやすく、そして真実らしいと受け取ってしまい、その結果いいね!やシェアをしてしまうということになります。

◆繰り返されることではびこるフェイクニュースは多い
このように繰り返されることで一定の支持者を得てしまうフェイクニュースは少なくありません。NASAは月面着陸をしていない」「地球は平面であるといった半ばオカルト化したネタは科学的に否定されても信者が存在します。

また日本でも田布施システムのようなユダヤ陰謀論にコリアンへのヘイトを絡めたような話が存在していますし、安倍首相の流した菅直人首相が福島第一原発への海水注入をストップさせたというデマを現在も信じている人もいます。少し前ではスマイリーキクチ中傷被害事件もそのひとつと言えるでしょう。


昔から「嘘も100回言えば真実になる」といわれますが(これがナチスドイツのゲッペルスの言葉とされているのも実はフェイクです)、ネット上で繰り返しデマだと判明しているフェイクニュースを流し続けることには十分な効果があることが分かります。

また以前BUZZAP!で指摘したように、フェイクニュースの重要な目的のひとつは全員にフェイクを信じ込ませるのではなく、社会をそのフェイクを信じる人と信じない人に分断することにあります。

つまり、荒唐無稽であっても同じフェイクニュースをネット上に継続的に流し続けることには十分な効果があり、きわめて危険ということになります。

新型コロナウイルスについての不確かな情報が乱れ飛ぶ2020年のエイプリルフールだからこそ、フェイクニュースへの接し方をもう一度見直してみてもよいかもしれません。

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