「支持政党なし」は本当に無色透明?党首がブログで「自民党と公明党の言う政策以外は、全て絵に描いた餅」と発言、しかも前身は「安楽死党」



「政策は一切なし」を掲げる謎の政党「支持政党なし」ですが、本当に「政策はない」のでしょうか?


今回の参議院選挙で支持はともかく注目を集めているのが「支持政党なし」。東京選挙区で候補者の名前もなく4枚並べられた選挙ポスターの写真はネットでもあちこちでみかけます。




本当にこれはありなのか?いったいどんな政党なのか?疑問は尽きず、多くのネットメディアや報道が記事にしており、これまでにないケースであることが報じられています。

◆公選法的には問題なしでも「詐欺的」な理由
この政党及び選挙ポスターが法的にアリかナシかについての議論は既に総務省も東京都選挙管理委員会も「公職選挙法上問題なし」ということで決着が付いていますが、それでも「詐欺的だ」という声も少なくありません。

最も批判されているのは「支持なし」などと書かれた投票用紙が無効票ではなく「支持政党なし」の得票になってしまうという、ある種の「騙し討ち状態」となる政党名であること。




2014年の衆院選では比例代表北海道ブロックに2人の候補者を擁立していましたが、10万4854票と社民党の2倍近い票を得ています。「支持政党なし」は以前は「新党本質」という党名では2009年と2010年にそれぞれ7399票、3662票を獲得、安楽死党に改名した2012年には2603票となっており、2014年に50倍近く膨れあがっているのです。この50倍増のうち、どの党も推薦していない故に「支持なし」などと書かれた票がいかに「支持政党なし」に吸い込まれたのでしょうか。

「支持政党なし」は今回の参院選で東京選挙区に4人の候補者を立てている他、北海道、神奈川県、大阪府、熊本県の選挙区でも候補者を1人ずつ立てている他、比例代表でも2名を擁立しています。そして全ての選挙区で上記写真のような候補者名を書かない政党名の選挙ポスターを掲示。

今回も誰に投票するか決めておらず、間違って「支持なし」と書いてしまえばこの「支持政党なし」の得票となることはしっかり覚えておいた方がよいでしょう。

◆本当に「政策なし」?
「支持政党なし」は他の政党と違い「出来もしないような政策は一切言わず、政策は一切なし」と明言していますが、果たして本当に「政策は一切なし」なのでしょうか?注目すべきは6月25日の佐野秀光党首のブログポストです。

そもそもが今の国会をみれば誰だって解るのは、与党の自民党と公明党の言う政策以外は、全て絵に描いた餅ですからね

『新党本質』⇒『安楽死党』⇒『支持政党なし』代表 佐野秀光の日常 正直な政党



ということで、野党の政策は「全て絵に描いた餅」との認識であることが判明しました。では与党の補完勢力なのかというと、そうとも簡単には言えません。この発言への失望を表したコメントに対しては

現状の国会の議席数を見ますと、支持政党なしが仮に全員当選しても、与党のやることを止める事は出来ませんが、せめて皆さん方の意見を集約して反対票を入れる事は出来ると言う現実的な意見でございます。



と回答。党首がこの答えということは「支持政党なし」は与党の補完勢力というよりは、本当になんら一切やる気がない事が分かります。さらに言えば政治や民主主義を全く理解できていません。

一言で言うなら「支持政党なし」は公式HPにもあるように、「出された議案や法案に対して議決権を行使する」ことしか想定していないのです。なぜそれではいけないのでしょうか?

