14日に第1回口頭弁論が行われたブラックバイト裁判での被告の対応が酷いことになっています。詳細は以下から。
学生が法律に反して長時間労働などを強いられるブラックバイトに関する初めての裁判が9月14日に行われました。被害者は殺人未遂罪・暴行罪・恐喝罪・脅迫罪で告訴状を提出していました。
◆122日連勤、暴言、20万円自腹購入、殺人未遂というブラックバイトの地獄
飲食チェーン「しゃぶしゃぶ温野菜」のフランチャイズ店舗でアルバイトしていた21歳の男子大学生が運営会社の「DWE Japan」を相手に慰謝料や未払い残業代など約800万円を求めた訴訟の第1回口頭弁論が千葉地裁で行われましたが、被告のDWE Japanの川井直社長のとんでもない発言が批判を呼んでいます。
男子大学生はしゃぶしゃぶ温野菜でのバイトの中で、122日連続での勤務を強いられた他、20万円以上の自腹購入を強いられ、退職を願い出た際に店長とその夫から「殺す」などの暴言を吐かれ、左胸を包丁で刺されるなどしていました。
もはやブラックバイトどころではない犯罪行為のオンパレードで、現実のものとはなかなか信じがたいかもしれませんが、実際の通話を被害者が録音、ブラックバイトユニオンが公開しています。
「しゃぶしゃぶ温野菜」ブラックバイトの実態(字幕推奨) - YouTube
しゃぶしゃぶ温野菜(DWEJAPAN株式会社)アルバイトへの暴力の実態(字幕推奨) - YouTube
◆DWE Japanの川井直社長が意見陳述中に店名隠しを「マスコミの皆様」に「お願い」
これだけでも十分すぎるほどに酷いのですが、さらに輪を掛けて酷いのがDWE Japanの川井直社長の口頭弁論でした。以下、ブラックバイトユニオンのツイートを紹介します。
しゃぶしゃぶ温野菜ブラックバイト訴訟が酷い。被告のDWE JAPANの社長が予告なしに意見陳述。突然謝罪を始めたと思ったら、被害学生を批判したあげく、傍聴席を向き「マスコミの皆様」に「温野菜」という名称を報道するなと言いかけたところで、裁判と関係ないからと裁判官に制止されて終了。
— 坂倉昇平@ブラックバイトユニオン (@magazine_posse) 2016年9月14日
しゃぶしゃぶ温野菜(DWE JAPAN)ブラックバイト訴訟の社長と弁護士、何が凄いって、裁判官を騙したんですよ。社長が被害学生を攻撃したあと、傍聴席に体を向け「マスコミの皆様。」と言った瞬間、裁判官は、裁判と無関係だと静止させたわけです。すると会社側弁護士が裁判官に(続く)
— 坂倉昇平@ブラックバイトユニオン (@magazine_posse) 2016年9月14日
(続き)冒頭で「マスコミの皆様」という表現をしただけで、マスコミに語りかける内容ではないです、と裁判官に屁理屈を言い始めたのです。裁判官は訝しがりながら再開を許可。すると社長は裁判官に背を向けながら「しゃぶしゃぶ温野菜」という名称を報道しないでほしい、と法廷で堂々と(続く)
— 坂倉昇平@ブラックバイトユニオン (@magazine_posse) 2016年9月14日
(続き)「マスコミの皆様」にお願いを始め、さすがに裁判官が厳しい顔で、やっぱりダメですと、二度目の静止をするという始末。裁判官に嘘をつき、被害学生を攻撃してでも、「しゃぶしゃぶ温野菜」とマスコミに報道させることだけは回避したかった様子。(続く)
— 坂倉昇平@ブラックバイトユニオン (@magazine_posse) 2016年9月14日
(続き)実は「しゃぶしゃぶ温野菜」「牛角」をフランチャイズ展開するレインズインターナショナルは、いまだにDWE JAPANとフランチャイズ契約を結んでおり、DWE JAPANは「牛角」を千葉県内で数店舗展開中。これでもレインズインターナショナルの責任は問われないのでしょうか?
