字面から真逆の意味に勘違いする人もいるようですが、現役世代にとってはむしろ深刻な話と言えそうです。詳細は以下から。
◆在職老齢年金制度を廃止へ
政府・与党が一定以上の収入のある高齢者の厚生年金支給額を減らす「在職老齢年金制度」廃止の検討に入ったことを毎日新聞が報じています。
政府は人手不足などを背景に、高齢者の就労を支援する方針を打ち出してきていますが、「在職老齢年金」の制度によって厚生年金が減額され、高齢者の就労意欲をそいでいるとの指摘があるとされます。
これを受けて政府は高齢者の就労を後押しするには制度廃止が必要と判断、来年の通常国会に厚生年金保険法などの改正案の提出を目指すことになりました。
この話は制度のネーミングから、働く高齢者の年金を減額するという話のように勘違いしている人もいますが、実は真逆です。そして、それ故に深刻な問題でもあります。
◆在職老齢年金制度って何?
まず、在職老齢年金制度の対象となるのは60歳以上で就労し、一定以上の賃金を得ている厚生年金の受給者です。
60~64歳はボーナスを含んだ賃金と年金の合計額が月28万円、65歳以上は月47万円を超えると年金支給額が減らされる仕組みで、賃金が増えるほど減額幅が大きくなります。
厚生労働省によると、在職老齢年金の対象者は2016年度末時点で60~64歳が約88万人、65歳以上が約36万人となっており、この制度のおかげで年約1兆1000億円の年金支出が抑制されてきました。
厚生年金の支給開始年齢は65歳へと段階的に引き上げられているため、約7000億円の年金支出が抑制されている60代前半に関しては制度自体が消滅することになりますが、問題は65歳以上。これを廃止すると約4000億円の財源が必要となります。
◆在職老齢年金の廃止で何が起こるのか?
この在職老齢年金制度には、少子化が進み、少ない人数で高齢者を支えなければならない現役世代の負担を軽減する意味合いもありました。
つまり制度が廃止されれば、4000億円分の負担が若い世代にのしかかってくることになります。また今後もさらに少子高齢化が進めば、負担の割合は否応なく増えてゆくことになります。
また65歳以上で年金支給額が減らされるのは、賃金と年金の合計額が月47万円を超える人となります。つまり「下流老人」と呼ばれるような、年金だけでは生活できない貧困層の高齢者には何ら恩恵がありません。
まとめると、月収47万円超という現役世代から見ても高所得な高齢者が、現役世代のさらなる負担の上で、年金を満額受給できてこれまでよりも悠々と暮らせるようになるという事になります。
置き去りにされる貧困層の高齢者とさらなる負担を強いられる現役世代は何を思えばいいのでしょうか?
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