人工地震というと昨年も何度か噂になったHAARPが思い出されますが、これは全く別物で、天然ガス採掘時に行われる「水圧破砕法（フラッキング）」と呼ばれる採掘法に関連していると考えられています。ただし原因にはまだ不明な点も多く、非常に不気味な現象です。
Human-made earthquakes reported in central U.S Reuters
ロイター通信によると、アメリカ合衆国政府の地質学者がアメリカ合衆国中央部で地震が劇的に増えていると報告。震源となっている地域は石油や天然ガスを水圧破砕法という方法を用いて採掘しており、その際に地下で廃水を処理しているために断層が滑って地震が起きているのではないかとのことです。
アメリカ地質調査所の科学者が研究の摘要の中で、カンザス州、コロラド州、オクラホマ州、ニューメキシコ州、テキサス州を含むアメリカ中央部で、2011年に発生した地震の回数が20世紀の平均と比べて6倍にもなっていることを明らかにしました。
摘要では地震の増加と石油、天然ガス採掘に用いる水圧破砕法との関係は明言されていません。しかし、水圧破砕時や、その他の採掘に関する工程で発生する廃水が断層が滑って地震の原因となるのに何らかの役割を果たしているのではないかと指摘しています。
「M3以上の地震の回数の増加は現在も進行中であり、地震の回数の変化はほぼ人為的なものであると言える一報、採掘の方法論が問題なのか、石油や天然ガスの採掘量が問題なのかは今後究明していく必要がある」とのこと。
アメリカ地質調査所によると1970年から2000年にかけて、1年間のM3以上の地震の回数は21±7.6回だったものが、2001年から2008年の間では29±3.5回に増加。その後の3年間では2009年に50回、2010年に87回、2011年には134回と特筆すべき増加を見せています。
カリフォルニアの地震科学センターのマガー氏は「なぜこのようなことが起こるのかは分からないが、自然現象とは考えにくい。自然界ではこうした地震の増加が起こるのは大きな地震の後の余震の発生している期間か火山活動が起こっている時だ。」と述べています。
2011年にコロラドとオクラホマで群発地震が起こった際、アメリカ合衆国環境保護庁は資源採掘と地震との関連の可能性に関する地質調査を要請。マガー氏が2011年8月にニューメキシコ州境に近いコロラド州トリニダード付近で発生したM5.3の地震を調査したところ、その地震の震源は資源採掘地の水圧破砕法で発生した廃水を最も大量に破棄している地中地点の2つに非常に近接していました。
また、コロラド州とニューメキシコ州では水圧破砕法の廃水の処理の仕方が異なっており、全ての廃水を地中に破棄するコロラド州では、一部を地表に破棄するニューメキシコ州に比べて地震の回数が多い、という結果になっています。
マガー氏はこうしたことから排水処理設備が引き金となって地震が起きたのではないかと考えるようになりました。
これまでも水圧破砕法での廃水の地中破棄が地震の原因になる可能性があると言われてきましたが、アメリカの複数の天然ガス開発会社によって結成されたアメリカ天然ガス連合（ANGA）は、現在それらの間に相関関係を認める科学的なデータはないとして関連を認めていません。
実際に関連性への結論が出せる状態ではありませんが、人間の資源採掘という行為によってM5以上の地震が発生するのであればおおごとですし、昨今の環太平洋地域での大地震の増加との関係もまったくないとは言い切れません。今後の調査の結果が注目されます。
なお、本記事で取り上げられている水圧破砕法（英語での通称はFracking）は人体に影響を及ぼず化学物質を使用した水を大量に使用するため、飲料水の汚染を含む様々な環境破壊が発生するとされ、抗議行動も各地で発生しています。
水圧破砕法(ハイドロ・フラッキング)によるシェールガス開発の危険性
シェールガスは次世代のエネルギー源のひとつとして注目を浴びていますが、このような工法の危険が発覚するにつれ、扱いも変化してくるかもしれません。
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