メキシコが世界で3番目の「嗜好用大麻合法化国」となるに至った深刻で複雑な理由



1億2000万人の人口を誇るメキシコがレクリエーション目的の大麻を合法化します。その裏には違法薬物を扱うマフィアに絡む深刻で複雑な事情がありました。詳細は以下から。


◆メキシコの嗜好用大麻合法化で世界最大の市場が出現
メキシコで3月10日、レクリエーション目的の大麻合法化が決定しました。メキシコ連邦議会下院はこの日大麻規制法の制定を賛成316票、反対129票で賛成多数で可決しました。

今後上院で可決され、大統領の承認を得て正式決定となりますが、大統領と与党が合法化を先導している状況のため成立は確実と見られています。

合法化によって18歳以上の個人は28グラムまでの大麻所持が認められ自宅で6株までの栽培も可能となります。


また企業による大麻の栽培や小売販売は商業ライセンスによって別途許可されるとのことで、今後これらのライセンスも整備されていくことになり、実際の認可は2022年になる模様。

メキシコは1億2700万人の人口を持つため、世界最大の大麻市場が生まれることになります。アメリカ合衆国は南北を大麻合法化国に挟まれることになるため、連邦レベルでの合法化に拍車がかかるとの見方も。

その結果中南米でも地滑り的に大麻合法化が進展する可能性があり、そうなれば今後大麻事情が世界的に大きく様変わりすることになります。

◆大麻合法化に至る違法薬物とマフィアの深刻な問題
メキシコでは医療大麻は既に合法化されていましたが、レクリエーション目的の大麻の合法化は単にその延長線上とだけは言えない事情があります。

それが違法薬物を取り仕切り、軍にも深く入り込んで治安に多大な影響を与えるマフィアの存在です。

メキシコでは約200のマフィアが活動しています。同国では2006年以降に推定27万人が殺害されていますが、その多くはマフィア絡みという状況。


ネット上でそうしたマフィアの残忍な殺害画像や動画を見てしまった経験のある人もいるのではないでしょうか。

合法化では大麻の生産と流通の「表」のルートを作り上げ、これらを牛耳っているマフィアの関与を減らし、競争で価格を下落させてブラックマーケットを縮小させる目的があるとされています。

ただし近年はマフィアの資金源として大麻の占める割合が減っており、コカインや合成ドラッグに移っているため効果が薄いとの見方もあります。

一方で、大麻合法化によりマフィアがこれまでの実績を武器にフロント企業を立てて合法市場に参入する可能性もあります。これをやるとマフィアがいわゆる「きれいな金」を手にすることになります。

もちろんメキシコ政府は合法大麻で税収を得られる他、合法企業を運営するマフィアは少なからず非合法活動を抑えることになるため、治安の向上も見込めて一挙両得ということにも。

つまり、今回の合法化はマフィアの弱体化を謳いながらも完全に敵視するのではなく、抱き込んだ上でのある種の「ロンダリング」的な性質を併せ持つ可能性も考えた方がよさそうです。

今回のメキシコのレクリエーション目的の大麻合法化は、同国のマフィアという特殊事情を考えれば合法化支持者であってももろ手を挙げて喜べるとは言い難いもの。

どこまでクリーンな合法化となるかを判断するにはもうしばらく時間が掛かりそうです。

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