画期的な判決が出ましたが、実際にこうした刑事罰に至るにはかなり高いハードルを越える必要があることも示される形となりました。詳細は以下から。
◆低評価の「やらせレビュー」に刑事罰
通販サイト大手のAmazonが扱う商品のレビュー欄に「星1つ」を付けさせ、わざと悪い内容を書かせたことに対して異例の刑事罰が科せられたことを朝日新聞が報じています。
福岡簡裁は「やらせレビュー」によって競合他社の信用を傷つけたとし、信用毀損罪で男性会社役員に対し、罰金20万円の略式命令を出しました。
略式命令などによると、この25歳の男性役員は福岡市内で健康食品・器具の通販会社を経営。
仕事仲介サイトを経由し、商品レビュー係の募集に応じた福岡県内の40代女性に500円を支払い、福岡市の別の健康食品販売会社がAmazonで扱うサプリメントに低評価をつけさせる「やらせレビュー」で信用を傷つけたとしています。
この女性は商品を使ったことがないにもかかわらず「一粒が大きくて飲みにくかった」などと貶めて最低評価の「星1つ」を付けました。
◆ただし訴訟には高いハードルも
この「やらせレビュー」が発覚したのは、これを含めて1週間で2商品に9件ほど低評価のレビューが続いたため。
これを不審に思った販売元の社長が投稿者名を検索したところ、やらせレビューの請負を含む仕事仲介サイトの登録者だったことが判明しました。
この社長は女性と依頼主の男性役員を苦労の末特定し、2018年5月に福岡県警に被害届を提出。県警は2019年9月に福岡地検に信用毀損容疑で男性役員と女性を書類送検しました。
これを受けて2020年4月に福岡区検が男性を同罪で略式起訴し、福岡簡裁が略式命令を出しました。女性は地検が「諸般の事情を考慮した」と不起訴処分にしています。
経緯を見ると、まず被害者である社長が自ら不審に思って投稿者名を検索し、仕事仲介サイトの登録者であることを突き止めています。
これは女性が投稿者名を安易に使いまわしていたという脇の甘さがあったからこその発覚と言えるもので、巧妙に偽装していた場合には分からなかった可能性も十分にあります。
その後、朝日新聞はこの社長が実行者らを「苦労の末特定」したと報じていますが、警察などの捜査ではなく自ら動いて(探偵などを使ったとしても)割り出していることが分かります。
そして、ここまでしてようやく刑事罰を与えたものの「罰金20万円」であり、会社名が公開されるわけでもありません。
訴訟に至るハードルが極めて高い上に、勝っても元が取れるわけでもないことが分かります。つまり多くの場合、損得を考えれば泣き寝入りするしかないということ。
実際には商品がダメダメで低評価が付くケースもあるため、どこまでが意図的な「やらせレビュー」かの判定も難しく、今回の刑事罰はやはり異例の判決と言わざるを得ないようです。
実際に現物を見ずに購入する通販では、購入者による商品レビューは非常に役に立つもの。なんとか不正を排除できるようになってもらいたいものですが…。
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