これまで一度ツイートしたらそのまま残すか削除する(ツイ消し)するしかなった短文投稿サイトTwitter。
イーロン・マスク氏の取締役就任により投稿内容を後から「編集」できる機能が追加されることになりそうですが、これまで以上にフェイクニュースや詐欺行為の温床となる可能性があります。詳細は以下から。
◆イーロン・マスクの取締役就任と編集機能の試験導入
米Twitter社は4月5日、テスラ社のテクノキング、イーロン・マスク氏が前日にツイッターの株式9.2%を取得して筆頭株主となったことを受け、同氏を取締役に指名しました。
この日、マスク氏は「編集ボタンほしい?」とアンケート形式でツイート。
Do you want an edit button?
— Elon Musk (@elonmusk) April 5, 2022
おそらくは「はい」を表す「yse」が73.6%、「いいえ」を表していそうな「on」が26.4%とほぼトリプルスコアで編集ボタンの導入が求められています。
その直後、Twitter社は数か月以内に投稿内容を後から変更できる編集機能の試験的導入を発表しました。
対象はアメリカやカナダ、オーストラリアなどで展開する有料サービスの会員に限定し、課題を洗い出すとしています。
◆編集機能導入で起こるヤバいこと
当然ながらすでにTwitterへの編集機能導入で起こりうる事態について指摘されています。
たとえばTwitter共同創業者で元CEOのジャック・ドーシー氏は、ある人が「いいね」や「リツイート」したツイートが編集して真逆の意味に変わった場合、あずかり知らない意見に賛同したことにされてしまうと指摘しています。
政治家などの公人や著名人がいいねやリツイートしたツイートが編集されて誹謗中傷やヘイトスピーチに変えられた場合、少なからずその人の信用を傷つけることになります。
また数千から数万のいいねやリツイートを得て「バズった」ツイートが編集されて根も葉もないデマや陰謀論に書き換えられれば、そのトンデモな情報に偽のお墨付きを与えることになってしまいます。
もちろん変更後にフィッシングサイトや詐欺的な広告へのリンクが張られていれば、個人情報漏洩などの明確な実害が発生します。
Meta(旧Facebook)のアンドリュー・ボスワース最高技術責任者(CTO)はこの問題に対し、Facebookの導入した解決方法を示し「変更履歴を表示すればいい」としています。
確かに変更履歴を見れば、元のツイートに何が書かれていたか分かります。ですがそんなことでは事態はなんら解決しません。
◆変更履歴があっても解決できないヤバいこと
大きな問題は「変更履歴があったからといって人はそれをわざわざチェックしない」ことです。
明確な事実として、多くのTwitterユーザーはリンク先をチェックせずにいいねやリツイートします。
新型コロナやワクチン関連のリンクがあるツイートをリツイートする際に「まず記事を読んでみませんか?」と表示される場合があるように、目の前の140字以上の情報を読んでもらえると考える時点で間違いなのです。
つまり、おかしな内容のツイートがバズっていたとしても、ほとんどの人は変更履歴など確認せず、バズっているから支持されているのだと思い込み、場合によっては再拡散します。
またTwitterで近年よく見られるのが「他人のツイートの画像を貼り付けてコメントするツイート」です。
Twitterには140字の文字制限があり、ひとつのツイートしか引用リツイートできない仕様のため、画像にすることでより多くの情報を盛り込めるというある種のテクニックです。
問題は、画像貼り付けによって提示されるツイートはその場で変更履歴を参照できません。
当のツイートでも変更履歴を見ない人が多いのに、画像貼り付けのツイートをわざわざ検索して探し当て、変更履歴をチェックする人はさらに少数派となります。
もちろん「差別的な投稿に公人や著名人がいいねした画像」を敢えて貶める目的で拡散するケースも考えられます。そしてこの場合、いいねした日時も分からなければ、いいねしたのが変更前か変更後かも確定できないことになります。
フェイクニュースについて以前論じた際にも述べましたが、こうした情報の真偽についてはたとえ真実が判明したとしてもフェイクが消え去ることはありません。そしてフェイクニュースの目的は読む人全員を騙すことではなく、信じる人と信じない人に社会を分断することです。
Twitterの投稿が編集できることで、フェイクニュース拡散に都合のよい状況が整備されることになるのは間違いなく、また詐欺やハッキングのためのツールとも十分なり得えます。
ツイートのちょっとした誤字脱字を修正したい気持ちは誰にでもありますが、その為に失うものは計り知れない大きさにふくれ上がる可能性があることをTwitterユーザーは忘れてはならないでしょう。
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