政府「東京五輪の猛暑対策のためだけにサマータイム導入してまた戻す」の素人考えに日本中が阿鼻叫喚



破局的な障害の可能性と確実なデスマーチの発生に全国が阿鼻叫喚の渦となっています。詳細は以下から。


◆猛暑対策でサマータイムという謎対応
連日記録的な猛暑が続き、熱中症で多くの死者も出ている日本。2020年この猛暑の時期に東京オリンピックが開催されることに対しては海外メディアから人命と健康に関わる危険を指摘されていることは以前BUZZAP!でもお伝えしたとおりです。

政府や東京都、五輪委員会らもさすがに対策に言及始めたものの、開催地である東京の小池百合子都知事からは首に濡れタオル「打ち水作戦といった「B29に竹槍」レベルの対策しか出てきておらず、危機感は増すばかりとなっています。

そんな中で五輪組織委員会の森喜朗会長が7月27日に首相官邸を訪れ、安倍首相にサマータイムの導入を要請しました。

これを受け安倍政権と自民・公明両党が検討を行い「国民生活に直結する案件だけに、政府提出法案ではなく、議員立法として超党派で成立を目指すべきだ」という方針が示されました。

与党では、最も暑い6~8月を軸に数ヶ月間だけ時計を2時間繰り上げる方向で検討に入った。2019年に試験導入した上で問題点を改善し、2020年に本格導入する案が有力。ただしあくまでこの2年間限定で、2021年からは元に戻す方針であることを産経新聞は伝えています。

当然ながらこの方針には全国から阿鼻叫喚の声が上がり、全方向から大きな批判が巻き起こっています

◆確実に発生する問題点
まず、日本中に存在する全ての官公庁や銀行・商社・流通・その他諸々の企業のシステムに大規模な改修が必要となります。そしてその全ての改修を2019年の夏までに完璧に行わなければならなくなります。

そして2019年の試験導入で発生した問題点を2020年の本格導入までに完璧に改修しなければならなくなります。もし2020年の段階で何らかの手違いがあれば東京オリンピックの真っ最中に大規模な障害が発生する可能性があるため、何が何でもそれまでに完璧に改修を完成させなければなりません。

なお、ただでさえ2019年の春には平成が終わるため、新元号に対応するためのシステム改修が多発することが現時点で確定しています。


いったい日本中の官公庁や企業のシステムをこれだけの短時間にくまなく改修するだけの人的リソースが人手不足が叫ばれる現代日本にあるのでしょうか?もしあったとして、どれだけの人手がこのサマータイム導入のために文字通り命懸けのデスマーチを繰り広げることになるのでしょうか?

サマータイム導入は既にこれだけの理由で空中分解での失敗が確定した案件。さらには2019年と2020年だけに限定となれば、東京オリンピックの2週間のためだけに「穴を掘ってまた埋める」だけに終わるサマータイムに途方もないリソースを無駄につぎ込むことになります。

◆ではどうすればいいのか?
もちろん日本の7月は高確率で猛暑となるため、無策でいるわけにはいきません。


産経新聞は記事の中で「このサマータイムが導入されれば、午前7時スタート予定のマラソンが、もっとも涼しい午前5時スタートとなるため、日が高くなる前にレースを終えることができる」と指摘していますが、それならば単にマラソンのスタート時間を午前5時にすればいいだけの話です。

「ボランティアが現場に集まるための交通機関が…」という話であればその日だけ特別列車を走らせるなり、潤沢な資金を用いて送迎を行えばいいだけの話。日本全国を巻き込んで時計を2時間もずらすというのは本末転倒の極みです。

「沿道からの応援が盛り上がらない」「テレビ視聴率が上がらない」という意見については潔く諦めてもらう以外ありません。それは五輪委員会の面子やテレビ局の利益の話でしかなく、サマータイムの導入は費用対効果を完全無視した利益誘導と言わざるを得ません。

もちろん、五輪中止を除く最善の方法は1964年の東京オリンピックと同様に開催時期を秋に変更すること。これならシステム改修も不要で、熱中症の危険も7~8月に比べてはるかに低くなります。

◆菅官房長官は早くも火消し
菅義偉官房長官は8月6日午前の記者会見で、既にこのニュースの火消しに追われる羽目になっています。

菅官房長官は政府としてサマータイム導入を目指すとの方針を決定した事実はない」「国民の日常生活に影響を生じ、大会までの期間が限られているとしていますが、現時点では「サマータイム導入自体の否定」は行っていません。

なお、前述した政府と与党の「政府提出法案ではなく、議員立法として超党派で成立を目指すべき」という方針は、問題発生時の責任を与党だけではなく超党派で分散させるためと見ることもできるもの。

産経新聞の報道はいわゆる「観測気球」とも考えられますが、早々に導入自体を明確に否定しなければ危機感と不信感はさらに膨らむことになりそうです。

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