せっかくの戦後2番目の好景気なのに、貧困層の賃金水準をもっと上げるという発想がどこからもでてこないのはなぜなのでしょうか?
政府によると日本の景気拡大の期間が2017年10月には59カ月間に達し、バブル期も高度成長期の「いざなぎ景気」を超えて私たち日本人は今戦後2番目の好景気の中にいます。そのはずでした。
◆低所得世帯が貧しくなったから生活保護水準引き下げというジリ貧
しかし、厚生労働省は12月8日に生活保護費に関し、大都市部を中心に食費や光熱費など生活費の受給額が大幅にカットとなる見直し案を社会保障審議会の部会に示しました。
カット幅は最大13.7%にも登り、母子家庭に対する「母子加算」も平均2割もカットされる可能性があります。
生活保護の生活費は最低限度の生活を営むのに必要な水準が支給されるもので、「生活保護を受けていない低所得世帯と同じ生活水準」になるよう算出されています。この水準は5年に1回見直され、2013年にも既に平均6.5%引き下げられています。
厚労省は、現在の受給額と低所得世帯の消費実態を比較し、消費実態のデータと世帯人数数に対する消費支出の指数などを用いて2案を産出しましたが、「低所得世帯の消費支出が減少しているから」という理由でその差額分、生活保護の水準を引き下げるとのこと。
これは「戦後2番目となるいざなぎ越えの景気」の大見出しとは真逆に、低所得世帯が2013年時点よりもさらに貧しくなり、消費を切り詰めなければならない状態になっていることを明確に示しています。
◆行うべきは低所得世帯の所得アップ
この事態に対して厚労省の示した方針は貧困問題に対して焼け石に水どころか火に油を注ぐものでしかありません。ただでさえ低所得世帯がこれまで以上に貧しくなっている状況で、生活保護の水準まで下げればより困窮する人を増やすだけです。
困窮する人が増えれば当然ながら全体の消費は冷え込み、負のスパイラルが強化されることは火を見るよりも明らか。
そもそも低所得世帯がさらなる貧困に陥っていること自体が極めて大きな貧困問題の表れなのですから、何よりもまず低所得世帯の所得を改善させることこそが急務なはずです。ただでさえ所得300万円未満の40代低所得世帯はこの20年で1.5倍に爆増しており、待ったなしの状態です。
Photo by tokyoform
それにもかかわらず低所得世帯のさらなる貧困化という現状を追認し、重要なセーフティーネットである生活保護の水準を引き下げる事はさらなる貧困の蔓延を引き起こすのみならず、生存すら脅かすことになります。
◆「戦後2番目となるいざなぎ越えの景気」の恩恵はどこに?
いったいこの「戦後2番目となるいざなぎ越えの景気」はどこにあるのでしょうか?もし本当にそうした「景気拡大」が存在しているとしても、恩恵は貧困に苦しむ低所得世帯にはまったくしたたり落ちることなく、むしろ干上がっているのが現状ということになります。
こうした「景気拡大」の恩恵を大企業や富裕層ばかりが享受しているのであれば、今起こっているのは極めて苛烈な格差拡大であり、その拡大する格差が貧困問題に直結しているということです。
政府が「景気拡大」と胸を張るのであれば、ただちに行うべきはその恩恵を受けずに貧困の中に取り残されている国民の救済です。これはもちろん社会保障という側面も持ちますが、何よりも貧困から脱出した国民は「安定した購買力を持つ消費者」となり、より経済を発展に向かわせる存在となります。
Photo by Katy Ereira
以前から日本では片山さつき議員を始め、政治家やメディアによる生活保護バッシングが行われてきました。しかし、生活保護受給者を叩いても日本経済はよくなることはありません。行うべきは貧困問題の解決であり、生活保護の水準の引き下げは問題を悪化させる最低の悪手にしかなりません。
生活保護見直し案:最大13%減 母子加算2割カットも - 毎日新聞
(Photo by Katy Ereira, tokyoform)
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