風営法改正を目指す法律家たちの団体「Let’s Dance法律家の会」が発足、キックオフイベントにはDJ Yojiや田中康夫衆議院議員も



5月末から始まった「ダンス規制法改正」の署名運動が5ヶ月目を向かえる中、実際の法改正に向けて弁護士、行政書士、研究者らに寄る「Let's Dance法律家の会」が11月1日発足しました。キックオフイベントにはサプライズで田中康夫議員も登場し、改正に向けてエールを送りました。


Let's DANCE 法律家の会

この日、大阪の心斎橋のクラブで行われたキックオフイベント「Let’s TALK!風営法」は平日の16時からという時間ながら報道機関を始め多数の参加者を迎えて行われました


第一部は「法律家の会設立発表、『ダンスシーンで現在進行していること』──風営法で規制されている現場からの声」と題され、まず「Let's Dance法律家の会」の発足が報じられました。

現在風営法はダンスをさせる営業を許可制とし、営業時間や店舗面積を始めとした制約を課しており、これに違反した者は処罰の対象となります。「Let's Dance法律家の会」はこのことがクラブ等の営業を困難にさせ、閉鎖や廃業に追い込まれるケースが相次いでいると指摘。

また、「善良な風俗を害する享楽的雰囲気を過度に醸成する『ダンスをさせる』こと」が処罰対象とされていますが、この対象の基準は明確性を欠いており、濫用的取締が頻発する危険性があるとします。さらにはこの規制により憲法21条に記された、ダンスをする側の表現の自由に重大な制約がかかると言及。

戦後間もない時期のダンスホールが売春と密接に結びついていた時代の名残を状況が一変している現代に残すべきではなく、ダンスをさせる営業と現在結びついているとされる薬物、騒音、未成年者、近隣問題などはダンスを基準として規制するのではなく、各個の個別具体的な法律で規制すべきだとの立場を取っています。

Let's Dance法律家の会はこうした問題に対し、現在10万人署名活動を実施中のLet’sDANCE署名運動と協力し、現実的な法改正に向けたサポートを行なってゆきます。具体的な活動として挙げられているのは以下の2点。



・ダンス規制項目を撤廃することを基本に風営法改正を検討。改正内容については様々な意見を取り入れ、十分な議論を重ねていく方針。

・法改正運動についても、各地での支援活動や議院その他におけるロビイング活動などを展開していく予定。





このように、改正に向けた日本全国の声を集める署名運動に対し、実際の改正案の作成や国会議員に対するアピールなどの、法改正に向けたより実際的な役割を担います。

この設立の発表の後は、Let’sDANCE署名運動発起人のマシーン原田を始め、YOJI、PIKA☆、TUTTLEらがゲストコメンテーターとして出演、東京からはSkype経由で会所属の斉藤弁護士、和知弁護士が出演し、ダンスシーンで現在何が起こっているかについて議論が行われました。

--クラブでは一般的にはドラッグや、騒音などの近隣迷惑行為、未成年者の入場、売春などが行われているのではないかというイメージを持たれている。のりピー事件や六本木での金属バット殺人事件などがニュースを賑わせていることも一因かと思われるが実際にそうしたことはクラブでは起こっているのか?

Yoji:
悪いことをするやつはどんな業界にも一定数はいるし、そういうやつは目立つ。それが叩かれる時にウィークポイントになる。ただ、クラブとしては見つければ出入り禁止にするなどの対応をしている。


PIKA☆:
クラブは都会だからこそ生まれた集いの場。暗い夜のイメージが危ないもののようにイメージされているけれど健全なものだと思っている。

TUTTLE:
クラブでの殺人事件が取り沙汰されているけれど、そんなことはどこでもあるしクラブで特に起こりやすいものではない。(大阪NOONのあった場所のように)クラブができることによって周りの環境が改善されるケースも実際にある。

Yoji:
若者がお酒を飲んで騒ぐのが悪いと言うけれど、それなら居酒屋の前の方がうるさい。クラブは発散する対象が音楽で踊ることだから。そもそも発散する場所が他にないんだから、そういうことも考えて欲しい。

--今後としてはクラブとしてどんな取り組みをしていくべきか?健全化をめざす自助努力としては暴力や薬物を禁止していくような取り組みが始まっているが。

YOJI:
健全化という言葉がそもそもおかしい。いい子ぶれということでしょう。もともと健全なんです。だから普通でいい。これまで通りでいい。何も間違えていない。いい音楽をプレイするDJが来て、それに熱狂する子たちが来る。それでいい。これ以上に健全なものはない。健全化というと悪いことをしたような気になるけれど、何にも悪いことはしていない。外部にそれが見えていなかったなら「全部お見せしましょう」でいいはず。

PIKA☆:
(クラブを知らない人が)入りやすい面白いイベントが増えていったらいい。でも誤解されているならば対話は必要。


TUTTLE:
文化は好きにやらせてもらうから育つもの。それが熟して次の世代に渡っていく。近隣に迷惑がかかっているならクラブと連携を取って最低限のマナーを守る必要はある。

--クラブだけでの問題ではなくなっているが、それ以外のダンスシーンに関してはどんなことが起こっているのか?風営法4号改正案によってダンスシーンに資格制度が持ち込まれようとしているが。

マシーン原田:
これは完全な利権目的の金儲け。ストリートダンスは自由な表現があるから流行っていった。頭や背中で回ったりともうなんでもあり。ダンスを教えることに資格を持ち込んで規定する事自体このダンスの発展を全くシャットアウトするのであってはならないことだと思っている。

和知弁護士:
ダンス人口の少ないダンスを教えている人から、自分たちのダンスを教えることは違法になるのか、資格制度ができてしまったらどうしたらいいのかという危機感が非常に強くなっている。

--海外のクラブの事情はどうなっているのか?

