在NY日本総領事館、慰安婦問題の相談窓口を杉田水脈と繋がる極右団体「ひまわりJAPAN」に業務委託してしまう



慰安婦像を巡る「歴史戦」ががっちり外務省にまで食い込んでいることが分かります。詳細は以下から。


◆慰安婦像を巡る「歴史戦」という愚行
今年9月には台湾の慰安婦像に極右団体幹事が蹴りを入れる事件が起こり、10月頭には大阪市が慰安婦像の市有化を理由に大阪市の吉村市長がサンフランシスコ市との60年以上に渡る姉妹都市関係を解消しました。


BUZZAP!では、自称保守界隈による従軍慰安婦像への狼藉がこれまでも繰り返されてきたことを報じていますが、慰安婦像を巡った「歴史戦」は最近始まったような話ではありません。




上記のサンフランシスコ市の慰安婦像の市有化に関しては、同市の委員会を訪れた極右団体代表が歴史修正主義全開の演説を行った上に、証言台に立った元慰安婦に対して「嘘吐き」で「単なる売春婦」と個人攻撃を行ったことが大きなターニングポイントとなっています。

この際委員会のカンポス委員はこの攻撃に対して「恥を知れ」と批判、大きな拍手が湧き起こりました。その後に行われた市有化撤回の大阪市の申し入れは全て拒絶されて現在に至っています。




◆「慰安婦像のせいで日本人にいじめ」というデマ
こうした動きの一環として慰安婦像設置で嫌がらせ受けた朝日新聞を在米日本人と自称保守界隈が提訴するという訴訟(一審で請求棄却、控訴するも一審支持で棄却、上告せず)がありましたが、その中でまことしやかに「慰安婦像を設置したために日本人子女がいじめにあった」というデマが用いられました。

同様の訴訟は朝日新聞への訴訟と共に慰安婦像を設置したカリフォルニア州グレンデール市へに対しても行われましたが、訴状にはそうしたいじめの訴えが訴状に書かれることはなく、実際の裁判でも肝心のいじめの事例を何も立証できませんでした。

本件に関し、インターセックス・イニシアティヴ代表の小山エミさんはグレンデール市教育委員会とグレンデール市警察の慰安婦像に絡む日系人へのヘイトクライムの報告が存在していなかったとする報告をツイートしています。


◆「ひまわりJAPAN」と杉田水脈、自称保守界隈
こうした経緯にも関わらず、2016年に「歴史問題によりいじめを受けた日本人の子供たちをサポートするため」に在米日本人女性らによって設立された極右団体がひまわりJAPAN魚拓)です。

反LGBT発言とこの慰安婦問題を巡る「歴史戦」への関わりで大炎上している自民・杉田水脈議員はこの団体を「正しい日本の歴史と現在日本が置かれている様々な状況をお伝えし、日本人としてまた未来を生きる日本の子どもたちが誇りを持って生きられるようサポートする」ための団体として産経新聞の記事で紹介。


杉田水脈は「お話を伺う」だけでなく、「ひまわりJAPAN」の講演会このままでいいのか、日本!魚拓)で、日本会議役員で「親学」提唱者の高橋史朗と共に講演者として熱弁を振るっています。



杉田水脈の慰安婦像についての認識は、2018年8月5日の時点ですら日本のテレビが売れないのは技術力が落ちたからでなく慰安婦問題のせいなどと主張してしまうような、デマとしてもお粗末極まりない上に、何が何でも慰安婦問題に結びつけなくてはいられないというある種カルト的なもの。


このような人物を結成早々日本会議役員と共に講演会に呼んでしまう「ひまわりJAPAN」は残念ながら歴史修正主義を目指す極右団体と呼ぶしかありません。

◆「ひまわりJAPAN」に業務委託する外務省
そして問題は、外務省の在ニューヨーク日本国総領事館領事部がこの極右団体「ひまわりJAPAN」に「慰安婦問題に絡むいじめ問題」の相談窓口として2018年6月に業務委託したということ。

