私たちが日々使う道路の舗装に用いられるアスファルト。実はこのアスファルトが自動車以上の大気汚染を引き起こす可能性があることが指摘されています。詳細は以下から。
新たにジャーナル「Science Advances」に報告された研究によると、アスファルトに含まれた有害な汚染物質が放出されており、その量は天候や温度などの条件によって大きく変化し、自動車による大気汚染を超える場合もあります。
私たちが大気汚染の話を聞く際によく耳にするのがPM2.5と呼ばれる微粒子。PM2.5は大きさが2.5マイクロメートル(0.0025mm)の多種多様な微粒子群で、主に自動車や工場の排気ガス、焼き畑や森林伐採に伴う煤煙といった燃料の燃焼によって生じます。
そうした発生源のひとつが道路や屋根などに用いられるアスファルトで、都市部などでは極めて大量に用いられているため、大気汚染の主原因として考える必要があると研究者らは指摘します。
研究では高解像度の質量分析法を用い、異なる条件でアスファルトからPM2.5の成分となる揮発性有機化合物(VOC)や準揮発性有機化合物(SVOC)の排出量を調査。
その結果、アスファルト敷設時の140度では60度の時に比べて桁違いのVOCやSVOCが排出されていることが判明。同時に太陽光線に晒されることで温度が変わらなくとも排出量が300倍にもなりました。
研究ではこの結果とSouthern California Air Basinというエリアでの排出量を照らし合わせ、自動車による汚染物質の排出量と比較。
報告では「全体としてみれば、このエリアで年間のアスファルトから生じる大気汚染は自動車のガソリンやディーゼルのものよりも多い」と指摘しています。当然ながら暑く、晴れた夏では特にこの傾向は強化されます。
日本でも気候変動により今年は異例の猛暑となりました。こうした環境下ではアスファルトからの汚染物質の排出は増加する一方となり、大都市圏では特に深刻になることが分かります。
自動車の排気ガスに関しては環境を意識した改善が進められていますが、道路の敷設に関しては大きな環境問題としては意識されていません。
もちろんこれは老朽化した道路のメンテナンスなどでも生じるため、私たちが自動車を使い続ける限り避けては通れない問題ということになります。
今後も気候変動が収まる見込みは示されておらず、アスファルトに代わる新たな素材の開発と普及が必要となるかもしれません。
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