安倍首相は3年前に「年金額が減るなどということは、ありえません」と豪語していましたが、どうやら無理だったようです。金融庁が自助努力を国民に求め始めてしまいました。詳細は以下から。
金融庁が5月22日にまとめた、人生100年時代に向けて長い老後を暮らせる蓄えにあたる「資産寿命」についての初の指針案が物議を醸しています。
金融庁は現役期、定年退職前後、高齢期の3つの時期ごとに、資産寿命の延ばし方の心構えを指摘していますが、年金など公助が限界である事を吐露し、国民に「自助」努力を呼びかけるという悲痛な内容となっています。
この金融審議会で配布された資料「事務局説明資料(「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案))」では「公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク」というチャプター(24ページ)で以下のように述べられています。
人口の高齢化という波とともに、少子化という波は中長期的に避けて通れない。前述のとおり、近年単身世帯の増加は著しいものがあり、未婚率も上昇している。
公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していく以上、年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。
今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある。年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して老後の収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」の充実を行っていく必要があるといえる。
(事務局説明資料(「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案))より引用)
少子高齢化により、年金の給付水準を維持する事が困難である事を明言。年金だけではまともに生活できない可能性があると述べた上で勤労継続、支出削減、資産形成・運用といった「自助」を求めています。
金融庁は同じ資料の中で夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯を例に挙げ、
毎月の不足額が平均約5万円にのぼり、老後の人生が20~30年のあるとすれば総額は単純計算で1300~2000万円の不足になるとしています。
もちろん年金受給開始年齢70歳や80歳にまで引き上げられれば、この「自助」すべき金額はさらに跳ね上がることは言うまでもありません。
なお、金融庁は現在の高齢者の金融資産の平均額を夫婦世帯、単身男性、単身女性のそれぞれで、2252万円、1552万円、1506万円と算出しています。
ですが、それよりも若い世代では資産形成を行っている人は2割にも満たないと金融庁は資料の中で言及しており、この見立てが次世代にも通用するとは言えなそうです。
実際にSMBCコンシューマーファイナンスの調べによると、氷河期世代と呼ばれる30~40代では、「現在の貯蓄額がゼロ」と答えた人が前年比6ポイント増の23.1%になり、平均貯蓄額も同52万円減の195万円に低下しています。
当面の貯金も難しいこの世代が、今後20~30年の間に1300~2000万円の金融資産を形成できるのかについて、楽観できる要素はありません。
この世代が高齢者になった場合、多数の生活保護受給者が発生すると言われていますが、その将来をまざまざと見せつけた形となっています。
これを受けてネット上では「そんな年金制度なら廃止しろ」「自分でどうにかするから払った金を返せ」といった意見も飛び出しています。
もちろんそれをやれば現在の高齢者の生活が一気に破綻するため現実的ではありませんが、働く人の賃金と待遇を大きく改善させ、老後に向けた資産形成という「自助」ができる状況を作り上げることが急務と言えそうです。
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