在ニューヨーク日本国総領事館は公式サイトの歴史問題に端を発する邦人の方の被害に関する御連絡・御相談について魚拓)というページで「いわゆる歴史問題を背景とした,いじめ,嫌がらせ,差別,暴言等の被害に遭われた方やそのような具体的な被害情報をお持ちの方」へのメッセージを発信。

その中で「当館からの委託により,民間団体においても以下のサイトにて相談窓口業務を開始しました」として「ひまわりJAPAN」の窓口ページへのリンクを掲載しています。


リンク先魚拓)でも「総領事館がひまわりJAPANと連携し、この窓口業務を開始しました」とあるように、外務省側が率先してこの連携を行っている様子が浮かび上がっています。


「ひまわりJAPAN」の公式サイトには「朝日新聞によって捏造された『慰安婦問題』」「中国、韓国系アメリカ人による『慰安婦プロパガンダ』」「明らかに日本人コミュニティーへの攻撃、人種差別、コミュニティーの分断を意図している」「中国韓国系アメリカ人による『歴史戦』『情報戦』が日本の子供たちを巻き込んで『偏向教育、嫌がらせ、いじめ』となって現れ、日本人社会の中でも問題となっております」などという、自称保守界隈によく見られる世界観に基づいた文言が散りばめられています。

外務省が「ひまわりJAPAN」と連携するということは、自称保守界隈の歴史修正主義に満ちた極右思想を問題視しないどころかむしろ共鳴していることを意味しており、いわゆる「歴史戦」が外務省にまでがっちりと食い込んでいることを示しています。

◆外務省の「やらかし」は今回だけではない
外務省が突然とんでもないことをやらかしてしまったように見えますが、実際には今回だけの話ではありません。2017年1月にはイギリスのシンクタンクThe Henry Jackson Society(HJS)がロンドンの在英日本大使館から月に10000ポンド(約140万円)を受け取り、反中プロパガンダキャンペーンを展開していたことを複数のイギリスメディアが伝えています。

ここでは在英日本大使館との金銭関係は2016年から始まり、英国の政治家やジャーナリストに中国の外交政策を批判させ、いわゆる「中国脅威論」を醸成させようとしてきたことが指摘されました。

また、2015年には在独フランクフルト総領事がドイツの保守系新聞「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」の東京特派員Carsten Germisさんが安倍政権の歴史修正主義について批判した記事を書いた際、Germisさんが所属する編集部に直接圧力を掛けたことも明らかにされています。

安倍政権を批判する報道には直接圧力を掛け、金を払ってメディアに反中プロパガンダのキャンペーンを張らせるといった行動を外務省は過去にも行っており、今回もたまたま極右団体と知らずに連携したとは考えられません。

◆日本政府とグレンデール市の慰安婦像裁判の繋がり
外務省の今回の連携がたまたまではないという大きな証拠となるのが、日本政府の上記グレンデール市の慰安婦像裁判への関わりです。

「慰安婦像を設置したために日本人子女がいじめにあった」というデマが吹聴されたにも関わらず、訴状にはその件がまったく記されなかった上に、裁判でもいじめの事例を立証できず、グレンデール市教育委員会とグレンデール市警察もこうした事例が1件も報告されていなかった件は既にお伝えしたとおり。

ですが、日本政府はこの裁判に対して異例の介入を行っています。裁判は地裁と高裁で原告側の訴えが退けられ、2017年1月に最高裁に上告を求める請願書が提出されたのですが、この請願が棄却されそうな情勢であった事から日本政府は同年2月に米連邦最高裁に対し「請求は認められるべきだ」との見解を表明した第三者意見書を外務省を通じて提出しました。


この意見書は相手にされず上告審の請願を棄却されて自称保守界隈の敗訴となりましたが、糸を辿れば日本政府そのものがこの「歴史戦」を国を使って全力でバックアップしているということになります。

もちろん杉田水脈を石破茂氏も知らないうちに「中国ブロックの実質比例第1位」に大抜擢して当選させ、「LGBTは生産性がなく支援不要」発言についても「若いから」という謎の理由で不処分としたのは安倍首相その人ですから、その親和性については改めて指摘するまでもありません。




こうした歴史修正主義が現代日本という国家の中枢で支持されている事はしっかり認識しておく必要があります。

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