中高生専用SNS「ゴルスタ」がとんでもないことになっています。詳細は以下から。
◆「ゴルスタ」っていったい何?
本日ツイッターのトレンドのトップに躍り出てた「ゴルスタ」。大人にはあまり聞き覚えのない単語かもしれません。理由はこのゴルスタは中高生専用SNSアプリであり、大人の使用を固く禁じているため。
内容として公式サイトに記されているのは友達とチャット、ゴルキャスと呼ばれる動画の生配信、自撮りでのピクチャーコンテスト、ユーザーへの匿名での相談、そしていかにも中高生向けらしい動画授業の閲覧など。
これだけなら単なる中高生に特化したSNSに過ぎず、数あるアプリの中で(テレビCMを打っているとはいえ)現在のように話題になることはなかったでしょう。ゴルスタを現在大炎上させている問題は、まるで旧ソ連かカルトかというレベルの半ば脅迫がかった強烈な洗脳と監視・罰則体制、そして過剰なまでの個人情報の収集です。
◆中高生以外が登録すると即刻通報、24時間365日監視と他ユーザーによる密告システム
まず、ゴルスタに登録しようとすると現れるのがこちらの画面。中高生限定なのでそれ以外のユーザーの登録を遠慮願うというのは理解できますが、ネットでの本人確認は簡単なことではありません。
なりすましが紛れ込んだ際の対策としてゴルスタが提示しているのが
・24時間365日体制の監視システム
・他ユーザーからの通報システム
・不審ユーザー自動検知システム
の3つ。この時点でどこの旧共産圏か「1984」かというとんでもないディストピアなのですが、中高生以外が発見された場合は強制退会はもちろん、警察当局に即時に通報されます。この際住所、電話番号、居場所が全て特定されるということで、登録情報が全て警察当局に提供されることが明言されています。
ただし、「未成年への犯罪の疑いで逮捕されます」という文章は完全に意味不明。こうした罪状は日本には存在しませんし、その次の「未成年への犯罪は親告罪ではないので、犯行発見次第、逮捕・起訴されます」という部分は完全に間違いです。
親告罪かどうかは法律ごとに決まっており、未成年に対する犯罪が全て非親告罪ということはありません。また、逮捕・起訴となるかは警察なり検察がケースごとに判断するもので、ゴルスタが断定することはできません。
なりすまし対策とはいえ、高圧的なだけで極めて稚拙と言う他ありません。この部分については1週間ほど前からネットでは物議を醸していました。
なお、現時点ではこのようなトーンダウンした文章へと変更されています。
◆運営批判で垢BAN、復活には反省文提出と運営への忠誠が必須
実際にゴルスタを使用する中で、運営批判をすると速攻でアカウントを凍結されます。その際アカウント名のニックネームを違反理由に変更され、ゴルスタに戻りたい人は反省文を書いて提出し、運営にその反省が真摯であるものを認めてもらえると凍結を解除してもらえます。
ゴルスタで違反行為すると名前が違反行為の名前になるとか
— うーたん@ (@ktrenachi) 2016年8月25日
完全にゴルスタの闇だ・・・・
それにしても違反ー変態がジワジワ来る pic.twitter.com/zcBXp9fcXC
なお、凍結解除の時には「今後はゴルスタの円滑な運営に率先して協力をお願いします」として解除の見返りに運営への協力を求められます。これが上記の「他ユーザーからの通報システム」であることは容易に推測できます。このように批判を許さず、ゴルスタからの追放をちらつかせて忠誠を誓わせることで、紅衛兵ばりの通報システムはより強固なものへとなっていくことでしょう。
実際の凍結と解除のやりとりは以下のTogetterにもまとめられています。
中高生専用SNS「ゴルスタ」運営批判は威力業務妨害でBAN、復帰には協力姿勢と反省文という驚異の体制を見て震える人々 - Togetterまとめ
いかに運営批判への制裁が苛烈なものか、元ユーザーがツイートしていますが、高圧的な運営の姿勢は驚くばかり。これがツイッター公認アカウントがアプリユーザーに対する態度としてあり得ると考える神経は到底理解できるものではありません。
ゴルスタで私がしたこと、されたことをゴルスタをしているみんな、ゴルスタを始めようとしているみんなに知って欲しいです。#ゴルスタ #ゴルスタ運営 pic.twitter.com/b7zF12HX1u
— 🌈でこぽん🌈 (@dekoponn_56912) 2016年8月25日
◆親のクレジットカード含めた個人情報の過剰な収集
ゴルスタの異常性は運営の態度や反省文だけではありません。アプリのアクセス権限が極めて大きく、端末IDから連絡先、位置情報に画像ファイル、カメラ、マイク、Wi-Fi接続情報、通話情報、メアド、学年、性別、通学する学校などを収集されることになります。
噂のゴルスタのアプリ、軽く引くほど大量のアクセス権限持ってるからな。何があっても知らんぞ。 pic.twitter.com/kkprbPAP5e
— やまお (@yamaoDOHC) 2016年8月25日
それだけでなく、親のクレジットカードの情報まで抜かれてしまいます。これはあまりにも異常。
まってゴルスタやばくないですか??クレカ情報取られるんですか?? pic.twitter.com/tYxh5QX8UQ
— うぐいす (@uguisunemuinya) 2016年8月25日
現在はさすがにクレジットカード情報の記述は削除されていますが、一番下に「その他当社が定める入力フォームに利用者が入力する情報」とあり、クレジットカード情報を入力すればゴルスタに渡ると考えるしかありません。
そこまで大量に集めた個人情報ですが、運営会社のサービス関連の統計データ作成に加えて運営会社または第三者の広告配信や表示にも使用、さらには「その他マーケティング」という極めてざっくりとした目的にも使用されてしまうことが記されています。
ゴルスタがユーザーの中高生の詳細なデータをごっそりと取得し、なんらかのマーケティングに用いていることはプライバシーポリシーに明記されている以上、疑いようがありません。
◆信じがたい個人情報の曝露
ですが、ゴルスタの運営はそうして収集した情報をあっさりと漏洩します。元ユーザーが業務を妨害しているとして、未成年であるユーザーの本名をツイッターの公式アカウントで堂々と曝露。その上で刑事訴訟をちらつかせ、一連のツイートの最後には親や家族、学校などの関係者に迷惑が掛かると恫喝しています。
ゴルスタ運営、未成年の個人情報を流出してたのね(黒線部分)!
