ヘイトスピーチとは何か?定義に応じた典型例を法務省が提示しました。より厳密な対処が期待できそうです。詳細は以下から。
特定の人種や民族などの属性を元に、弱者やマイノリティへの差別を扇動するヘイトスピーチ。日本では自民党の西田昌司議員と公明党の矢倉克夫議員の発議により、ヘイトスピーチ対策法が成立したのが2016年5月のことで、成立後もヘイトデモが日本各地で繰り返し行われるなど、規制が徹底されているとは言えない状況が続いていました。
そうした中でヘイトスピーチを解消するために法務省人権擁護局の「ヘイトスピーチ対策プロジェクトチーム」はヘイトスピーチ対策法を踏まえた「参考情報」として、ヘイトスピーチの典型例を例示した文書を作成、全国の法務局を通じて自治体への文書提供を開始しました。2月3日現在で、23都道府県の68自治体に提供したとのこと。
この対策法ではヘイトスピーチは「生命や身体に危害を加える旨を告知し、著しく侮蔑するなど、外国出身者であることを理由に、地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動」と定義されています。
ヘイトスピーチ対策法、いったいどんな内容? | Your News Online
ただし、アイヌや沖縄、被差別部落出身者のような「外国出身者」ではないマイノリティへのヘイトスピーチの容認に繋がらないかという懸念に対しては法案発議者のひとり、矢倉克夫議員が「それ以外のものが許されるという意味ではない」と断言しています
では具体的にどんなものがヘイトスピーチに当たるのか、実際に取締りに当たる立場の公務員にとって判断基準とすべく今回の「典型的なヘイトスピーチ」の例が示されることになりました。
その典型例は対策法に基づいて大きく3種類に分けられています。ひとつ目は脅迫的言動。「〇〇人は殺せ」「〇〇人を海に投げ入れろ」といった殺害を含め、危害を加えることの扇動に当たります。
ふたつ目は著しく侮蔑する言動。特定の人種、民族、出身国・地域の人について「ゴキブリ」などの虫、動物、物に例えることや隠語や略語を用いたり一部伏せ字にして罵るパターンも含まれています。
みっつ目は地域社会からの排除を扇動する言動。「〇〇人を叩き出せ」「〇〇人は国へ帰れ」「〇〇人を強制送還しろ」など、日本もしくは地域からの排除の扇動です。
差別主義団体によるヘイトデモでは日常茶飯事となっていたこれらの文言が明文化されてヘイトスピーチの典型例として例示されるのは法による定義づけが行われたことに次いで大きな前進と言えそうです。
なお、2月5日の日曜日には東京で在日中国人らが南京大虐殺否定論のデマ本を客室に設置したアパホテルに抗議するデモを行っており、その沿道で極右団体や差別主義団体から「支那人は帰れ」「チャンコロ」「日本から出て行け」などの罵声が飛び交っていましたが、これらが全てヘイトスピーチであることが明確に分かります。
アパホテルに抗議、在日中国人らが東京でデモ - BBCニュース
「平和を大切に」横断幕掲げ…アパホテル問題で在日中国人がデモ行進 歩道から「中国に帰れ」「日本から出て行け」などの怒号も - 産経ニュース
「冷静に、理性的に」在日中国人のアパホテル抗議デモ _ ワールド _ 最新記事 _ ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
定義づけが行われ、典型例も示されている以上、各都道府県とそれぞれの警察は緊密に連携し、ヘイトスピーチ解消に向けてこれまで以上の努力と結果が求められます。
法務省:「これがヘイトスピーチ」 典型例を提示 - 毎日新聞
法務省:ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動
文藝春秋
売り上げランキング: 212,362
影書房
売り上げランキング: 286,166
・関連記事
ヘイトスピーチ対策法、いったいどんな内容? | Your News Online
大阪市のヘイトスピーチ抑止条例が全国で初めて施行、認定で団体・個人名も公表 | Your News Online
今度は自民党衆議院議員がネットのデマを鵜呑みに蓮舫議員にヘイトスピーチして謝罪…なんとあの議員でした | Your News Online
産経新聞に「ヘイトスピーチ」の意味を理解する能力は無いことが判明、国会前デモをデマで攻撃も | Your News Online
トランプ勝利からたったの1日、米国内ではマイノリティへのヘイトクライムが吹き荒れる事態に | Your News Online