減税するわけでもない「軽減税率」の財源確保という意味不明な話がひとり歩きを始めています。詳細は以下から。
2017年4月に訪れる消費税10%への増税。公明党が主体となって軽減税率の導入を進めていますが、議論は迷走の度合いを深めつつあります。
軽減税率をどの範囲にまで適用するか、そしてどのように運用するかについては今年の9月に財務省が「マイナンバーを活用して上限4000円」というトンデモ案が与党からも袋叩きにされたことを皮切りに、「子どものいる低所得者世帯への給付を削減すること」や医療、介護、保育などの自己負担総額に上限を設けて低所得者を支援する「総合合算制度」の見送りなど、国民、特に低所得者に負担を強いる案ばかりが検討されてきました。
可能な限り適用範囲を広げて公約実現の実績を作りたい公明党と、歳出を抑制したい自民党の間で綱引きが繰り広げられてきましたが、自民党側が折れた形で「外食」にまで広げ、「酒類を除く飲食料品」とすることで現在調整が行われています。
これが1兆3000億円規模になることから、声高に叫ばれているのがどこからその「財源」を引っ張ってくるのかという話なのですが、実に意味が分かりません。なぜなら軽減税率の適用される「酒類を除く飲食料品」は1円たりとも減税されることはなく、単に現在の消費税8%に据え置かれるだけであるからです。
つまりは「酒類を除く飲食料品」以外は消費税が10%に上り、増税された2%分が新たな税収となりますが、「酒類を除く飲食料品」についてはこれまで通りの税金が取られるため、どこにも税収が今よりも減る余地が無いのです。増税に伴う買い控えというのであればそれは必ず起こることで、軽減税率の有無は関係ないか、むしろ買い控えを抑制する方向に働くはずのもの。
そもそも消費税は2014年の5%から8%への増税により、2013年度の10.8兆円から2014年度では16兆円へと5.2兆円も税収が増加しています。極めて単純に計算すれば、8%から10%に増税した場合は3.5兆円ほどの税収増が見込まれるはず。かりに軽減税率を導入して1.3兆円分が減ったとしても、消費税の税収全体で見れば2.2兆円税収増の18.2兆円になるはずです。
麻生財務大臣は軽便税率の「財源」について「いきなり数千億円以上の金が出てくるはずはない。来年まで時間をかけて検討するのが実態だ」などと発言していますが、増税された初年度である2014年度にも既に消費税だけで5兆円以上の税収増となっており、2017年も「酒類を除く飲食料品」は税率据え置き、それ以外は増税となるのですから消費税にのみ関して言えば下振れする要素がなく、最悪でも予定していた社会保障政策の延期に留まるはずのもの。
たばこ税や外国為替資金特別会計からの繰り入れなど、何を財源に当てるかという議論が活発になっていますが、いったい何を議論しているのでしょうか?
さらに言うのであれば、独裁国家トルクメニスタンへの2.2兆円の経済協力の際にはどこからも財源の話などは出てきませんでしたが、こうした違いはどこから生まれるのか、まったくもって意味不明です。
軽減税率に外為特会活用せず、麻生財務相「範ちゅう外」 Reuters
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