— たこやき (@takoyaki_aran) 2016年8月25日
特定のアカウントに対する嫌がらせ、迷惑行為で報告したよん😁 pic.twitter.com/h0rpNOWSaF
ユーザーの本名は使用する利用者情報には含まれていませんし、ツイッターでの不特定多数の第三者に向けての公表は使用目的に含まれていません。ゴルスタ運営はこの時点で自らのプライバシーポリシーに完全に違反していますし、個人情報保護法違反の疑いも濃厚です。加えてこうした個人情報の曝露行為はツイッターの利用ポリシーにも反しており、十分に通報対象となります。
実際のところ、まっとうな社会人の運営するまともな企業の姿勢とは信じがたい対応です。いったい誰がこのゴルスタを運営しているのでしょうか?
◆ゴルスタを運営する株式会社スプリックス
なんとこのゴルスタを運営しているのは決してどこの馬の骨とも知れないスタートアップ企業ではありませんでした。運営元の株式会社スプリックスはWikipediaの記載によると「個別指導塾「森塾」や「東京ダンスヴィレッジ」の運営、読書教育プログラム「グリムスクール」や中国語学習教材「HSK公認テキスト」、学習教材「フォレスタシリーズ」などの教材開発を手がける総合教育企業」であり、従業員数は1162名を数える大企業。
提携する企業はベネッセコーポレーション、パイオニア、NTTPC、上智大学、吉本興業といった錚々たる一流企業や大学が名を連ねています。
このゴルスタについては既に消費生活センターに取材した人も現れており、騒ぎがこのまま収束することはなさそうです。
利用対象者限定で中高生が楽しく安全に交流できるSNSという発想自体は面白いものですし、反省文を書いても戻りたいと思えるコミュニティとして機能していたことも間違いはなさそうです。それだけにこの旧共産圏かカルトを思わせる運営姿勢や法務部門の手抜きは極めて残念なところ。
まともな中高生専用SNSとして再起することはあるのでしょうか?
【8/27 12:20 追記】
ゴルスタの運営会社である株式会社スプリックスの常石博之副社長が未成年の個人情報をツイッター上に曝露したことに対して「この事実に対しては、当社のミスでした。深夜でもあり、担当者がヒートアップしてしまったためです。深くお詫びいたします」と謝罪しました。個人情報保護法違反の疑いもあり、単に謝罪で済むかは現時点では未定です。
また、親のクレジットカードの情報を収集する旨のプライバシーポリシーの記述に関しては、記載の事実は認めましたが、将来的に課金コンテンツを設置した時に備えたものであり「いままでクレジットカード番号を入力した人はゼロ」であったと回答しています。
しかし、24時間365日監視体制やユーザーによる相互監視システム、規約違反に対する厳しい垢BANと反省文提出については「アプリを安心・安全に中高生に使ってもらう上で、学校みたいな感じではあるがこのような対応をしている。多少、判断が厳しすぎるかもしれない。しかし、中高生を守るためにという認識のもと、アプリを運営している」として、実態の改善などについては触れていません。
おそらく運営の中の人が変わることにはなりそうですが、今後安全な中高生専用SNSとして持ち直していけるのでしょうか?どちらにせよゴルスタのアクセス権限は非常に強く、クレジットカード以外にも極めて多くの個人情報を収集されてマーケティングに利用されることには間違いありません。利用の際はこの辺りもしっかり理解した上で使う必要があるでしょう。
中高生向けアプリ「ゴルスタ」 個人情報流出で謝罪 _ まとめ読み「NEWS通」 _ 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
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