YOJI:
国によって違う。イギリスのように法律ができてやれる時間が短くなるような国もある。例えばバーミンガムなどの北部では営業は2時で終わり、お酒のライセンスは12時で終わる。それでもお客さんは減ってない。生活の中にダンスミュージックが入っている。だから時間が短くなろうと何千人も入る。だから時間が遅くなければ踊りに行くのが嫌だというムードもちょっと「?」と思う。

IDチェックは欧米は本当にすごい。北アメリカだと警察がやってる。金属チェックなどもあってDJもそこを通る。飲み過ぎて倒れたり酸欠でおかしくなるような人のために救急車もスタンバイしている。そこまでオーガナイザーと行政が連携してやっている。そこで許可をとった上でイベントをやっている。それはクラブの周りをクラブの店員が清掃していくようなことの延長かもしれない。セキュリティの部分も自分たちで賄う。そこで警察の協力も得られるという関係を作っている。

斉藤弁護士:
ベルリンではクラブカルチャーが観光・文化産業としての地位を占めていて国も積極的にサポートしている。そこに警察も協力して育てていこうという発想になっている。クラブコミッションというクラブの加盟する業界団体には300あるクラブのうち100店舗が入っていて自主ルールを定めたり運営のための情報交換をしている。クラブコンサルタントという部署もあり、そこには弁護士や会計士、ITの専門家がいてクラブの経営をサポートしている。

NYではナイトライフアソシエーションという団体があり、ナイトライフを充実させるためには自分たちで何ができるのかということについて自主的に取り組んでいる。

--クラブカルチャーやダンスカルチャーが日本の経済発展に貢献する方向性もあるのではないか?

YOJI:
スイスのチューリッヒのストリートパレードは毎年100万人が集まる。空撮でしか分からないくらい巨大な規模で、街全体を挙げて一日中やっていて電車も止まる。それを行政側としてもそれに協力していったりする。

PIKA☆:
まずパレードのような形で街に出て認めてもらう。ダンスがどれだけ楽しいもので、人間の本能であって、エネルギーを持ってるのか、日々の日常に入り込むのかを楽しい形で見せて初めてクラブに戻ってくるものがあると考えている。認知度を高めなければ。

TUTTLE:
国には広い視野で見てもらって我々は好きにやらせてもらう。最低限のマナーを守れば後は勝手にやらせてもらわないと発展はしていかない。この状況のままでは今の産業のようにどんどん抜かれていくだけだ。

マシーン原田:
中学生のダンス必修化でこの業界は勢いはある。ストリートダンスのシーンをアニメのように日本の文化として海外に輸出することもひとつの方法ではないか。

第二部は「『風営法改正へのロードマップ』──法改正に向けた運動や改正案、現在の取り組みについて」。Let's Dance法律家の会代表の中村和雄弁護士とPIKA☆さんによるトークが行われました。

中村和雄代表は会の活動の中で、風営法の中で改正させるべき部分として、1号、3号、4号の「ダンスをさせる」という項目を外すことを最重要の目的として活動してゆくと表明。それ以外のアルコール提供などの規定についてはそれぞれやっていく必要はあるが、ダンスをすることを悪とするような規定は外す方向で、次の通常国会には法案として提出するつもりでいるとのこと。


--ダンス規制を削除するといろいろなことが野放しになり、風営法が想定するような弊害が広がるのではないかという指摘があるが?

中村代表:
具体的にどういう弊害が起きるのかということはもっと議論したい。営業時間にせよアルコール提供にせよいろんな規制はいっぱいある。ダンスをさせない店ではそれらで規制をかけられているのにダンスをさせる店だけが特別扱いされる理由はない。規制をかけていく問題はあってもそれはダンスをさせる見せだけの問題ではないはず。

--風営法の規制緩和だけでいいのではないかという意見については?

中村代表:
何でそんな規制がかけられなければいけないのかというそもそも論の問題。それに風営法は非常におかしな法律で、この要件では犯罪を犯していなくてもいつでも警察が自由に入れてしまう。弁護士は普通に言う話ですが、警察が来たらまず『礼状を見せて下さい』と。その上で弁護士に立ち会ってもらってということになる。でも風営法では礼状がなくても自由に入れるようになっていつでも監視できるわけです。これを許しているのはおかしい。

また、第二部ではでサプライズとして田中康夫衆議院議員が登壇。

田中議員:
アフリカのマリのドゴン族の言葉では、『穀物を収穫をする』という単語と『祭で踊りをする』という単語は一緒。(レッツダンスの運動は)人間性を回復する運動だ。

と熱いエールを送りました。また、田中議員自身に加え、警察出身の平沢勝栄、亀井静香両氏もこの運動に同意しており、ダンス規制の撤廃、風営法の改正に向けてサポートしていくと発言。国会での現実的な動きに対して大きな追い風となりそうです。


なお、11月9日時点でLet’sDANCE署名運動の署名数は83800人あまり。年内の10万人達成を目指しており、残り16000人と迫っています。残り1月半あまりの駆け込みとなりますが、まだ署名を済ませていない方はぜひご署名いただきたいとのこと。

Let's DANCE レッツダンス署名推進委員会 風営法からダンスの項目削除を求めます。

風営法に対して声を上げ、法改正への理解を深める動きはこの半年多くの賛同者、クラブ関係者らによって続けられてきましたが、いよいよ国会への法案提出をにらんでの動きが本格化してきました。

現時点でダンス愛好家としては「法改正実現にむけて国に大きなインパクトを与えることのできる数」として設定された10万人の署名を達成させ、要望の大きさを示すことが重要となりそうです。まだ署名していない友人、風営法問題にあまり関心のない知人がいたらこれを機に話をしてみてはいかがでしょうか?

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