「警察に突き飛ばされた抗議デモの老人はアンティファ工作員で、警察無線を妨害しようとしていた」トランプ大統領の陰謀論が個人攻撃に



アンティファが黒人差別に抗議するデモが暴徒化した黒幕だとの陰謀論から、さらに致命的な一歩を踏み込んでしまっています。詳細は以下から。


◆トランプ大統領の陰謀論が一線を越える
トランプ大統領が黒人差別抗議デモに参加し、警官に突き飛ばされて大けがをした75歳の男性Martin Guginoが「アンティファの工作員」ではないかとツイートして物議を醸しています。

トランプ大統領はMartin Guginoさんが「警察無線をスキャンして機器をブラックアウトさせようとしているように見える」とツイート。



Martin Guginoさんが警官隊に突き飛ばされて倒れ、耳から血を流す衝撃的な動画はツイッター上で8200万回閲覧されています(編集部注:生々しい流血が映っているため閲覧注意)。



トランプ大統領は、スマホのようなガジェットを手にしていることからか「無線を狙っていたのか」と疑って見せた他、「倒れ方が大げさだ」「やらせか?」などとも発言。ですが、根拠と呼べるような根拠はなにひとつ示していません。

Guginoさんの代理人である弁護士のKelly Zarconeさんによると、Guginoさんは命に別状はなく安定しているものの、重傷であり現在も入院中とのこと。

警官隊が怪我をさせた市民を工作員認定するという、トランプ大統領の「アンティファ黒幕説」が一線を越えて個人攻撃へと発展してしまっていることは指摘しておく必要があります。

◆トランプ大統領の「アンティファ黒幕説」とは?
トランプ大統領は6月1日にネオナチやファシズム、白人至上主義者、差別主義などに反対する人々を指すアンティファ(Anti-Fascist Action:反ファシズム運動)をテロ組織に指定するつもりだとツイッター上で指摘。



ですが、その後米ツイッター社はアンティファを名乗るアカウントがネオナチの白人至上主義組織であるIdentity Evropaによるなりすましであるとして、規約違反で凍結。


加えてFBIもアンティファが5月31日の暴動を扇動したことを示す証拠は存在しないことを明らかにしました。

さらにミネアポリスでの暴動で起こった略奪に市外から訪れた白人至上主義組織が関与していたことをミネソタ州当局が指摘するなど、今回の黒人差別に対する全米での抗議への「アンティファ黒幕説」は片っ端から否定されています。

そうした中で、警察という国家機関が怪我を負わせた個人を大統領が無根拠に攻撃するという、極めて危険な状況になっています。今後もトランプ大統領はこのまま陰謀論に基づいたフェイクニュースをまき散らし続けることになるのでしょうか。

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