福島第一原発事故に対する除染の結果生じた大量の原発汚染土が、ついに農地造成にも使われることになりました。詳細は以下から。
◆原発の汚染土、ついに農地にも
環境省が6月1日に福島第1原発事故によって生じた汚染土を、園芸作物などを植える農地の造成にも再利用する方針を決めました。現時点では食用作物の農地は想定しておらず、花などを植えるとのこと。
方針では工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1mSv以下になるよう、除染土1kgに含まれる放射性セシウム濃度を制限します。
具体的にはくぼ地をならす作業に1年間継続して関わる場合、汚染土1kg当たり5000ベクレル以下、1年のうち半年なら8千ベクレル以下が基準となる模様。最終的に厚さ50cm以上の別の土で覆うとされています。
ここで大切なのは、国が「工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1mSv以下」であれば被曝させても問題ないと考えているということ。原発事故後の世界に住む私たちは既に慣れきってしまっていますが、どれだけ異常なことか見てみましょう。
◆そもそもの現行基準が緊急事態のもの
BUZZAP!では以前、原発汚染土の再利用基準が1kgあたり8000ベクレルにまで緩和されたことを伝えました。これ自体事故前の80倍というあり得ない基準の緩和だったのですが、その用途も厳格に規定されていたはずがグダグダにされることが決まりました。
2016年3月に環境省は福島県内の除染で出た土などの廃棄物の処理を巡り、埋め立てなどで最終処分する量を減らすため、放射性物質の濃度が1kgあたり8000ベクレルを下回った除染廃棄物を道路や防波堤などの公共事業の建設資材として利用する方針を明らかにしました。
環境省の提示した基準の1kgあたり8000ベクレルという値は福島第一原発事故による放射性物質による汚染に対処するために作られた「放射性物質汚染対処特措法」に基づく指定基準であり、放射性廃棄物を安全に処理するための基準です。
一方、原子力発電所の解体等によって発生する金属やコンクリートを、人々が日常生活を営む一般社会で建設資材などとしてリサイクルすることを想定して作られているのが「原子炉等規制法」であり、こちらの基準は1kgあたり100ベクレル。この違いは環境省自らが作成したこちらの資料から読み取ることができます。
◆緊急の基準が一般化されて拡大
つまりこの時、本来の放射性廃棄物のリサイクル基準は1kgあたり100ベクレルであるにも関わらず、環境省は福島第一原発事故の対策で作られ、焼却や埋め立て処分のための基準を記した「放射性物質汚染対処特措法」の基準である1kgあたり8000ベクレルをリサイクルのための数値として持ち出して来たということ。
理由としては行き場のない大量の汚染土をつつがなくリサイクルという形で処理するためであり、そのために事故前の80倍という放射線量の汚染土をもリサイクル可能として扱うことにしているのです。
これだけでも酷い話でしたが、さらに酷いことに元々は使用目的は管理者が明確で長期間掘り返されない道路や防波堤などの公共工事に限定されると説明されていたにも関わらず、2017年2月に非公開会合でこの汚染土のリサイクル案を協議した結果、公園や緑地もこの使用目的に加えられてしまいました。
公園や緑地の造成や保全に当たる作業員や、作られた公園や緑地で散歩をしたり遊んだりする子供を含む一般利用者たちが被曝することを想定した結果、こうした場所でリサイクルされる汚染土は、含まれる放射性物質の濃度が1kgあたり4000ベクレルを下回ったものとするとしています。
このような、なし崩しでの汚染土の利用目的の拡大の果てにあるのが今回の農地造成への利用方針であることは言うまでもありません。そもそも農業ができるようにと除染を行ってきたはずなのに、その汚染土を農業にまで使うのであれば、いったいあれだけの規模で行われた除染は何だったのかという話になります。
なお、食用作物には使わないとしていますが、これまでリサイクル基準も使用目的も後付けで変更され続けている以上、さらなる利用目的の拡大をあり得ないと考えるのはあまりに楽観的すぎるでしょう。
遠くない将来、「福一の汚染土を再利用して作られた、安全で健康的な作物」が生産され、流通することになるのかもしれません。
(編集部注:引用元の共同通信の記事では汚染土のことを「除染土」という謎の造語で呼んでいますが、これはあくまで放射性廃棄物であり「除染済みの土」との誤解を招きかねないためBUZZAP!では今後とも汚染土と表記します)
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