「一億総株主」と「金融所得課税強化」のコンボで、資産所得倍増プランがヤバいことに



岸田首相が5月に打ち出した資産所得倍増プランですが、いろいろときな臭いことになっています。

金融所得課税強化によって、せっかくの資産所得倍増プランに冷や水が浴びせられるという話は5月中旬時点で出されていました。

そして5月30日に自民党が「一億総株主」の目標を掲げた提言を申し入れたことで、全体としてなかなか怖い話となっています。

どこがどう危険なのか見ていってみましょう。

「一億総株主」と「金融所得課税強化」のコンボ


資産所得倍増プランにおける一億総株主と金融所得課税強化についてまずは解説します。

資産所得倍増プランとは


資産所得倍増プランは、岸田文雄首相が2022年5月5日にロンドンでの講演の中で打ち出された「貯蓄から投資」を目指すプランです。

岸田首相は、日本では諸外国に比べて家計の金融資産に占める現預金の比率が高く、約2千兆円のうち半分ほどであることに触れて「眠り続けてきた1千兆円単位の預貯金をたたき起こす」と力説しました。

松野官房長官はこのプランについて、NISA(少額投資非課税制度)の拡充などで国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設を検討していくものであると説明しています。

一億総株主とは


「一億総株主」は、「貯蓄から投資」を目指す資産所得倍増プランを促進するため、自民党が政府に行った提言の目標です。

提言では、資産所得の向上を図り、消費を拡大させるには、国民一人ひとりが「一億総株主」として成長の果実を享受できることが重要だとしています。

具体的には松野官房長官と同様に、NISAの抜本的な拡充などを求めており、「つみたてNISA」の年間40万円の非課税枠の拡充が想定されています。

金融所得課税強化とは


金融所得課税強化は、岸田首相が格差是正策として総裁選の公約に掲げたもの。

2021年12月10日に決定した2022年度の与党税制改正大綱で、高所得者層は金融所得の割合が高く「所得税負担率が低下する傾向が見られる」とし、「課税の在り方について検討する必要がある」と盛り込みました。

加藤勝信前官房長官は、金融所得課税の強化について「年収1億円など高所得者への課税が不公平だという認識の中での議論だ」とした上で「一般の投資家に影響を与えてはならない」との認識を示しています。

ただしこの公約は株価下落や市場の批判によって一時的に撤回されていますが、将来的な実施については否定していません。

「一億総株主」と「金融所得課税強化」のもたらすもの


これらを合わせて見てみると、岸田政権は1億人を超える日本国民の1千兆円規模の貯蓄を投資に回させる方針であり、投資によって得た所得への課税を強化しようとしていることが分かります。

そして「一億総株主」の提言は、自民党が岸田政権のこのプランを全面的にバックアップする姿勢であることを示しているといえるでしょう。

これにより何がもたらされるのでしょうか。

「貯蓄から投資」はギャンブルのススメ


「貯蓄から投資」が国民の消費の拡大を目差しているということは、政府が国民の資産の増加を市場に委ねることを意味します。

当然ながら、投資は利益が出ることもあれば損失が出ることもあります。

要するに、貯蓄と違い多かれ少なかれギャンブル性があるのが投資なのです。

格差はより拡大することに


すべての株主が総じて利益を得ることはありませんので、少なからぬ日本国民は貯蓄していた財産を減らすことになります。

そうした中、より多くの情報やリソースを持つ富裕層や大企業ほど、より金融資産を増やす機会に恵まれることになります。

つまり、より多くの日本国民が個人として金融市場に参入することにより、より格差は拡大される可能性が高いことになります。

小さく産んで大きく育てる


「つみたてNISA」の非課税枠が拡充されるなら、個人にはそこまで影響はないのでは?と思う人もいるかもしれません。

ですが、この非課税枠が拡充されたままである保証はどこにもありません。

最初は妥当な数字で法案を通し、後にその数字を変更する「小さく産んで大きく育てる」方式は自民党政権のお家芸とも呼べるものです。

要するに、NISA関連の非課税枠が拡充されて投資しやすい環境が整えられたとしても、その環境は多くの人が金融市場に参入した後も維持されるとは言えないのです。

同様に「年収1億円」以上の人の金融所得に対する課税強化だったはずの者が、年収要件が引き下げられる可能性もいくらでもあるのです。

金融資産の運用は税金に注視を


今現在もNISAやiDeCoへの強烈なプッシュは各方面で続いています。

こうした方針を政府が強力に推し進めれば、勧められるままに貯蓄を投資に変えていく層は高齢者を中心に増えてゆくでしょう。

気がつけば個人の貯蓄だったものが金融市場に流れ、場合によっては損をし、得をすれば重い税金を課されるという「前門の虎後門の狼」状態になる危険性もあるのです。

賃金がなかなか上がらない中で、金融資産の活用は多くの人が考えている運用方法です。

だからこそ、そこに掛かる税金の問題はしっかり意識しておく必要があるでしょう。
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