どれだけ最悪のケースを想定しても、必ずその少し斜め上を行く人が現れてしまうようです。詳細は以下から。
古くはシャーマンたちが儀礼に使い、60年代にはヒッピームーブメントでのサイケデリック体験のための道具立てとして重宝され、その後パーティドラッグとして用いられたマジックマッシュルーム。
近年は既存の抗うつ剤「SSRI」特有の副作用なしでうつ病を寛解させる効果が研究で明らかにされ、すでに「鼻スプレー」という形で製品化されるまでに至っています。
ですが、この世にはいつでもどこにでもとんでもないことをしでかす人が存在しているのです。
ジャーナル「Journal of the Academy of Consultation-Liaison Psychiatry」に報告された事例によると、その人物「ミスターX(編集部注:匿名性を保つための仮名です、もちろん)」はオピオイド依存症とうつ病を自己治療しようとしていた30歳の男性です。
最初に医師らがこの患者に出会ったのは、錯乱状態のミスターXを心配した家族が救急外来に彼を運び込んだ時でした。
家族はミスターXが最近、激しい躁状態とうつ状態がある双極I型障害の処方薬を飲むのを最近止めてしまい、 それ以降鬱状態と躁状態の間を行き来していると報告しました。
この期間中にミスターXは、シリコンバレーでトレンドとなっているLSDやマジックマッシュルームの有効成分のひとつシロシビンの微量摂取の効果の調査を開始していたのです。
上記のように、確かにマジックマッシュルームのうつ病に対する効果は数々の研究で示されていますが、それらはすべて医師の管理下での経口摂取によるもの。
ですが男性はマジックマッシュルームを煮出し(編集部注:シロシビンは水溶性)た「お茶」を作り、それを飲むのではなく静脈注射してしまったのです。
当然ながらミスターXは数々の体調不良に見舞われます。家族によると、注射の数日後からミスターXは黄疸、吐き気、下痢、極端な錯乱、吐血といった危険な症状が発生したとのこと。
実際のところミスターXの腎臓や肺を含む内臓は大きなダメージを負っており、急性肝不全も起こしていました。心拍数は上がり、敗血症性ショックも見られるなど、いかなる意味でも緊急を要する重篤な症状だったため、ミスターXは直ちにICU(集中治療室)送りとなりました。
その際、最も内蔵に深刻なダメージを与えている血栓の調査が必要となりましたが、ミスターXの血液から採取した血栓の培養物から、医師らは「注射されたマジックマッシュルームが血液の中で育っていた」ことを発見しました。
報告書では、ミスターXの激しい錯乱が血液内のマジックマッシュルームを原因とするものかは不明としつつ、それ以外の身体的な症状は間違いなくこれに由来するものとのこと。
さらに報告書では「ドラッグの摂取方法を間違えると致命的な事態に陥る」ことを広く啓蒙すべきだと指摘しているとのこと。用法用量を守ることの大切さをミスターXは身をもって教えてくれたと言うこともできそうです。
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