菅直人元首相との訴訟に勝利した安倍首相のツイッターアカウントが荒ぶっていますが、内容と判決を付き合わせるとこれは「代替的真実」と言わざるを得ません。詳細は以下から。
問題となっている訴訟は安倍晋三首相が2011年5月、東日本大震災で事故を起こした福島第一原発への海水注入を当時の菅直人首相が中止させたとのデマをメルマガなどで流布した事に対し、管直人元首相が名誉毀損であるとして安倍首相に対して謝罪記事の掲載や約1400万円の損害賠償を求めたもの。
菅元首相への原発への海水注入中断デマ拡散の名誉毀損裁判で安倍首相が勝訴 | Your News Online
二審も菅元首相の請求棄却=安倍氏メルマガ名誉毀損訴訟-東京高裁:時事ドットコム
問題は安倍晋三衆議院議員(当時)が東日本大震災から2ヶ月後の2011年5月20日、自身のメルマガ上で民主党政権の菅直人首相(当時)が3月12日に福島第一原発への海水注入を止めさせたとのデマを流布したことに始まります。内容を菅元首相が自らのブログにアップしています。
「12日9時04分に海水注入を開始。同時に官邸に報告したところ、菅総理が『俺は聞いていない!』と激怒。官邸からの電話で、19時25分に海水注入を中断。(中略)やっと始まった海水注入を止めたのは、なんと菅総理その人だったのです。」
(安倍総理のウソ|菅直人オフィシャルブログ「原発ゼロと平和な未来」の実現を目指して Powered by Amebaより引用)
このデマを翌5月21日の読売新聞と産経新聞が大々的に報道、安倍議員は読売新聞に対して「万死に値する判断ミスで、直ちに首相の職を辞すべきだ」とのコメントを寄せています。その後5月24日の安倍議員のメルマガでもこの件に絡んで「いよいよ不信任案提出の時は迫りました」と結んでいます。
しかし、5月26日には東電が正式に海水注入を中断せずに継続していたことを発表。東電の武黒氏が福島第一原発の吉田所長に対して海水注入を止めるように指示していましたが、吉田所長が独断で注水を継続していたというのが既に明らかになっている事実です。
しかし、2015年12月3日に東京地裁が菅直人元首相の訴えを棄却。その後控訴審でも2016年9月29日に「主要な部分で真実だ」として控訴棄却となりました。
一審、二審共に実際に海水注入が続けられていたことは確認され、安倍議員のメルマガの内容がデマであることは明確に認められました。しかし2011年3月12日、福島第一原発が事故を起こした当日に菅首相が東京電力に対して海水注入による再臨界の可能性を強い口調で質問したことが、海水注入を中断するという東京電力幹部らの決断につながったと指摘。
控訴審判決では「東電による誤った決断につながったという意味において、菅氏の間違った判断があったと評価されるのはやむを得ない」としています。
実際には福島第一原発の吉田所長の英断で海水注入は続けられていましたし、東日本大震災の翌日に未曾有の事故を起こしている原発について「海水注入による再臨界の可能性を強い口調で質問」する事自体は特に不思議なことではありません。
問題があるとすれば自ら原子力発電所を運営する責任主体である東京電力側が事故発生時の対処について詰められていなかったことのはずです。
どちらにせよ、海水注入は続いており、安倍議員のメルマガの記述がデマであることは確定しているのですが、今回の上告棄却を受けて安倍首相のツイッターアカウントが荒ぶっています。
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菅直人元総理から提訴された「菅総理の海水注入はでっち上げ」と題する私のメールマガジン記事に対する名誉棄損訴訟について、菅元総理は東京高裁の判決を不服として上告していましたが、最高裁は上告を棄却しました。 pic.twitter.com/mRuW3CrgbH
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) 2017年2月22日
この決定により当方の勝訴が確定しました。
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) 2017年2月22日
昨年9月の高裁判決は菅総理の福島原発の海水注入に関連して「間違った判断と嘘」を伝えた私のメルマガ記事の主要な部分が真実であることを認めました。この判決を不服として菅元総理が最高裁に上告していました。
最高裁の上告棄却により、まさに「真実の勝利」に最終判断が下りました。
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) 2017年2月22日
安倍首相のツイッターアカウントは「菅総理の福島原発の海水注入に関連して「間違った判断と嘘」を伝えた私のメルマガ記事の主要な部分が真実であること」を認めたとしていますが、肝心の「やっと始まった海水注入を止めたのは、なんと菅総理その人だったのです」という現役総理大臣を名指しで犯人扱いした部分がデマであることには変わりありません。
しかしこのアカウントは「最高裁の上告棄却により、まさに「真実の勝利」に最終判断が下りました」と意気揚々と断言します。真実とはいったい何のことを指しているのでしょうか?これは単に「東電による誤った決断につながったという意味において、菅氏の間違った判断があったと評価されるのはやむを得ない」と判断され、名誉棄損には当たらないと判断されただけに過ぎません。
菅元首相も自らのブログで以下のように述べています。
裁判所はそうした安倍総理のメルマガの内容が間違い、つまりウソであったことは十分認識しながら、それでも「名誉毀損には当たらない」と判断したのです。政治家同士の争いに巻き込まれるのを避けたのかもしれません。納得のいかない判断です。
裁判記録を読みたい方には申し出ていただければ協力します。もっとも膨大な量なので、ポイントだけを読んでいただければよいと思います。
(安倍総理のウソ|菅直人オフィシャルブログ「原発ゼロと平和な未来」の実現を目指して Powered by Amebaより引用)
しかしここから先、このアカウントはさらにヒートアップします。
元総理が現職の総理を告訴し、裁判で争うことになったことは残念でなりません。私は総理としての時間の一部を裁判のために割かざるを得ないことになりました。
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) 2017年2月22日
国会議員同士、一度も抗議を受ける事はありませんでした。
菅元総理は前々回の参院選挙の直前に突然、私を告訴しました。私を貶めることを目的とした売名行為にほかならず、菅元総理の猛省を求めます。
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) 2017年2月22日
なんと、元総理大臣が自らの原発事故対応という日本史上初めての大災害に関する悪質なデマを拡散された事を名誉棄損として起こした訴訟を「私を貶めることを目的とした売名行為」であると断じた上に、事もあろうか「菅元総理の猛省を求めます」と反省を求めているのです。自分がデマを拡散したにも関わらず、です。
アメリカ合衆国ではトランプ政権によって「代替的真実」が蔓延するポスト真実時代がやってきましたが、残念ながら日本では既にこのポスト真実時代は始まっていたということになります。
安倍首相の嘘やデマは東京オリンピックの福一汚染水アンダーコントロールを筆頭に今に始まったことではありませんが、被害者に対して猛省を求めるという開いた口がふさがらない事態となっています。
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