今回のタイムズカーシェアの料金体系の大幅改定はレンタカーというシステムを激しく揺るがし、自動車所有への感覚も大きく変化させる最初の一歩になる可能性があります。詳細は以下から。
◆カーシェアの「長時間料金」が大幅値下げに
カーシェアリング最大手のひとつであるタイムズモビリティが2月25日、長時間利用の大幅値下げとなる料金体系の改定を発表しました。
これは2021年4月1日にサービス名を「タイムズカーシェア」から「タイムズカー」へ変更するタイミングに合わせて実施するもの。
改定では6時間超となる長時間の利用料金が平均28%の大幅値下げとなり、ベーシッククラスでは12時間で税込み6490円だったところが990円引きの5500円に。72時間では20240円だったところが5940円引きの14300円と、長時間になるほどよりお得になります。
なお、6時間超の利用では走行距離に応じた距離料金が発生しますが、対人・対物・車両・人身傷害の補償料は利用料金に最初から含まれています。
◆長時間利用メインのレンタカー市場を直撃
これまでカーシェアは、スマホ予約ですぐに近くのステーションから乗れる手軽さを武器に、数十分~数時間の「ちょい乗り」をメインの用途として広がってきました。
その分長時間の利用ではレンタカーよりも割高となっていましたが、今回の長時間帯での大幅値下げはレンタカーが使われてきたシーンでの利用を強く想定したものとなります。
例として、じゃらんnetでレンタカー検索をしてみると、新宿駅周辺から24時間レンタルすると有料オプションの免責補償制度を入れた最安値はタイムセールの特別プランで6105円。
これがタイムズカーでは24時間では通常料金で6600円+距離料金となり、場所や時間の利便性を考えれば十分に戦える価格となっています。
実際にタイムズモビリティはレンタカーサービス、「タイムズカーレンタル」も運営していますが、これらの店舗は徐々にカーシェアステーションに取って代わられているのが現状。
レンタカーは発着場所が店舗に限定され、出発や帰着時間も店舗の営業時間に制限を受けますが、カーシェアステーションであれば対応する人員が要りません。このためユーザーは好きな時間帯にスマホひとつで予約し、誰にも会わず近場で借りて返せるようになり、どちらにとっても合理的です。
トラック等の特殊な車両や空港での外国人向けレンタルなどは別枠ですが、レジャーやちょい乗り用の乗用車では、整備されたカーシェア網とシステムは間違いなくレンタカーの上位互換と呼べるもの。
競合他社がどこまでレンタカーのみの営業でやっていけるのかを考えると、このマーケットの今後は決して楽観できるものではありません。
◆自動車所有の「代替策」としての伸びしろ
また、わざわざレンタカーの店舗まで赴くという手間が省けて手ごろな値段で使えれば、通勤などで日常的に自動車を用いない都市部住民にとっては自動車所有の代替策としてより手軽で現実的なものとなります。
タイムズカーシェアは基本利用料金880円で同額の無料利用料金(繰り越し不可)が付いているため、自動車ローンに自動車保険、自動車税、駐車場代といった維持費を考えれば自動車所有よりも格段に安く上がることはこれまでも指摘されてきました。
自動車必須の地方社会ではあくまで補助的な存在であり続けることにはなりますが、都市部を中心に今後さらにカジュアルに自動車に乗るための手段として存在感を増してくることになります。
もちろんこれには現代日本の貧困化も絡んでおり、世帯年収の中央値がピーク時よりも200万円ちかく下がって360万円となり、自動車購入や維持費用負担が厳しい層も明らかに増えています。
そうした層にとってはカーシェアは非常に便利で安価な「足」となり、不況がこのまま続けば需要はさらに高まることになります。
現在すでに約153万人が会員となっていることをタイムズモビリティが明かしていますが、今後どこまでこの数字が膨らんでゆくことになるでしょうか。
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