政府が高齢者のデジタル社会への参入に大規模事業を立ち上げることになりました。
詐欺対策やセキュリティなどの問題をどこまで対応してもらえるかが大きなカギになります。詳細は以下から。
◆5年で高齢者1000万人にデジタル講習、国が事業化へ
総務省が5月18日、デジタル弱者になりがちな高齢者らにスマホやマイナンバーカードの使い方を教える「デジタル活用支援員」の事業構想を公表しました。
この事業は毎年度全国の5000ヶ所で講習会を開き、5年間でのべ1000万人の高齢者の参加を促し、デジタル化に取り残される高齢者を減らしていくというもの。
講習会では携帯販売代理店や公民館に講師役が出向き、スマホ操作やマイナンバーカードを使った行政手続きを指南します。
具体的にはスマホの電源の入れ方に始まり、電話やカメラ、メールにネット、SNSの使い方から、マイナンバーカードの申請や「マイナポータル」利用方法など11テーマで構成されます。
加えて総務省はQRコード決済「JPQR」を使った決済の実体験なども盛り込むとしており、高齢者をオンライン経済にも積極的に参入させたい考え。
講習会の委託先は携帯代理店や自治体、商工会議所などを想定し、講師役には会場の携帯代理店従業員や学生、社会活動をしている人などが着任する方針です。
また講師の質のばらつきを抑えるために研修プログラムや統一的な教材も用意するとしています。
総務省はこの事業のために、2020年度第3次補正予算に9.3億円を計上しており、国が事業費の全額を補助して今年6月から事業を始めることになっています。
今年度は全国1800ヶ所で9万回の講座を開き40万人の参加を目指すとしていますが、来年度以降は3倍近い5000ヶ所に増やした上で5年間で計1000万人にする計画とのこと。
当然ですが22年度以降にこの事業を続けるために新たに予算要求が必要となり、規模の倍増とともに予算額が膨らむことが予想されます。
◆もちろん懸念も
まず気になるのが、現在でも少なからぬ被害の出ているオンライン詐欺の横行です。講座テーマには詐欺対策や、情報セキュリティ対策、ネットリテラシーは今のところ見られません。
高齢者がこうした対策を身につけずにネットの海にこぎ出せば、詐欺やハッキングの格好の餌食となる可能性は否定できません。
また多くの高齢者が加害者になってしまった弁護士大量懲戒請求事件のような事件が再び引き起こされる可能性もあります。
加えて20年度に計上された予算が9.3億円で来年度以降は事業規模が3倍以上になるため、5年間の総額が50億円を上回るのは間違いなさそうなところ。
事業が国の全額補助であることから、接触確認アプリCOCOAのような中抜き、再委託の温床になる危険もネットではすでに指摘されているほか、はんこ議連などの経緯から「まず政治家が受けてみては」という意見も。
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