あの「盛り塩」の起源、京都発祥の「立砂(盛砂)」はどこから来たのか


ユネスコの世界遺産にも登録された京都の上賀茂神社。訪れるとひときわ目立つのはふたつの円錐状の「立砂」です。

厄払いの「盛り塩」の起源とされるこの立砂、実は京都の他の神社にも存在しています。いったいどのような由来があるのでしょうか。

下鴨神社から賀茂川を遡ったところに鎮座する上賀茂神社。平安京以前から存在するこの由緒正しい神社には、砂を円錐状に盛った「立砂」があります。


鳥居をくぐるとまず目に飛び込んでくるのが左右2つの立砂。ゆがみのないシャープなフォルムで、本殿の背後にある神山を模したものとされています。


この白い砂の様子からはいわゆる枯山水庭園を連想してしまいますが、実はより古く、まったく違った由来があります。


立砂は実際には神社の社殿ができるよりも古い時代に神の依り代とされたもの。その時代にはひとつだったものが、社殿が作られるようになってから左右にひとつずつの形となったとのこと。

この間を通ることで身が清められるとされており、これは現在行われている「盛り塩」の役割に通じるものです。

かつてこの立砂には白川砂が使われていました。白川砂は白川という東山から左京区に流れ込む川の名前に由来しており、比叡山や大文字山を含む京都市の東部に分布する御影石が風化した白く美しい砂。この一帯の縄文時代の遺跡からも使われていた形跡が見つかっています。

白川砂は後には銀閣寺や竜安寺の枯山水などの庭園に使われ、元となる白川石も京都の建造物や灯籠や手水鉢などに多く用いられてきました。

鎌倉時代には三大名石のひとつに数えられるなど、その品質と美しさから京都の歴史を通じて大きな役割を担ってきた存在です。

川の上流から流れつくものに神性が見出されることは神話ではままあり、古来美しさが愛でられてきた白く輝く白川砂が神の依り代に選ばれても不思議ではありません。

たとえば上賀茂神社の祭神の賀茂別雷命は、玉依日売が賀茂川上流から流れてきた丹塗矢を床に置いたところ懐妊したという生誕エピソードを持っています。

現在は原材料の枯渇や環境保全、治水を理由とした京都市条例により白川砂の採取はできなくなっており、立砂にも使われていません。

こうした立砂のある神社は他にもあるのか探してみると、やはり京都の東北部に集中して見られました。Buzzap!取材班で訪れてみました。

まずこちらは宮本武蔵ゆかりの八大神社。一乗寺下り松の決闘のエピソードで有名です。


この神社は紅葉で有名な左京区の詩仙堂の隣にあり、まさに東山の中腹です。


小さいながら、確かに社殿の前の左右に砂が盛られています。こちらの神社では立砂ではなく「盛砂」と呼びならわされているとのことでした。



そこからほど近い、修学院の鷺森神社です。叡山電鉄修学院駅から徒歩で東山に向かって15分程度で、静かな住宅街の中に長い参道のある立派な神社です。


とはいえ訪れる人は少なくとても静か。


こちらは社殿への階段の前の左右に小さく砂が盛られています。


正面から見るとこのような感じです。



またこちらは都七福神のひとつ、松ヶ崎大黒天の隣にある白雲稲荷神社です。


背後の山は五山送り火の「妙法」が灯される北山です。



こちらも社殿の左右に砂が盛られているのが見えますが、手前に柵があり参拝者は通常入ることができません。



そしてこちらは岩倉の実相院門跡のすぐ北側にある石座神社。



こちらも社殿の左右に砂が盛られています。




971年に石座神社は現在地に勧請されて移っていますが、もともとの鎮座地にある山住神社は現在でも社殿を持たず、磐座を「神の降臨する場」として崇めています。




また以前Buzzap!取材班が訪れた、白川流域にある山そのものが御神体である大山祇神社にも盛砂が存在しています。


祀られているのは瓜生山の主神とされる地龍大明神で、由緒は平安遷都前、山城国に最初に移り住んだ人々の頃にまで遡るとされています。


社の右手奥に盛砂が行われています。社殿ではなく山に対して盛砂されているのは取材班が見た中ではここだけです。


いずれも共通しているのは京都の東北部にあり白川砂が身近な事。そして背後に山があるか、山の中腹に建てられている神社ということ。

山を神として、山からやってきた美しい白い砂を盛って依り代として祈りを捧げる。立砂は、そんな平安京よりも遥か昔から存在してきた自然への畏敬の念がその原点なのかもしれません。

それが神道に取り入れられる中でも廃れることなく、今も盛り塩というお清めとして残っていることを考えると、その歴史の長さと、保ち続けてきた日本人の精神性に驚かされます。

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