「学校からのコロナ感染拡大は少ない」は本当なのか、英国調査では子どもが家庭内感染の最大のトリガーに



萩生田光一文部科学相が1月5日の記者会見で緊急事態宣言が発令されても小中高校や大学の一斉休校を要請しないことを表明。同時に大学入学共通テストを予定通りの1月16日と17日に実施することも正式表明しました。

文科省は感染する子どもが比較的少なく、重症化する割合も小さいとして、学校を通じて感染が拡大する可能性は低いと判断したとしていますが、子どもを中心としたクラスターの存在は本当に問題視する必要がないのでしょうか。詳細は以下から。


◆学校・保育園クラスターは実際に発生している
現実問題として、学校や保育園での10人以上のクラスターは少なからず発生しています。

今年に入ってからの記事でも東京都葛飾区の保育園で15人鹿児島県の保育園で13人京都市の保育園で11人東京都立高校で45人群馬県の小学校で10人青森県立高校で51人宮崎県立高校4校合同の部活動で22人などが報じられています。


これらはクラスターと認識されているため大きく報じられていますが、もちろん学校や保育園での感染はこれらがすべてではありません。地方紙などの報道を見ていれば、連日未成年者の感染が確認されていることが分かります。実際のデータで見ても、年代別の人口10万人あたり感染者数では、10代は60代、70代よりも多く、40代、50代の2/3程度となっています。

チャートで見る日本の感染状況 新型コロナウイルス:日本経済新聞より引用)

確かにこれらの未成年の感染者らの多くは無症状や軽症とされていますが、決して感染していないわけではありません。ここが非常に大きなポイントとなります。

◆家庭内感染という現状で最大の感染経路
平成27年(2015年)の国勢調査を見てみると、15歳未満で親と同居している割合は99%を超え、15~19歳でも9割前後となっています。つまり、保育園児はもちろん小中高校生らもほとんどが家族と共に暮らしていることになります。


また都内では新型コロナ第3波の来襲によって家庭内感染が全体の42.8%を占め(11月~12月17日の統計)、最大の感染経路となっています。

東京 新型コロナ “家庭内感染”増加 今回は第2波の約2倍 _ 新型コロナウイルス _ NHKニュースより引用)

これは自身が外出していなくても、仕事や学校などで外に出ている家庭のメンバーが持ち帰って感染したもの。また医療がひっ迫して感染者の自宅療養が増えたことで、感染防止の対策が十分に機能せずに感染するとケースも増加していることが伺えます。

というわけで、例え無症状や軽症だったとしても子どもだから特別感染しにくいという話ではなく、ほとんどの場合は知らないまま家族のいる家庭にウイルスを持ち込むことになってしまいます。


新型コロナが無症状でも感染することは今更言うまでもありませんし、無症状ならば家庭内で徹底した感染防止策が取られるわけでもありません。もちろんそのような防止策を家庭内で子どもに連日連夜要求することは事実上不可能です。

◆「子供が最も家庭にウイルスを持ち込んでいる」という最新の英国調査
イギリス政府が12月17日に公開したChildren’s Task and Finish Group: update to 4th Nov 2020 paper on children, schools and transmissionとする最新の調査では、子供の学校と世帯での感染について詳しく調べられています。


それによると、2歳から16歳の子供たちが世帯にウイルスを持ち込む確率は17歳以上よりも高く、この傾向は10月14日付の調査時から一貫しているとのこと。ただし、こうした子供が世帯内で感染させられる確率は低いとしています。


こうした子供たちは世帯内で最初の感染者となる確率が17歳以上よりも高く、その中でも12歳から16歳の子ども達は17歳以上の7倍の確率で世帯最初の感染者となっています。

また2歳から16歳の子どもたちが最初の感染者となった場合、17歳以上の2倍以上の確率で家庭内感染を引き起こしていることも明らかにされています。

もちろん国が違えば学校制度を含め子どもを取り巻く環境は違いますし、イギリスには変異種の問題もあるため、完全にそのまま日本に当てはめることはできません。

ですが感染する子どもが少ないという状況は昨今崩れ始めており、また発症者や重症者こそ少なかったとしても、無症状のまま家庭内感染の原因となる可能性は十分あり、「学校を通じて感染が拡大する可能性は低い」と楽観視するのは危険ということになります。


これまでで最も新型コロナの感染が拡大しており、受験シーズンでもある現在、学校という環境をしっかりコントロールしなければさらなる感染拡大が起こる可能性は十分にあると言えるでしょう。

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