やはりLGBTへの謝罪はなし、新潮社が「新潮45」を休刊させてほとぼり冷ましへ



何としても謝罪は行わないという強い意志を感じさせます。詳細は以下から。


◆新潮社が「新潮45」を休刊へ
自民党の杉田水脈衆院議員がLGBTのカップルは「生産性がない」などと新潮社の「新潮45」に寄稿して国際的な問題となりました。その後に同誌で擁護企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」と題した特集が掲載され、自称保守界隈の論者が想像を絶する寄稿を行い、新潮社全体を巻き込む大問題となりました。

これに対して新潮社は9月21日、佐藤隆信代表取締役社長の名前でコメントを発表しましたが、差別にあったLGBTへの謝罪や説明もなければ差別表現の掲載に至った経緯の検証も行われず、「新潮45」に対する処分も発表されなかったことから、炎上にさらなるガソリンを注ぎ込む結果となりました。

そして9月25日に新潮社は「新潮45」の「休刊」を発表しました。全文(魚拓)を以下のとおり引用します。

「新潮45」休刊のお知らせ

 弊社発行の「新潮45」は1985年の創刊以来、手記、日記、伝記などのノンフィクションや多様なオピニオンを掲載する総合月刊誌として、言論活動を続けてまいりました。
 しかしここ数年、部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことは否めません。その結果、「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」(9月21日の社長声明)を掲載してしまいました。このような事態を招いたことについてお詫び致します。
 会社として十分な編集体制を整備しないまま「新潮45」の刊行を続けてきたことに対して、深い反省の思いを込めて、このたび休刊を決断しました。
 これまでご支援・ご協力いただいた読者や関係者の方々には感謝の気持ちと、申し訳ないという思いしかありません。
 今後は社内の編集体制をいま一度見直し、信頼に値する出版活動をしていく所存です。

2018年9月25日
株式会社 新潮社

「新潮45」休刊のお知らせ_ News Headlines _ 新潮社より引用)


◆部数低迷と「愛国ビジネス」
まずBUZZAP!が以前指摘したように、一連のLGBTへの差別記事の掲載の発端には「部数低迷に直面」というビジネスとしての問題があったことが明らかにされています。

その対策として「試行錯誤」が行われ、2018年1月号にはケント・ギルバートが登場し、2月号からは自称保守界隈の論者が勢揃いする事となりました。「【特集】「反安倍」病につける薬」「【特集】「朝日新聞」という病」といった特集が乱発されることになります。

新潮社は「編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかに」なったとしています。しかし一連のLGBTへの差別記事、特に小川榮太郎の寄稿文は「十分な原稿チェックがおろそかに」なっていたくらいで間違えて出版してしまうような文章ではありません。

部数低迷が確固たる事実である以上、新潮社が保守を自称するタイプの人々をマーケットとしたいわゆる「愛国ビジネス」へと舵を切り、より過激でウケのいい特集を模索した中で一線を越えてしまったと考えるのが妥当ではないでしょうか。

◆今回もLGBTへの謝罪はなし
今回の「『新潮45』休刊のお知らせ」では「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」を掲載した事について「このような事態を招いたことについてお詫び致します」と謝罪があります。

また「これまでご支援・ご協力いただいた読者や関係者の方々には感謝の気持ちと、申し訳ないという思いしかありません」という謝罪と取れる表現があります。

しかし前者は「新潮45」で極めて不適切な表現を行ったという自らの行為、及びそれに伴う一連の騒動に対しての謝罪でしかありません。加えて言うのであれば、その「表現」が誰の文章のどの部分がどういった偏見と認識不足に満ちているのかという具体的な指摘もなければやはり対策も述べられていません。

そして後者は一連の騒動と休刊することについて「読者や関係者の方々」に対して謝罪しているに過ぎません。

結局、杉田水脈や小川榮太郎の寄稿文で行われたLGBT差別について、前回に続いて当事者への謝罪は行われていませんし、一言もLGBTについて直接触れることすらしていません。

◆これは「ほとぼり冷まし」に過ぎない
もちろん日本有数の出版社である新潮社が会社名義で行った公式発表ですから、たまたま担当者の文章力が足りなくて触れ忘れたということは絶対にあり得ず、LGBTへの謝罪の欠如は意図的に行われたものと言わざるを得ません。

つまり新潮社は、自社の雑誌「新潮45」で複数回にわたって行われたLGBT差別記事について当事者への謝罪を拒否した上に「廃刊」ではなく「休刊」で済ませ、編集長の処分や今回差別記事を寄稿した寄稿者らへの対応についてもなんら明言しなかったのです。

これで済ませようというのであれば、問題の発端となった寄稿文以降炎上が収まるのをじっと息を潜めて待っている杉田水脈とまったく変わりありません。誰かに「あの手口学んだらどうかね」とでも勧められたのでしょうか?

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