安倍政権が先日大きな批判を押し切って閣議決定した「戦争法案」こと安保関連法案。さっそく集団的自衛権の行使要件となる存立危機事態の適用範囲が安倍首相や中谷防衛相によって拡大されており、批判が噴出しています。
◆存立危機事態の拡大
安倍首相は18日の参院本会議で集団的自衛権行使の要件となる「存立危機事態」の適用範囲を「電力不足によるライフラインの途絶」にまで拡大。これは中東のホルムズ海峡での機雷掃海を念頭に置いたものと見られています。
さらに19日の参院外交防衛委員会で中谷防衛相は維新の党の小野次郎議員の質問に対し、石油にかぎらず天然ガスやウラン・プルトニウムなどの燃料の不足も「存立危機事態」に該当するとの認識が示されました。
さらにはおなじ質問の中で、食料などの生活物資の不足も集団的自衛権の適用範囲の対象となり得ると答えていますが、金融措置や通信活動の途絶などは要件に当たらないとしました。
また、安倍政権は1991年、92年の宮沢首相の国会答弁を変更し、「武力行使の新三要件」の基では海外での武力行使も可能であるとの認識を示しており、集団的自衛権の行使の中で敵国の基地の攻撃も可能であるとするなど、各所で大きな変更が立て続けに起こっています。
◆太平洋戦争の二の轍を踏むとの批判
これに対し、電力や燃料不足を理由とした集団的自衛権の行使は太平洋戦争開戦に至るABCD包囲網の際の対応と何が違うのかと大きな批判が巻き起こっています。
もちろん燃料や食料の不足が「国民生活に死活的な影響」を与えるような段階で他国への武力行使を行うことはまさに自殺行為。先の第二次世界大戦では半数以上の日本兵が餓死していたことを考えても、必要な物資の補給という兵站を軽視しては燦々たる結果に終わることは火を見るよりも明らかです。
農水省は食料の輸入がなくなったらイモを食べればいいとしていますが、これは荒れた農地のフル活用が前提となっており、試算通りの収穫を得ることは困難。こうした状況での集団的自衛権の行使への道を開いたままにしておくことは非常に危険と言えるでしょう。
◆近代国家と呼べるのか?
なお、近代国家であれば燃料不足などを理由に武力行使に踏み切ることを公言しないのは当然のこと。これをあっさりと反故にして開戦に踏み切れるという認識を公にするのであれば、安倍政権の体質が近代国家のものではないと受け取られても不思議はありません。
これまでも歴史修正主義者、タカ派の軍国主義者などと世界から批判を浴び続けてきた安倍政権、ついには「大日本帝国と完全に一致」と言われるレベルにまで足を踏み入れようとしていると言えるでしょう。
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