例えば「保育園落ちた日本死ね」ブログを発端として国会で保育問題が大きなトピックとなり、与野党が改善案を提出し、今回の参院選でも社会保障の一環として争点のひとつに数えられるようにもなりました。また、先日のヘイトスピーチ対策法案も与党議員が発議し、野党との国会質疑の中での多くのやりとりを経て条文の文言が決まり、附則や付帯決議が付けられました。

それ以外にも多くのトピックにおいて国会で激しい質疑が行われていることは国会中継を見ていれば一目瞭然のはず。つまり、民主主義というのは単に議場での議決権の行使のみを指すのではなく、合意形成のプロセスそのものであり、そうした中での丁々発止のやりとりが紛れもない政治であるわけです。

そうしたプロセスに目を向けず単に議決権の話しかしないのであれば、ネット上に何らかの形で「集約」された意見をそのまま垂れ流してみせるだけの「自動機械」に過ぎません。

◆「法案賛否参加システム」は大丈夫?
ではその意見を「集約」するシステムはどうなっているのでしょうか?「支持政党なし」はPCの前やスマホを用い、党サイト上で議案や法案の議決に参加してもらうとしています。その際に法案賛否参加システムを使用するということですが、肝心のシステムに関してはいまだ明らかにされていません。

投票日まで10日を切り、参院選後の正副議長選出などのための臨時国会は8月初旬に召集される見込みとなっていますが、この時点で肝心要のシステムがどのようなものか提示できていないのはちょっと信じられない事態です。

いったい誰が参加でき、どのように参加し、安全や透明性はどのように確保されるのでしょうか?「支持政党なし」支持者以外も投票できるのか?18歳未満でも投票できてしまうのか?ひとり1票に限定されるのか?それらはどのように担保され、透明性が確保されるのか?その際に集まる個人情報をどのように守るのか?サイバーテロへの防御はどうなっているのか?

一政党とはいえ、国政議員が生まれれば国会の意志決定に関するシステムであるだけに、不正な操作で狂わされるわけにはいきません。また、実際の得票数が「支持政党なし」側によって改変されていないことを示せる透明性がなければ信頼性はなくなります。

この件についても上記ブログポストで質問のコメントが付いていましたが、佐藤秀光氏は何も返答していません。他党のことを「出来もしない政策を並べて平気で公約を破る」と揶揄していますが、「支持政党なし」がこのシステムを十分な形で準備できなければ政党の意志決定プロセスの根幹が崩壊し、「公約を破る」どころの話でなくなるのはよく理解しておくべきでしょう。

◆「支持政党なし」の前身は「積極的安楽死」の推進政党
今でこそ「支持政党なし」として10万票を集めるようになりましたが、党首本人が明らかにしているように、以前「支持政党なし」は「新党本質」としてスタートし、後に「安楽死党」となりました。このふたつの党に一貫した考え方として筆頭に挙げられているのが「積極的安楽死の実現」です。

1 安楽死の選択肢が自己の判断で行え無駄な死をなくせる安心社会の創設
・病気その他健康的な理由による苦痛から解放させてあげる死の選択肢も必要ではないでしょうか。
・倒産、リストラがあってもいつでも楽に死ねれれば、最後の最後まで頑張れませんか。
・どうせ死ぬのであれば臓器移植で一人の命を救いませんか。
・電車への飛込みなんて無駄死だけでなく、残された家族も大迷惑です。

自殺者の臓器移植や骨髄バンク問題提起・安楽死の選択∥安楽死党より引用)



2009年のZAKZAKによるインタビューでも以下のように回答しています。

 --立候補の動機は

 「安楽死や臓器移植が問題になっています。一方で自殺者は年々増加している。どうせ自殺するなら臓器提供を条件に、病気でなくとも安楽死できる制度を作りたい」

ど派手改造車でユニーク選挙戦「新党本質」を直撃! 社会:ZAKZAKより引用)



この当時は企業経営者の経歴を持ち、カウンタックやハマーを改造した選挙カーで選挙活動を行っていたことが面白おかしく取り上げられています。

もちろん現在の「支持政党なし」ではこうした考え方はなりを潜めています。ですが、党首がこうした経歴の後になぜかこれらの主張を隠して「支持政党なし」を立ち上げたという事実は押さえておいた方が良さそうです。

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