— 坂倉昇平@ブラックバイトユニオン (@magazine_posse) 2016年9月14日
川井直社長は予告なしに意見陳述を始め、被害者学生を攻撃した挙句に傍聴席に向かって「マスコミの皆様」に対し「しゃぶしゃぶ温野菜」という名前を報道しないでほしいと「お願い」を始めたのです。
しかも「マスコミの皆様」と言いかけた時に裁判長が制止したにも関わらず、会社側弁護士が「マスコミの皆様」という表現をしただけで、マスコミに語りかける内容ではない」とゴネた上、結局はマスコミの皆様へのお願いだったということで、裁判長に対して明確に嘘をつくという悪質極まりないもの。
「マスコミの皆様」は当然のことながらこのような嘘までついて行われた身勝手な「お願い」などは一蹴して明確に「しゃぶしゃぶ温野菜」と「DWE Japan」の名前を出して報道しなければ話になりません。
◆「マスコミの皆様」の対応は?
ぶっちぎりで腰が引けていたのはテレビ朝日。「しゃぶしゃぶ温野菜」と「DWE Japan」のどちらの名前も出していません。
“ブラックバイト”で全国初の裁判 慰謝料など求め
東京新聞は「DWE Japan」の名前こそ出したものの「しゃぶしゃぶ温野菜」とは言っておらず、こちらも「お願い」に屈した形に。
東京新聞_ブラックバイト訴訟で初弁論 「人生を狂わされた」_社会(TOKYO Web)
逆にどちらの名前も明確に出して報道したのは毎日新聞、TBS、フジテレビとなっています。
ブラックバイト訴訟:大学生「怖くて辞められず」 - 毎日新聞
“ブラックバイト”で初の裁判 News i - TBSの動画ニュースサイト
「ブラックバイト」訴訟第1回口頭弁論 「怖くてシフト断れず」
普段はリベラルとして知られるマスコミが真っ先に「お願い」に屈した形の報道を行っているのが印象的です。
◆いったいなぜここまで酷いブラックバイトが行われているのか?
今回明らかにされているのは完全に奴隷労働と言うしかないような惨状ですが、いったいなぜこうしたブラックバイトを強要することになったのでしょうか?NPO法人POSSE代表の今野晴貴さんが6月時点で本件を取り上げて解説しています。それによると
なぜアルバイトの現場でこれほどまでに凄惨な事件が起きてしまうのか。
この問題を考えるにあたって一つの鍵となるのが、アルバイトを管理する店長の過酷な労働内容だ。
暴力、パワーハラスメント、シフトの強要、賃金の未払い、自腹購入など様々な被害が見られるブラックバイトの相談であるが、実はその多くのケースで、被害を与える側の店長の労働環境もまた、過酷であるというケースが多い。
Aさん(編集部注:今回の訴訟を起こした男子大学生)によれば、この事件でも、店長の女性社員も連続で8か月以上勤していた。それで暴力行為が正当化されることはないが、「自分自身も追い詰められている」という感情が、部下である学生に対する暴力を「自己正当化」する要因になっていたことは想像に難くない。
(「しゃぶしゃぶ温野菜」で大学生刺傷事件 なぜブラックバイトは暴力的になるのか(今野晴貴) - 個人 - Yahoo!ニュースより引用)
どんなことがあろうと今回のような暴力が許容されることはありませんが、店長側もブラック企業の中で極めて劣悪で過酷な労働環境にあったということ。単にこの店長の暴力などを問題にするだけでブラックバイトという日本全国に蔓延する問題が解決するわけではないということは絶対に押さえておかなければなりません。
この問題はこの問題として厳しく追及し、解決に繋げることはもちろんですが、同時にブラックバイトがブラック企業問題の中のひとつの表れであり、ブラック企業の問題を解決しなければ同じようなことは限りなく繰り返されることは間違いないでしょう。
そうした意味でブラック企業のトップであるDWE Japanの川井直社長がマスコミに対して隠蔽工作を図ったことは極めて卑劣ですし、屈服したマスコミの責任は極めて重いものと言えるでしょう。また、今後DWE Japanが店長を切り捨てて責任回避を図るようであれば、厳しく追及していく必要があります。
「ブラックバイト」初の裁判、学生「人生を大きく狂わされた」と訴える - 弁護士ドットコム
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